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第五十五話  暁勢力圏の日常

 ゴタゴタしていて、投稿が遅くなってしまいました。

 スマレースト大陸



 暁帝国から最も近かった為に、真っ先に暁帝国の恩恵に与かった大陸である。

 かつては石造りであった街道は、アスファルト製となって大陸の隅々にまで張り巡らされている。

 街道沿いの地下には電線が通っており、大陸の住民は現代水準に近い生活を手に入れていた。

 これ等のインフラ整備は、スマレースト大陸に限らず何処にでも存在するある問題を解決した。

 各国の主要都市は、城塞都市となっている。

 城塞都市は、頑丈な城壁に囲まれて防衛力に優れる反面、城壁の存在が邪魔となって拡張性が極めて乏しい。

 それでも、流通や情報の中心地である都市には多くの人間が集まる。

 その数は、各都市のキャパシティーを大きく超えるものであり、裏通りに入ればその日暮らしの浮浪者が大勢たむろしている光景が当たり前であった。

 浮浪者が大勢存在する現状は、街の治安にも問題を起こしていた。

 しかし、インフラ整備によって貧弱な獣道一本で繋がっていた地方の寒村にも街道が繋がった結果、そちらへ機会を見出す浮浪者が大勢現れ、貧しい地方に働き手が溢れる事となった。

 田舎の宿命とも言える元の住民とのトラブルが度々発生してはいるものの、これによって食料生産が向上し、各国の経済力の底上げが実現した。

 同時に、浮浪者が大幅に減少した都市部の治安も回復し、衛生面での改善も実行可能となっている。

 大陸内が急激に変化する一方、大陸外との玄関口も急激に変化していた。

 港湾都市と呼ばれる海沿いの都市は、コンクリート製の桟橋や大型クレーン等が配置され、経済活動の重要な拠点となっている。

 現状ではオーバースペックと言っても良いが、徐々に各種需要が増している事もあり、段階的に従業員の人数を増やして対応している。

 更に、ジンマニー王国とハーレンス王国には、国際空港が建設中である。

 ビンルギー公国にも中規模な空港が建設中であり、サイズ共和国は地形と敷地面積の問題から空港は建設出来ないが、ヘリポートが設置されている。

 本格的な空の便の開通が近くなっている訳だが、その反面竜騎兵の肩身が狭くなっていた。

 これまでは空の覇者としての猛威を振るい、戦争に於いて決定的な役割を果たして来た飛竜だが、大陸戦争では現代兵器の前にただのカモと化していたのである。

 あまりの惨敗ぶりに暁勢力圏では、飛竜はもう時代遅れとの声が大きくなっていた。

 実際にはその様な事は無く暁帝国がおかしいだけなのだが、竜騎兵を除く大多数は「暁帝国空軍に制空権の確保を任せれば良い。」と考える程である。

 その様な風潮の中、当の暁帝国は苦々しい目線でこの状況を眺めていた。

 暁勢力圏の防衛に一番の責任を負っているとは言え、何でもかんでも丸投げされたら堪ったモノでは無い。

 圧倒的な国力を誇っているとは言え、大陸二つの防衛は大きな負担である。

 そこで、再度竜騎兵の価値を見直させる為の交流会を行う事が決定した。



 サイズ共和国



 交流会の会場となったサイズ共和国であるが、大陸同盟関係者は現在進行形で発生しているあるトラブルに心臓を握り締められる気分を味わっていた。

「やるぞー!」

「元帥、すぐに降りて下さい!」

 飛竜に跨って騒いでいるのは、太田元帥である。

 何でも自分で試さなければ気が済まない性質である為、飛竜の価値を見極める為に実際に乗ってみようとしているワケである。

 当然、御付きの幕僚達は必死に止めようとしているのだが、いつにも増してやる気に満ち溢れている事もあり、全く止まる気配が無かった。

「ずっと、飛竜に乗ってみたかったんだ・・・竜騎兵は、男のロマンだ!」

 見事なまでの公私混同である。



 ギャゥン!



「うわっ!」

 太田の乗った飛竜は一声上げると、突然太田を振り落とした。

 周囲は、水を打った様に静かになる。

 飛竜の眼を見ると、明らかに不満そうであった。

 熟練の竜騎兵は、飛竜の言わんとしている事を理解した。

 曰く、「こんな危なっかしい奴を乗せて飛べるか。俺は、墜落なんてしたく無ぇ!」との事である。

 その後、太田は部下達からいつも以上にキツイお説教タイムに入ってしまう。

 空軍のトップ達が長いお説教を繰り広げる傍ら、予定通りに竜騎兵による実演が行われた。

 竜騎兵の腕は確かであり、戦闘ヘリをも上回る機動もやって見せた。

 この実演に、特に陸軍関係者は大きな衝撃を受けた。

 「まともな対空兵器が無ければ防ぎ切れない。」と言う声が相次いだのである。

 暁帝国陸軍すらも慄かせる実力が示された事で、竜騎兵に対する視線は劇的な変化を見せた。

 相変わらず懐疑的な視線を向ける一派は存在するが、それも竜騎兵に強い憧れを抱く太田が裏で手を回した結果、表立って竜騎兵廃止へ動く事は無くなり、その影響力は日に日に小さくなる一方となった。

