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第四十七話  暁勢力圏の完成

 思ったよりも長くなってしまった

 これにて、インシエント大陸編は終了です。

 暁帝国  東京



「これで終わりか。長かった・・・」

 これまでの一連の戦いは、スマレースト紛争に端を発したものであった。

 一部反乱勢力による小規模な紛争が、大陸一つを巻き込む大戦争に発展し、あろう事か準列強国を滅亡に追いやるなどと誰が想像出来るだろうか。

「何でこんな事になったのやら・・・」

 振り返りながら、東郷は苦笑する。


 インシエント大陸戦争は、今度こそ完全に終結した。

 これに伴い、大陸全土がインシエント大陸連合で統一される事となった。

 事前の取り決め通り、属国と保護国は一旦独立した。

 そして、大規模な国家再編が行われた。

 元属国は、富を吸い取られ過ぎてどうしようも無い状況に陥っていた事もあり、すんなり了承した。

 一方、元保護国はクローネル帝国のお零れに与って豊かな環境下に置かれていた事もあり、強く反発した。

 ただし、宗主国を失ってしまった以上は行動を起こしても勝てる見込みは無い為、時間の経過と共に反発の声は小さくなって行った。

 それでも諦めなかった者達は、大陸を再度戦乱へ巻き込みかねない危険思想集団として徹底排除された。

 この動きに恐れを為した各国は、以降は口をつぐんだ。

 そして、紆余曲折がありつつも、以下の様に纏まった。


 クローネル共和国

 首都:ライマ

 国家元首:カエルム

 国土:大陸西端


 コロネ公国

 首都:テルス

 国家元首:バルサ

 国土:大陸北西部一帯


 フロンド共和国

 首都:ハルセインキ

 国家元首:マインヘイム

 国土:大陸北部から大陸中央部近辺一帯


 パルンド共和国

 首都:ピルスカ

 国家元首:ピスキス

 国土:大陸中央部一帯


 ラビア共和国

 首都:ローガ

 国家元首:サムタナ

 国土:大陸南東部一帯から旧クダラ王国領東側


 リティニア共和国

 首都:メンデギス

 国家元首:ウィリス

 国土:大陸北東部一帯から旧クダラ王国領西側


 デオーチ共和国

 首都:アスカ

 国家元首:デヲチ

 国土:大陸南部一帯


 不干渉地域

 パルンド共和国の北東の山岳地帯

 旧クダラ王国の生存者多数有り

 山岳地帯周辺を堀と城壁で封鎖


 意外な事に、王制を採用していた国々は国王の決断によってあっさりと王制を廃止した。

 開戦に伴う激務で、心身共に疲れ果てていたのが原因である。

 現役の国王達は一刻も早く隠居したがり、その様子を見た後継者候補達も後を継ぎたがらなかった。

 そして、今回の国家再編でこれ幸いとばかりに現役を退き、政体を変更したのである。

 そして一通りの再編が終わると、インシエント大陸連合を組織し直した。

 これにより、名実共にインシエント大陸の統一が実現した。

 クローネル共和国以外は、大国と呼べる程の広大な領土を持つ。

 しかし、予想外のタイミングでの開戦により、あまり開発は進んでいなかった。

 特に、元々の領土が非常に狭かったフロンド共和国とコロネ公国は、新たに編入された広大な領土を持て余す事となった。

 そこで、暁帝国が協力を申し出た。

 コロネ公国については、事前の取り決めによって近代化の義務を負っていた為にスムーズに開発事業に乗り出せた。

 その他の国についても、開戦前の開発事業計画の見直し等で時間を要したが、開発に乗り出す事が出来た。

 更に、スマレースト大陸同盟と同じく軍の相互派遣を始めた。

 旧クローネル帝国軍の生存者が、暁帝国軍の姿を見るやパニックを起こすと言うハプニングもあったが、これによって近代戦を学んで行く事となった。

 旧クローネル帝国の保護国であった者達も完全に沈黙し、安全が確保されたと判断した暁帝国はエンフィールドライフルの輸出を開始した。

 同時に軍の駐留を進め、大陸同盟と同じく土地を借り受ける代わりに、初期輸出分を無償提供した。

 更に、スマレースト大陸との本格的な貿易や軍事交流も始まった。

 インシエント大陸は完全に暁帝国の影響下へ入り、暁勢力圏は完成を見る事となった。


 インシエント大陸での作業がひと段落し、東郷達は新たな方針を決める為の会議を始めた。

「さてと・・・皆が頑張ってくれたお陰で、スマレースト紛争以来のゴタゴタが片付いた。しかし、準列強国を打ち倒した影響は大きいと思う。間違い無く世界が動く事になる。これからどうするか、皆の意見を聞かせて欲しい。」

