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第七十一話  攻撃準備

 総合評価が、1000を突破しました。

 此処までの高評価となるとは・・・

 感謝です。

 暁帝国  飛山山脈北部



 此処は、一般人の立ち入りが厳しく制限されている。

 その理由は、ミサイルサイロを設置しているからである。

 核戦力の要の一つであるICBMが、大量に配備されている。

 <第零砲兵隊基地>と呼称されるこの基地は、大騒ぎとなっていた。

 絶対に来ないと思っていた核攻撃命令が下ったのである。

『各員、迅速に点検作業を完了せよ。万が一にも不備の無い様に。』

 粛々と準備を進めて行くが、動揺を隠せない。

 核の惨禍を知っていれば当然であるが、よりにもよって自身がその核攻撃に関わっているのである。

「絶対に来ないと思ってたのに・・・」

 そんな呟きが、度々吐き出された。

 同時に、戦略原潜が第二次攻撃の備えとして出撃準備を始めていた。

 核を含めて独走態勢となっている暁帝国は、誰にも阻まれずに報復の為の準備を着々と整えて行く。




 ・・・ ・・・ ・・・




 アルーシ連邦  サクルトブルク



「緊急のお話と伺っておりますが?」

 フレンチェフは、白洲と面会していた。

 白洲の表情は鬼気迫るものがあり、余程の緊急事態が起きた事が察せられた。

「先日、スマレースト大陸と東京に於いて、ハレル教圏によるテロ行為が発生しました。」

 実際にはテロどころでは無いが、他に表現のしようが無かった為にテロ行為として処理している。

 白洲は、詳細を語る。

「そんな・・・いくら奴等でも、そこまでの事をするとは・・・」

 ハレル教圏と対立しているだけに、フレンチェフもハレル教圏の人間を信じていない。

 とは言え、何事にも限度がある。

 心底嫌っている相手であっても良心の呵責は存在し、致命的な行動はそうそう起こせない。

「残念ながら、証拠も揃っています。」

 白洲は、命令書の写真と工作員の尋問映像を見せる。

「・・・・・・」

 流石のフレンチェフも、絶句するしか無かった。

「それで、我が国に対して何を求めるのでしょう?」

 イウリシア大陸の現状は、近代化の過渡期にある事で海外進出の余裕は無い。

 しかし、白洲はフレンチェフの想像を超える内容を話し始める。

「我が国は、報復措置を取る事を決定しました。その報復の内容なのですが、此方を見て下さい。」

 それは、核に関する説明動画である。

「こ・・・これは・・・!」

 同じ人間が開発したとは思えない兵器の威力に、大きな恐怖心が宿る。

「これが、ハレル教圏に対する報復手段です。」

 動画が終わり、白洲は語り始める。

「我が国が元居た世界では、この核兵器を大量に保有して突き付け合っておりました。核の撃ち合いは、世界そのものの滅亡へと直結すると判断され、使用しない為のあらゆる努力が為されておりました。」

 フレンチェフには、最早想像も付かない次元の話である。

「この禁忌の力を使用すべきとの判断が下された訳ですが、これ程の兵器ですから事前に各国の理解を得る必要があると思い、こうして御時間を頂いているのです。」

 何も言わずに核攻撃を実施すれば、間違い無く世界の警戒心は跳ね上がってしまう。

 アルーシ連邦以外でも、根回しが進んでいた。

 そして、可能ならば核攻撃は回避したいのが本音であった。




 ・・・ ・・・ ・・・




 センテル帝国  暁帝国大使館



 距離を置いたとは言え、国交を断絶した訳では無い為、大使館が置かれている。

 しかし、世界会議以降は暇な日々が続いていた。

 しかし、核攻撃指令により、その暇な日々が突然終わりを告げた。

「・・・と言う訳です。」

 大使である 原 健 は、呼び出したスマウグとシモンに対し核に関する説明を終えた。

 二人は、想像を超え過ぎた話に背筋が寒くなる。

 彼等は、暁帝国の力を最も把握しているが、それでも不足していた事を思い知らされた。

(一体、何処まで先を行っているんだ・・・)