 竜騎兵は、無事に存続が決定した。




 ・・・ ・・・ ・・・




 クローネル共和国  ライマ



 国家元首となったカエルムは日々の執務に追われる傍ら、暁帝国に関する詳細な情報を集めていた。

 以前は、軍人として軍事関係の情報しか集めていなかったが、その軍を支える根底に何があるのかが気になり出したのである。

 そこで視察団を派遣し、暁帝国の実情を調べさせていた。


 カエルムの元には、中間報告が届いていた。

「自動車の保有台数は1億台近くに上り、鉄道網は網の目の様に広がり、鉄の飛竜・・・飛行機と言ったか?飛行機は、民間でも旅行等で利用される・・・」

 全てに於いて次元の違い過ぎる暁帝国の力に、眩暈を覚える。

「いずれ、我が国もこの様になるのか・・・」

 クローネル共和国は他国よりも開発優先順位が低く、未だに暁帝国の手が入っていない。

「どうかされましたか?」

 そこへ秘書が話し掛ける。

 カエルムは、黙って中間報告を渡した。

「・・・視察団はどうしてしまったのでしょうか?」

 秘書は直接戦火に晒されていなかった事もあり、中間報告の内容を全く信じない。

「信じられないだろうが、事実だ。」

「カエルム様、一体何を・・・?」

 言い募ろうとする秘書を遮り、カエルムは戦時中に体験した事を話す。

「わ、我々は、そんな連中を相手にしていたのですか!?」

「そうだ。今のこの状況こそが、何よりの証拠だ。」

 秘書は、自身の常識がガラガラと崩れ去る感覚に襲われた。

(現実を知ったか。まぁ、遅すぎたがな・・・)




 ・・・ ・・・ ・・・




 センテル帝国



 此処では、外交部と情報部の官僚が睨み合っていた。

 暁帝国への使節の派遣が決定されたのだが、誰を派遣するかで揉めているのである。

「此度の派遣は、世界会議に関する指導と言う意味合いもある。これは、我が外交部の管轄である。」

「世界会議に関してはそちらの言う通りだろう。だが、今回の派遣には暁帝国の実情の調査と言う目的も含まれている。これについては、我が情報部の管轄だ。」

「いや、それも我が外交部に任せて戴きたい。今や、暁帝国は国交を結んだ友好国。友好国に対するあからさまな情報収集は、如何なものか?」

「その友好国を蔑ろにしようとしたのは、一体何処のどなただったかな?」

 情報部からすれば、暁帝国の情報は喉から手が出る程欲しい物であり、外交部からすれば、先の失態を挽回する為に全ての手柄を独り占めしたがっていた。

 双方の意見が食い違ったまま無意味に時間が過ぎて行く中、使節の候補に上がっている官僚達はうんざりしていた。

「上は、まだ争ってるよ。」

「アホらし・・・辺境の小国の為に、こんなに必死になるなんてな。」

 暁帝国の実情を正確に把握している者は少ない。

 復帰した外交部の幹部達も、大帝の元で決定された方針に従っただけであり、それ程強力な国家が相手であると言う認識は持ち合わせていなかった。

 そもそも、暁帝国の情報を見せ付けられた最高幹部の中にも、未だに信憑性を疑っている者もいるのである。

 情報部以外は、暁帝国との外交は自身の部署の得点稼ぎ以上の価値は無いも同然であった。

 そして、直接派遣される立場にある者達にとっては、面倒事以外の何物でも無い。

 上層部の醜い争いと相まって、現場の士気は駄々下がりであった。

 結局、この件は大帝以下の最高幹部の会議へと持ち越され、情報部と外交部の共同で事に当たる事が決定した。



 情報部



「ハァ、こんな事の為に一体どれだけ時間を掛けるんだ・・・」

 シモンは、頭を抱えながら愚痴をこぼす。

 誰よりも暁帝国の実態を把握しているシモンからすれば、今回の顛末は恥晒し以外の何物でも無く、無駄にストレスの溜まる事態でしか無い。

「・・・まぁ、直接見れば分かる事だ。あまり目に余る行動をされると、我が国の存亡に関わる。」

 シモンは、使節団の監督役として同行する事となった。




 ・・・ ・・・ ・・・




 暁帝国  昭南島



 暁帝国最西端となっているこの島は、此処より西の国家に対する窓口となっている。

 かつては、巡視船の接近に恐れを為して逃亡する商船その他の姿がよく見られたが、アルーシ連邦との同盟以降巡視船に関する周知徹底が進められ、慌てて逃亡すると言う事態は激減していた。

 そして、昭南島はイウリシア大陸からやって来る商人で賑わっていた。

「うおお、すっげぇ!」

「これは、何処から見ればいいんだ!?」

「あれが、バスとか言う奴か。馬車とは比べ物にならねぇな。」

「ここ、どこ・・・?」

 見た事も無い光景に、誰もが興奮し混乱していた。

 そんな喧騒の中に、驚きつつも鋭い眼光で周囲を見回す一団がいた。

「これは、どうなっているんだ!?」

「野蛮な異教徒風情が、何故これ程までに発展出来る!?」

 彼等は、神聖ジェイスティス教皇国から派遣された密偵である。

「クッ、こんな奴等を打ち倒さねばならんのか・・・」

「だが、どうやって此処まで発展出来た?ハルーラ様の加護以上に優れた要素など無いだろう。」

「その、ハルーラ様の加護を利用していたとしたら?」

「どう言う事だ?」

「少し耳にしたのだが、暁帝国はインシエント大陸の古代遺跡を熱心に調査しているらしい。」

 全員が驚愕の表情をし、直後、憤怒の表情に変わる。

「クッ、神聖な遺跡を不当に荒らした挙句、その大罪を自覚しないまま発展したと言うのか・・・!」

「何としても、滅ぼさねばならんな。」

「とにかく、我等はこの事を急いで報告するぞ。」

 そう言うと、いくつかの商品を購入して帰途に着いた。



 話の組み立てが思う様にいかなくなって来たな。

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