 まず口を開いたのは、外務大臣の 吉田 覚 である。

 彼は、職人気質を持った外交官であり、部下に対してよく怒鳴り付けている。

 だが、良い部分と悪い部分をよく見極めた上でのお叱りの為、そこまで嫌われてはいない。

 むしろ、「オヤジ」と呼んで慕う者が多い。

 外交官としての腕は確かだが、これまでの外交成果が悲惨であった為、存在感が薄い事に悩んでいる。

「クローネル帝国を降した事で、我が国は世界から準列強国と認識される事になると思われます。そこで気になるのが、<世界会議>です。」

 世界会議とは、センテル帝国で三年に一度開かれる列強国と準列強国を集めて行われる会議である。

 かつて、好き勝手に勢力を拡大していた列強国同士で世界大戦を起こした事を切っ掛けに始まった。

 地球の世界大戦と比較すればそこまで大きな被害は出なかったが、何処へ行っても戦場ばかりと言う状況に大きな恐怖が巻き起こり、世界中が大混乱となっていくつもの国が崩壊した。

 これを教訓とし、世界の主要国同士で無用な争いを起こさない為の調整を行う場として、当時から最大勢力であったセンテル帝国の呼び掛けによって始まった。

「クローネル共和国から得た情報によりますと、最近の列強国同士は不和が大きくなっていると言います。更に、準列強国は列強国の傘下にいる事も多く、不和が助長されているそうです。」

「と言う事は、世界会議にノコノコ出て行ったら、また余計な争いに首を突っ込む事になると言う事か?」

「可能性は否定出来ません。」

 全員が渋い顔をする。

 戦時から漸く解放されて、いつも以上の激務から解放されたばかりだからである。

 加えて、インシエント大陸は外国勢力からの圧力に対抗する体制が整っていなかった。

 軍の駐留はまだ始まったばかりであり、物資の備蓄も進んでいない。

「そこで外務省としましては、個別に列強国と接触を図っていきたいと考えております。」

「いきなり列強国と接触するのか?」

「各国の認識はともかく、実際の力関係からしますと十分に可能と考えます。」

 東郷は逡巡する。

 クローネル帝国との戦いは、相手が此方の実力を把握していなかった為に起きた。

 これから接触する国が覇権国家ならば、同じ事が起こりかねない。

「何処から接触する?」

「アルーシ連邦が適当かと思われます。」

「理由は?」

「アルーシ連邦は、融和政策を取っている事が判明しました。加えてクローネル共和国からの情報によりますと、西からやって来る商船の中で最も多いのがアルーシ連邦所属との事です。更に、センテル帝国とも良好な関係を保っており、世界会議に先立ちセンテル帝国との関係を持つ事を考えますと、最も良い選択と思われます。」

 確かに、センテル帝国との関係構築はこの先の事を考えると必要不可欠であり、仲介してくれる国がいる事は魅力的である。

 加えて、近付いて来た商船を巡視船が追い返す構図となっている現状も変える必要がある。

 更に、融和政策を取っているのなら、成功する確率は高いと言える。

「・・・よし、分かった。まずは、アルーシ連邦と接触しよう。」

 当面の方針は決まった。

 世界からの注目を集める中、暁帝国は動き出す。




 ・・・ ・・・ ・・・




 アルーシ連邦



「これ程とは・・・」

 現在進行形で暁帝国から最も注目されているアルーシ連邦。

 この国のトップである大統領 フレンチェフ は、報告書を読んでいた。

 暁帝国との接触を決めた後、まずはライマへ諜報員を派遣して情報収集を行った。

 集まった情報は、センテル帝国さえ凌駕しかねない驚愕の内容であった。


 敵対すべきでは無いと言う自分の判断は正しかった。

 しかし、これ程の国家と接触する事が、果たして正しいと言えるのか?

