収束15
「見えた!頂上だ!」
シュガーの声に顔を上げると丁度デジタル掲示板の下辺りに差し掛かっていた。ここを超えれば無数の枝が集まる幹の天辺に着くはずだ。
しかし問題は、
「道が止まってる・・・」
デジタル掲示板の隣辺りで天龍が付けたであろう溝が消えていた。
「仕方ない、登るぞ」
そう言ってシュガーは木肌の僅かな凹凸に手足をかけて登り始めた。
俺も後に続こうとするが、命綱無しのこの状況で落ちれば終わりという現実が嫌でも頭を過ぎる。
「手が震えて登れない」
「お前、それでもプレイヤーか!?大丈夫だ、オイラの通った道を登れば問題ない。急げ!」
その時だった。
怒り狂う天龍が此方を血だらけの両眼で見つめてきた。俺は恐怖で足がすくんだ。
もうダメだ、喰われる。そう思った時、下の方から声が聞こえてきた。天龍はそちらへ頭を向ける。
「タロとヤムだ。彼等の勇姿を無駄にするな、登るんだ!」
そうだ、俺は一人で此処へ来たんじゃない。皆で上へ、此処を出るんだ!
「すまないシュガー、急ごう!」
小さな凹凸に全てをかけて、希望へと手を伸ばした。
「大丈夫か・・・?」
「あぁ、何とか」
何とか掲示板の上まで登りきる事ができた俺は、上がる呼吸を整えていた。上に上がるとそこは太い枝が何本も柱のようにそびえ立っていた。柱と柱の間を進む事は出来そうだが、見通しが全くきかず中はまるで迷路のようになっている。
突然、シュガーはピンと両耳を立てると慌てて柱の奥に進み始めた。俺も置いて行かれないように後を追って迷路の中へ入り込んだ。
「どうしたんだシュガー!?」
「タロとヤムが殺られた。最後まで諦めずたいまつで立ち向かった彼等の思い、オイラが必ず故郷へ届けてみせる。天龍は直ぐにこっちへ向かってくるはずだ。」
「そうか・・・彼等が作ってくれたチャンスを無駄なくいかさないとな」
「少しでも中へ進んでおきたい。ここまで調査出来たラビットはいないが、周囲から見た時に出口らしきものは発見されなかった。高さのせいだと思っていたんだが、この密集した枝達が隠していたのかもしれない。」
「てことは、ここの中心に出口があるって事か・・・」
枝を超えても超えても次の枝の姿が見えるだけ、変わらない景色に全く進んで居ない様な錯覚に陥る。方向は変えていない筈だが360度全く同じ景色に囲まれていると方向感覚さえも怪しく思えてくる。
「シュガー、こっちで大丈夫なのかな?」
シュガーは振り返る事無く返事を返してきた。
「迷っている暇はないぞ。オイラは方向音痴じゃないし、あっちこっち向くから余計に迷うんだ」
まぁ、確かに一理ある。
急いでいるつもりだが、込み合った枝の隙間を縫うように進むしかない為中々スムーズには進めない。
「いてッ、どうしたんだシュガー?」
突然シュガーが足を止めたので、俺はシュガーの背にぶつかる形で止まった。
「天龍だ・・・来るぞ」
後ろを向いてシュガーが呟くと、後方から木の軋む様な音と、上で細かい枝葉が揺れ擦れ合う音が迫ってきている。
「やばい急げ!!」
慌てて前へ前へ進むが一向に何も見えては来ない。
音がどんどん大きくなっている。きっと天龍が俺達に気づいたんだ。向こうからもこちらが見えない筈なのにどうして位置が分かるんだ!?
シュガーは音で敵を感知している。トトは匂いに敏感だったな・・・そういえばオッサンが前に4とか3とか言っていた。数が多い方に引き寄せられるのか。でも、タロとヤムと別れた時は同じ数だった筈・・・そうか、火だ!天龍は温度を感知して追ってくるんだ!だからたいまつを持った彼等を狙ったんだ。
「すぐ後ろまで来てるぞ!急げ!」
背後に迫る恐怖が背筋を冷やし固める。振り向きたい衝動を抑え1つまた1つと柱をすり抜ける。いつになったら出口が見えるんだ・・・もしかしてこれがずっと続くんじゃ・・・出口なんて本当に
「穴だ!!穴があるぞプレイヤー!!」
前方から聞こえるシュガーの声に等々幻聴かと歯を食いしばって隙間から這い出すと、そこには無数の柱から伸びる木の皮がシワのように重なり合って渦を書くように中央に集まっていた。全てが集まる中心には真っ暗な大穴が口を開けている。上を見上げると、大穴の上には不思議と木の枝葉が避けるようにして茂っており、長い円柱状の空間は明かり窓のように青空が見えた。その窓の中心には鳥籠を包み込む無数の鉄組が集まり、まるで黒い太陽が此方を覗いているようだった。
俺達は夢中でその穴へ向かって走った。その時、
「わぁ!!」
シュガーが声を上げて倒れ込んだ。慌てて引き返そうとすると、シュガーの後ろの柱が大きな軋み音と共に倒れ、しゅるしゅると長細い真っ赤な舌と純白の鱗が姿を現した。
「来るな!行け!!」
木の皮の隙間に挟まった足を引っ張りながら叫ぶシュガーを、俺はとても見捨てる事など出来なかった。
「あの時シュガーは見捨てずに俺を助けてくれたんだ!」
考えるよりも先に走り出した足が誇らしかった。
「シュガー!ツタを投げろ!」
それを聞いたシュガーは懐から固く編まれたツタの端を此方へ投げた。
ギャーーーーーーーーーー!!!!!!
天龍は美しい瞳が収められている筈の2つの穴から赤黒い涙を流しながら激昂し、俺達にその鋭い牙を剥き出して襲い掛かってくる。
俺は投げられたツタを力いっぱい引くと飛び出したシュガーに右手を差し出す。
俺はシュガーが伸ばした手を掴むと、思いっきり穴に向かって走り出した。
大穴を覗き込むと、中はどこまでも闇が広がるばかりで深ささえも分からない。
これ、飛び込んでも大丈夫なのか・・・
一瞬そんなためらいが頭を掠める。
「コウジ!後ろ!!」
シュガーの叫び声に振り向くと天龍の口腔がすぐ側まで迫っていた。
答えは決まっている。
大穴の中へ1人と1羽で飛び込んだ。
バキッと牙がぶつかり合う音を耳に残して、俺達は真っ暗な闇の中へ落ちていった――。
【お読みいただきました皆様へ】
本日も御来店ありがとうございます!
少しでも面白いなと思って頂けましたら、広告欄下の★★★★★をタップして頂けますと、大変不知火の励みとなり、筆も投稿も早くなるかと思います!!
そして、続きが気になったそこの御方!
是非ブックマークを押してお待ちください!!
これからも、どうか末永く宜しくお願い致します。
長くなりましたが、またの御来店お待ちしております。
不知火美月




