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00 プロローグ/モノローグ

 おはこんばにちは、PeaXeピークスです。

 無謀にも別小説合わせて3作同時執筆をしているPeaXeです~……。

 異世界転移でややシリアスの『異世界賢者のファンタジア』や、異世界転生ギャグコメディな『転生龍も楽じゃない!』ともまた違う世界観で書きたかったので。

 こちらの作品は不定期更新となっていますが、他の作品も不定期と言いつつ定期更新になったので確約はしません。というか、出来ません。

 また、この話は暴力表現というか、残酷表現が入っているので注意してくださいね!

 作品全体では、控える方向で進みます。何せ、作者がほのぼのの方が好きなので!




 浮花浪蘂フカロウズイ。どこにでもあるようなものの喩え。


 ……そんな言葉が似合ってしまう、目立った特徴の無い子供。

 館恵タチ メグミは、正にそんな感じの少女であった。


 小学5年生。年齢は10歳。背丈も成績も平均的な、どこにでもいる普通の子。


 一応容姿は整っているが、それは単に「醜くはない」というだけ。

 特別美しくもかわいくもなければ、格好良くも渋くも無い。


 引っ込み思案でも、積極的でもなく、友達の数もそれなり。


 テストの成績は、中から上を行ったり来たりの平均的な一般人。


 良くも悪くも、どこまでも平凡な、ただの少女だった。


 通っているのも有名な進学校でも何でもない、一般的によく見る学校。

 得意な教科は理科と国語、苦手な教科は社会と英語。

 とはいえ赤点を取ったり、とびきり良い成績を取ったりするわけでもない。


 平和な世の中に何だかんだと適応した、その他大勢の1人だった。


 人には、役割が存在する。

 それに運命という名前を付けた者もいる。

 恵が生まれたのは、その役割が、目に見える形で存在する世界。


 天才には天才の。

 凡人には凡人の。

 王や大統領、画家や作曲家に至るまで。


 あらゆる『役割』は、身体のどこかに現れる紋章で決まる。


 恵は一般人。ごくありふれた、世界に最も多い存在だ。

 それでも彼女はひと際特徴が無く、生まれてから死ぬまで、その凡庸さは変わらない。


 そう、思われて、いた。




 ―― あの事件に巻き込まれるまでは。




 身代金目的で24人もの子供を誘拐した、どこか遠くから来た、何人かの男達。

 彼等の紋章が示すのは……「革命家」であった。


 彼等は大量の子供を攫い、身代金が期限より1日遅れるごとに、子供を1人ずつ殺していった。


 金持ちの子供は後に回され、一般人の子供が次から次へ、残った子供達の目前で殺される。


 ある子供は刺殺。ある子供は銃殺。ある子供はどこかで用意したらしい電気椅子。

 処刑方法の見本市を、ムリヤリ見せられた気分になる。


 金持ちが金を渋れば渋るほど、被害者は増えていく。


 24人中、金持ちの子供は3人のみ。


 運が良いか悪いかで言えば、やはり、攫われた時点で悪い方である。


 恵は、監禁生活3週間の中、一般人では最後まで残った。


 ただ、一般人と言っても、恵以外は何かしら特別な『役割』は持っていた。

 中には『凄惨な死』を与えられた子もいたが、その子は処刑でよく見る縛り首で死んだ。


 良くも悪くも、彼等は与えられた『役割』を全うしたのだ。




 では―― 恵は?




 ……それまでは無かったカメラが、恵を映していた。


 男達は、縛られて動けない恵を、用意していた水槽の中へと閉じ込めた。水槽には水が満ち、恵が入った分だけ、水が溢れる。


 何とかもがいて空気を求める彼女の目には、水槽を閉じる鉄板の蓋が映っていた。


 透明なガラスの壁の向こうでは、覆面の男達が恵を見てほくそ笑んでいた。

 残り僅かとなった3人の子達も、強制的に恵を見せ付けられていた。


 その中には、恵の親友もいた。


 空気を求める肺の中に、水槽の水が入り込む。


 涙と水槽の水が混じり合い、恵の口から出る泡が無くなって、少し。


 彼女はもがくのやめ、静かになった。


 ……水槽の蓋は、その後1日開く事は無かった。




 浮花浪蘂。

 館恵は、つまるところそんな感じの少女であった。


 そう、途中までは。


 始まりからずっと平凡だった少女の、劇的で、苛烈で、悲惨な死は、世界を変えた。

 生まれてから死ぬまで『平凡』と、神によって定められたはずの何かが、狂った。


 それまで神を信じていた者達の全てが、神に反旗を翻した。


 『革命家』達は、恵以外の子供同様、その使命を遣り遂げたのだ。


 だが、恵はそんな事を知らない。

 死んでしまって、その場に留まるでもなく、魂が別の場所に呼ばれてしまったから。


 その後、彼女が生きた世界で、何度目かの世界大戦が勃発した事も。

 その後、高度文明が滅んだ事も。

 その後、人類史が一度途絶えた事も。


 恵は、知らない。




 恵は静かに、息を飲み込んだ。


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