 好奇心旺盛なシモンも、暁帝国に関しては投げ出したくなっていた。

「しかし、何故それを我々にお伝えするので?」

 スマウグは、冷静に疑問を投げ掛ける。

「核の存在は、世界の在り方を大きく変える事になります。誰もが、他人事ではいられないのです。」

 スマウグは、それだけでは納得しなかった。

 この話の席には、外交に於ける重要人物を同席させる事を絶対条件としているからである。

 核の説明をするだけならば、情報部か外交部の一官僚だけで事足りる。

「それは分かるのだが、我が国に出来る事は無いと思われるのだが?」

「あります。我が国は、可能ならば核攻撃を避けたいと思っています。そこで、貴国に神聖ジェイスティス教皇国との仲介をお願いしたいのです。」

 スマウグもシモンも仰天した。

 すぐにでも報復したい相手と、話し合いの場を持とうと言うのである。

(そこまでするのか・・・)

 逆を言えば、そこまでしなければならない程の力と言う事でもある。

「すぐに準備しましょう。後、この件は最高幹部へ伝えねばなりません。」

「是非、そうして下さい。」

 各種準備の為、この話は一旦切り上げられた。



 皇城



 スマウグとシモンの上奏により、最高幹部を臨時に招集した緊急会議が開かれた。

「さて、スマウグよ。世界規模の危機と言っていたが、どの様な事が起こるのか朕にも分かる様に説明をしてくれ。」

 ロズウェルドが、会議を始める。

「はっ。それでは、事の経緯を御説明致します。」

 スマウグとシモンは、大使から渡された資料を提示しつつ説明して行く。

「「「「「・・・・・・」」」」」

 誰も想像すら出来ない内容に、理解が追い付かずにいた。

 既に、暁帝国の国力は時間を掛けてあらゆる想定をしていた筈であった。

 しかし、今回提出された情報は、その想定を軽く上回るものである。

 暁帝国は、世界そのものを滅亡へと追いやる事も可能であると思い知らされた。

「何と言う事だ・・・」

 世界会議に於いて、マイケルの取った行動の深刻さを理解する。

「しかし、彼の国は核攻撃の実行を良しとしていない模様です。神聖ジェイスティス教皇国との仲介を、我が国へ要請しております。」

「何故だ?報告が本当ならば、即刻滅ぼしても誰も文句は言わんだろう。」

 覇権思想が当然の様に存在する世界である。

 平和主義を是とするセンテル帝国と言えども、自国が攻撃を受ければ容赦無く敵対国を滅ぼす。

 致命的とも言える行為に及んだ敵に対し、この期に及んで何を話す事があるのか?

 それが、この場にいる全員の感想であった。

「彼の国は、核攻撃による情勢変化を相当恐れている様です。最悪の場合、本当に世界を滅亡させかねないと。転移前の世界では、核の応酬により滅亡寸前まで行った事もあるそうです。しかし、継続したあらゆる努力により、滅亡の事態を回避して来たとの事です。その様な世界であったが為に、敵対国同士であれ、常に会談可能な体制を整えていたと。」

