ファーム5
「誰かいるのか!?すまないが手を貸してくれ!」
「?何だコイツ」
「見たことない顔だな、うっかり踏み外すなんてマヌケな奴です。」
男が2人、人間だ!何だかとても懐かしい気がする。
人に会えただけでこんなにも安心できるものかと初めて知った。
「上がれないんだ、助けてくれ」
すると髭を蓄えたいかつい中年男が近寄ってきた。身を乗り出して俺の体へ手を伸ばしてくる。
良かった、これで助かる。助かったらこの人達について行こう、ここの情報を少しでも多く手に入れて早くここから出るんだ!
「なんだ丸腰かよ、よくここまで来れたもんだぜ。」
は?
「よくそんな汚い者に触れますね、早く行きますよ!こんな所に居たら肺がやられます!それにもう時間がありません、急がないと!」
「あ?待てよ丸メガネ!ちっ、腹立つぜ。まぁ後で刻めばいいだけか。」
「オイ!待ってくれ!頼む行かないでくれ!」
「じゃあな。助けてもらえると思ったか?お前にそんな価値ねーよ。」
右耳から流し込まれた絶望に総毛立つ。
クソッ!目の前のクソッタレの顔を殴る事も出来ない。
無防備な背中をただ眺める事しか出来ないのか!!
ふざけるな!憎い、憎い憎い!
力尽きた指が一本、また一本と離れていく。
忘れない、忘れないぞ。最後の最後まで、奴らの姿をこの目に焼き付けてやる。
殺してやる。憎い、憎い、自分の無力が心の底から。
力が欲しい、誰にも負けない、誰にも傷つけられない力。
そうだ!そうなんだ!力!力さえあればもう何も失うことは無い!
枯れ落ちる木の葉のように、緩やかに下へ下へ落ちていく。
燃え盛る炎と真っ黒な煙が視界を包む。
「呪う、呪ってやる。たとえこの身が朽ち果てようと絶対に許すものか!!」
灼熱の業火は全身に強烈な電流を流す。
真っ暗な世界で薄れゆく意識の中、衝撃を1つ感じた気がした。




