収束11
――胸くそ悪い。
『ちょっと!いい加減しっかりしてよ!朝からお酒ばっかり飲んで、少しは次の仕事探してよ!』
『子供達ほったらかして、久しぶりに返ったと思ったら何!?そんなに血だらけで…どうせ酔っ払って喧嘩でもしたんでしょ!何処の誰よ、謝らないと…警察沙汰にでもなってたら離婚するからね!』
『私は働いてるんだから、家事くらいしてくれてもいいんじゃないの!?』
『もう…無理よ。この子達で手一杯なの!アナタの面倒まで私、見れる余裕なんてないわ。離婚しましょう。』
『ねぇ、アナタって何か最後まで貫き通せる様なモノってないの?』
またか――。
「おい!もうワイバーンは動かない。天龍もすぐそこだ!今まで何とかかわしていたが距離を詰められたらどうしようもないぞ!次の攻撃はどうかわすんだ!?」
あれからどれだけ経ったかも覚えてないのによ。
「おい!聞いてるのか!!何か有るんだろ?なぁ、俺が思いつかない様な奇策がさ。なぁ、そうだろ?」
ここに来て、天龍と鼻突合せていると胸くそ悪い事ばかり過ぎりやがる。
「喚くな。うるせぇ――」
ただ騒いで慌てふためくだけ、その癖して威勢だけはいいときやがる。本当馬鹿だ、馬鹿としか言いようがねぇな。
「お前、兄弟はいるのか?」
「!?なんだよこんな時に、関係ないだろ!」
「いいから教えろ」
「・・・妹が1人いるみたいだ」
「フッ、そうか」
「アンタ今笑っただろ!!人に聞いといて最低だな!」
「笑ってねぇよ。ま、俺が言うのもなんだが・・・家族は大事にしろよ。おめぇは男なんだしっかり守って絶対離すな。」
「何くさいこと言っ」
振り向くと、鬱陶しくて憎くてたまらない俺が死ぬ間際瞼に焼き付けた復讐相手は最初から居なかったかのように消えていた。
「おい!オッサン!!」
下を見下ろそうと身を乗り出した瞬間、もう動けない筈のワイバーンが暴れ始め俺は宙を舞っていた。
このまま死ぬのか・・・
『俺は、ここを出ていく』
そうだ、もう少しなんだもう少しで出られる。諦めたら今までが全て無駄になってしまう。それだけは絶対に嫌だ!!
ドン!!
背中に衝撃が走る。あまりの衝撃に海老反りになり、声が漏れた。そして重力に引かれ、肩と腰から地面に落ちた。
薄れかかる意識をなんとか保ち、立ち上がるとそこはグランドツリーにできた溝の中であった。
助かったのか・・・いや、まだだ登らなければ、天龍が来る前に。
どうやら足に問題は無いらしい。1歩進める事に激痛を発する腰などお構い無しに俺は走った。上へ上へ有るとも分からない出口を求めて止まることを忘れた鮪のようにただ足を前へ伸ばし続けた。