 敵対国は滅ぼすだけの存在でしか無いハーベストでは、まず有り得ない体制である。

「暁帝国の存在した世界とは、余程理性的なのだな。」

 ロズウェルドは、その世界こそが理想的だと感じた。

「スマウグ、何としても仲介を成功させよ。いざとなれば、軍を展開させても構わん。そしてシモン、核兵器に関するあらゆる情報を最優先で集めよ。」

「「ハッ!」」




 ・・・ ・・・ ・・・




 神聖ジェイスティス教皇国



「やはり、我等はハルーラ様に愛された選ばれた者だったんだな!」

「そうだとも!罪深き邪教徒共に後れを取る筈が無い!」

「ハルーラ様、御加護を感謝します・・・」

 暁勢力圏の混乱を知らされて以来、ハレル教圏の活気は高まっていた。

「もたもたするな、亜人の分際でサボれると思うな!」

 その下で、奴隷となっている亜人族はより厳しく虐げられていた。

 暁帝国の滅亡は、時間の問題と誰もが考えていた。



 教皇庁



「失った工作員は痛手だが、死んでいるならば追及されても白を切り通せますな。」

「暁勢力圏で起きている事件は、誰が何と言おうとも正真正銘の神罰なのです。我等をいくら追及しても、痛くも痒くもありません。」

 リウジネインとシェイティンは、今後の対応策を話し合っていた。

 事の真相は筒抜けなのだが、既に勝った気でいた。

 その事を知らない二人は、更なる皮算用を続ける。

「予てより説得していた大司教は、完全に此方側になりました。このまま上手く味方を増やせば、あの愚か者から主導権を奪取する事も夢ではありませんぞ。」

 二人は嫌らしい笑みを浮かべる。

 愚か者とは、ホノルリウスの事である。

 彼とウマが合わない二人は、何とかして教皇の座から引きずり降ろそうと画策して来た。

 その一環として、各方面の大司教との内通を繰り返して来たのだが、世界会議で求心力の高まったホノルリウスから離れる事を良しとする者は殆どいなかった。

 だが、今回の地獄送り計画を利用し、一定の支持者を集める事に成功していた。

 現状では、ホノルリウスを支持する者が圧倒的に多いが、ゆくゆくはこの状況を逆転出来ると考えていた。


「センテル帝国から?」

 当のホノルリウスは、センテル帝国から使者やって来たと聞き、首を傾げていた。

「はい。何でも、暁帝国が会談の場を用意する事を求めているので、外交官を至急派遣して欲しいと。」

「馬鹿馬鹿しい、応じる訳が無いだろう。そんな戯言を言う様な連中は、センテル帝国だろうと門前払いすれば良い。」

 彼の現在の最大案件は、ネルウィー公国問題である。

 暁帝国が、本格的にハレル教圏への干渉の準備を始めているとしか思えず、この様な状態では世界会議の場でさえ顔を合わせたくないと言うのが本音である。

「し、しかし、奴等は艦隊を引き連れておりまする。下手に刺激しますと、取り返しの付かない事態になりかねませぬ。」

 顔色を変えたホノルリウスは、慌てて外の様子を見に席を立つ。

「・・・センテル帝国は、正気を失ったのか?」

 酷い言いようだが、センテル帝国が他国の仲介を行うだけでも常軌を逸していると言える。

 増して、軍を派遣してまで強硬に推し進めるなど、世界が卒倒するレベルの異常さである。

「いずれにしても、選択の余地は無さそうだな。トーポリを呼んでくれ。」

 トーポリと話し合った結果、彼の部下である大司教以下数名の派遣が決定した。




 ・・・ ・・・ ・・・




 ネルウィー公国



 暁勢力圏の混乱は、移民政策の検討を行っているネルウィー公国を直撃した。

「安全性が確保されなければ、移民など有り得ん!」

「陸続きでも、防衛体制が整っている公国の維持を行った方が良いのでは無いか?」

 否定的な意見が噴出し、暁帝国に対する不信感が芽生えつつあった。

「暁帝国の使節が到着しました。」

 その言葉に、全員が入り口を見る。

「・・・」

 長老達の視線は、警戒へと戻っていた。

「それでは、経緯を御説明します。」

 使節は、地獄送り計画と東郷拉致未遂の説明を行う。

「既に、スマレースト大陸の問題は沈静化しつつあります。また、拉致未遂事件を起こした犯人の確保にも成功しております。調査の結果、ハレル教圏の引き起こしたテロ行為である事が判明しました。」

 更に、ハレル教圏の一連の計画を説明し、報復措置に関する説明を行う。

「今やハレル教圏に限らず、このセイキュリー大陸そのものが危険地帯と言えます。奴等は、敵対者に対しては何でもやります。今回の事件により、それが明らかになりました。」

 長老達は、あまりの内容に何の感想も出て来ない。

「選択の余地は無いと見るべきでしょう。」

 口を開いたのは、中間報告で一旦戻って来たケイである。

「此処へ戻る前、スマレースト大陸の状況を視察しました。使節の証言は事実です。あれ程の事態も、迅速に沈静化出来る程の力を持ちます。我等に、同じ事が出来るでしょうか?」

 出来る訳が無い。

 遅かれ早かれ、全滅状態となるのは目に見えている。

 生き残れるのは、竜人族位だろう。

「幸い、インシエント大陸の住民は我等を受け入れています。セイキュリー大陸は、遠からず無法地帯となるでしょう。その前に対策せねばなりません。」

 此処まで言われてしまっては、これ以上結論を先延ばしには出来なかった。

「・・・分かった、移民を受け入れよう。」

 こうして、全面的な移民が決定した。

 この結論はフェンドリー王国にも伝えられ、同じく全面的な移民が決定した。

 反発する者も少なくないが、より安全な暮らしを求めていた者は多く、次々とインシエント大陸へと渡って行った。



 地球のトップ達は、馬鹿では無くて助かった。

 ただ、冷戦時代よりも今の方が危ない気がするのは、気のせいかな?

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