 いや、そもそもこの報告に間違いは無いのか?


「・・・一度、皆で検討する必要があるな。」

(この情勢変化で、北の狂信者共も確実に動き出す。今の内に対策を考えないとだな。)

 フレンチェフの苦悩は続く。




 ・・・ ・・・ ・・・




 神聖ジェイスティス教皇国



「クッ、何たる事だ・・・!」

 ハレル教教皇である ホノルリウス は、インシエント大陸の情勢変化に落胆と怒りを露わにしていた。

 本来の予定ならば、クローネル帝国が大陸戦争に勝利する事で裏で繋がっていたトライヌスを介し、クローネル帝国への布教を実施する予定であった。

 その為に莫大な資金援助を行ったにも関わらず結果は惨敗であり、クローネル帝国はクローネル共和国として暁帝国の言いなりとなってしまったのである。

「異教徒如きに、何故こうも敗北するのだ!?」

 ホノルリウスを含むハレル教の上層部は、その多くが盲目的と言って良い程の熱心な信者である。

 彼等の最終的な目的は、ハーベスト全てをハレル教徒で埋め尽くす事である。

 しかし、現状は大陸一つの統一すら出来ていない。

「ハルーラ様は、何故これ程の試練をお与えになるのか・・・」

 ハレル教は、ハルーラによって世界が動いているとしている。

 その為、苦難に遭遇するのはハルーラによる試練や罰だと考えている。

「暁帝国は、我等の試練として立ちはだかっている。何としても排除しなければ・・・!」

 そう結論付けると、各所の調整に奔走し始める。




 ・・・ ・・・ ・・・




 センテル帝国



 この国の中枢では、かつて無い事態に大騒ぎとなっていた。

 列強国や準列強国の軍勢が退けられる事は、フロンド共和国の例も含めて珍しい事では無い。

 しかし、国そのものがやられた事は一度も無かった。

 強国による支配は、良くも悪くも世界の均衡を保って来た。

 だが、東の地でその均衡が崩れてしまったのである。

 センテル帝国が最も恐れている事は、世界大戦の再燃である。

「神聖ジェイスティス教皇国が、活発に動いています!このままでは、軍事行動に発展しかねません!」

「ピルシー帝国が、軍を動かし始めました!神聖ジェイスティス教皇国に対抗した動きと思われます!」

「セイルモン諸島で、小規模な武力衝突を確認!アルーシ連邦による威嚇攻撃の可能性大!」

 情報部から上がって来る報告は、悪いものばかりであった。

 帝国中枢では、東部地域(センテル帝国の東側の地域の呼称)の情勢が刻一刻と悪化して行く現状に頭を悩ませていた。

 その中心にいるのは、勿論暁帝国である。

 情報部総監の座にある シモン は、ある物を見ていた。

 それは、写真である。

 センテル帝国は、ハーベストで唯一カメラを製造する技術を持つ。

 その写真に写っているのは、しきしま である。

 これは、商船へ乗り込んだ諜報員が撮影したも物である。

 シモンは、写真を見て苦悩する。

 帆を使わない推進方法を保有するのは、センテル帝国だけの筈であった。

 だが、写真に写っている船に帆は無く、センテル帝国以外に実用化していない筈の砲塔まで確認出来る。

 報告によれば船体は鉄製であり、ガトリング砲に酷似した武装まで確認出来たと言う。

(信じられない。だが・・・)

 他国ならば、一笑に付される報告。

 だが、写真と言う被造物により、事実である事が証明されていた。

 武装は貧弱だが、洗練された船体は高性能を予感させる。

 信じたくは無いが、暁帝国の技術力はセンテル帝国を越えている可能性すらある。

 もし、この国が覇権思想を持っているとしたら、大変な事になる。

(これは、絶対に陛下にお報せしなければ!)

 シモンはこの先、祖国に苦難の時代が訪れる事を予感しながら、報告の準備を始める。



 まさかの出落ちの復活www

 王政をトントン拍子に廃止出来たのは気になると思いますが、紆余曲折の中で解決したと思って下さい。

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