ウサギ狩り
「やっと来やがったか!遅いじゃねーか!!」
静かだった囚人達は一斉に騒ぎ出した。
一体何が起こっているんだ⁈
「お前たち!五月蝿いぞ!静かに大人しくし」
ドカッ
騒ぎへ制止をかけにドアを開けた警備ラビットがバタリと倒れ込むと、まるで絨毯が敷いてあるかのように平然と踏みつけて入ってきた男。
「よぉ。お待ちかねのウサギ狩り開始だ!」
その言葉を合図に囚人達は一斉に牢のドアを体当りで無理矢理ぶち破り上へ向かう階段を登っていく。
肩や頭から血を流している者や、肩の位置がおかしくなっている者も平然と歩いている。
その形相はまさしく悪魔やら鬼やらと例えられるに相応しいものだった。
残っているのは俺たちの牢だけになった頃。
ドゴッ!メキ…ドカッ!ギシ…
「おい!!」
耳元に大声を浴びせられ、我に返ると騒がしい方の男が必死に牢の格子に体当たりをしていた。
「お前ら何やってるんだ!!早く手伝え!さっさと行かないと先越されちまうぞ!!」
慌てた様子で怒鳴り付ける彼の肩は酷い有り様だった。
「あんたそれより手当てしないと!その肩駄目になるぞ!」
だが一向にタックルを止めようとしない。
「やめろって!死にたいのか!!」
後ろから取り付いてやめさせようとしたが、振り払われてしまった。
おかしい…コイツらみんな変だ!!
もう一度奴を止めようとした時、後ろから肩に手を添えられた。
驚いて振り向くともう1人の同室者、静かなフードの奴が定位置に座っていた。
「おい、お前も見てないで何とかしろよ!」
バリッ!!ドガターン!
物凄い音を立てて木製格子と男が廊下へ倒れ込んだ。
「お、おい!大丈夫か!?」
男に駆け寄ると既に生き絶えていた。暗がりで分からなかったが床一面、男の血で埋め尽くされていた。
全く馬鹿な事を…
だが不思議と男の顔は笑みを浮かべていた。
「え!?ちょっ!何だよ!」
さっきまで置物のように動かなかったフードの奴が急に此方へ走って来たかと思うと、あろう事か俺の右手を掴んで階段の方へ走り出した。
「待てって!状況も分からないのにむやみに走ったら危険だ!第一出口の場所が分からないだろ?」
何度話しかけても無駄だった。フードは何の反応も示さないまま真っ直ぐに迷う事なく走り続けた。
上へ上へと昇る毎に煙が濃くなり、炎の熱が空気に乗って伝わってくる。
重たいドアを開けると、眩しい光が射し込んできた。
「外だ!」
外に出るとそこはまさに戦場の真っ只中だった。
煙で状況が全く掴めないが、明らかにホーンラビット達が劣勢なのは分かる。
彼らは炎と煙で散り散りに分断され、混乱状態だ。何とか弓や槍で対抗しているが自分を守るので精一杯といった感じだ。
対してプレイヤー達は協力している様子は無いが夫々が取り合うようにしてラビット達を捕まえている。煙や炎を物ともせずに突っ込んで行ったり、どう見ても生き物の行動ではない。
痛みを感じていないのか…
どうすればいい!?隠れる所なんて何処にも
「よぉ、久しぶりだな間抜け。」
背後から耳に入ってきたその声は、何度も何度も繰り返してきたあの声だった。
一瞬にして全身の毛が総毛立つ感覚。
腹の底でふつふつと煮えたぎっていた怒りが一気に頭まで吹き上がり、怒りと吐き気と憎しみと恐怖がごちゃまぜになった。
「クソ野郎!何処にいる!!」
「此処だ。」
後頭部に強い衝撃と熱を感じて、俺はまた暗闇に落ちていった。
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不知火美月




