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第三十七話  各国の動向

 インシエント大陸より西の国は、どうしてるのかな?

 暁帝国  東京



 東郷達は、インシエント大陸の今後の方針についての会議を行っていた。

「まさか、イサークが裏で糸を引いてた何てな・・・」

 かつて収容所でモウテンから聞いた名前が、今更出て来るとは思っていなかった。

 尚、その事を知ったキメイダが怒りのあまり失神してしまったのは別の話である。

「まぁ、それも終わりました。所長の話によると、イサークは大人しくしている様です。」

 山形元帥が答える。

「そんな簡単に大人しくなるものか?」

 大陸一つを戦乱に巻き込もうと活発に動いた人間が、そう簡単に諦めるとは思えなかった。

「我が国を直に見て、心が折れた様です。イサークが行動を起こした理由と言うのが、「自国より劣った者達にコケにされた事が許せない!」と言うものだったそうですから。」

「これは、このまま終戦とはなりそうも無いな。」

 改めて、クローネル帝国が厄介な存在だと思い知る。

「そうなります。先日、特殊作戦連隊を送り込み情報収集を始めましたが、諦める気は無い様です。」

 山形は、近衛軍団を中心とした再編が行われている事を伝える。

「あれ程の損害を出しても、もう一戦仕掛ける余裕がある様です。更に、国を挙げて暁勢力圏に対するネガティブキャンペーンを実施しており、軍への志願者が増えているそうです。」

「此処から、更に軍拡するのか・・・」

 東郷は、クダラ王国の滅亡で神経を擦り減らしており、早く終わらせたいのが本音である。

「我が軍の状況ですが、パルンド王国の復興支援を行っております。国境砦の再建につきましては、間も無く完了するとの事です。ですが、それ以外は難航しております。かなり派手に荒らされたらしく、精神的な手当てが必要な者が多い上に、食料が致命的に足りないそうです。」

 南部方面軍の焦土戦術は、多大な効果を上げていた。

 暁帝国軍は、荒らされた土地と住民の手当てに奔走する事となり、そこかしこで食料を中心とする物資不足が発生していた。

「海兵隊はどうしてる?」

「現在、フロンド共和国で出撃の機会を窺っております。」

 今回、海兵隊の出番は無かった。

 戦乱が長続きした場合、海からクローネル帝国領内へ侵攻して強制的に終戦へ向かわせる事を目的にしていたのである。

 しかし、早くも小康状態へ入った為、一番近いフロンド共和国へ状況把握も兼ねて一旦身を寄せる事となった。

「それで、フロンド共和国はどうなってる?」

「山岳地で食い止めた為、軍以外に直接的な被害は出ておりません。更に、敵の銃火器を鹵獲して自軍の大幅な強化を実施していた様です。」

「銃火器!?」

 東郷は、機関銃や自動小銃を連想する。

「火薬の代わりに魔石を利用したマスケット銃です。ただ、銃身に未知の素材を利用している事が確認されたそうです。詳細は不明ですが、研究する必要があると考えます。」

「そうだな。交渉して何丁か譲って貰ってくれ。」

 マスケット銃と聞いて安堵したが、未知の素材と聞いて不安を露わにする。

(地球には存在しない未知の物質か・・・どんなファンタジーな現象を引き起こすシロモノなのやら。)




 ・・・ ・・・ ・・・




 パルンド王国



 クローネル帝国軍によって大きな被害を受けたこの国は、暁帝国軍主導の下で復興作業に勤しんでいた。

「し、信じられん・・・」

 工兵の作業を眺める兵士が呟く。

 彼等の目の前では、見た事も無い巨大な機械が地面を抉っていた。

 ピルスカでの騒動から、近衛隊長の発案で未だに暁帝国の技術を見ていない兵士達に、道案内を兼ねて直接見て貰う事が決定した。

 この為に動員された者の大半は、主要都市の防衛を任されたエリートであり、当初は不満が続出した。

 しかし、彼等の目の前に見た事も無い機械が次々と姿を現すと、今度は驚きのあまり唖然とする者が続出した。

 この一件から、「現場を知らない者はエリートでは無い。」との認識が近衛隊長を介して広まり、精鋭認定された者は必ず定期的な国土の巡回を行う事となる。

 現在は、南部方面軍によって燃やされた家屋の再建を行っていた。

 瞬く間に以前よりも立派な家屋が出来上がり、どうやっても勝てない程の圧倒的な差がある事を思い知る。

(味方で良かった・・・)

 トールと同じく、誰もがそう思った。

 同時に、大きな傷跡を残して去って行ったクローネル帝国を憎悪した。




 ・・・ ・・・ ・・・




 準列強国が大きく動いた事で、インシエント大陸は他大陸から大きく注目される事となった。



 アルーシ連邦



「大統領、クローネル帝国は、侵攻作戦に失敗した模様です。」

「な、何と!?一体どんな奇跡が起きたと言うのだ!?」

 大統領と呼ばれた初老の男は、年甲斐も無く身を乗り出す。

「それが、暁帝国と言うスマレースト大陸よりも更に東の新興国が参戦した事で、戦況が大きく変わったそうです。」

「暁帝国?確か、最近商人達がよく噂していると聞いたな。だが、そんなに強いとは思えんが・・・」

 経済の動向を注視するのが、アルーシ連邦のやり方である。

 その関係で、比較的早くから暁帝国の存在を認知していたが、政府は関心を示さなかった。

「反クローネル帝国国家を纏めた、インシエント大陸連合結成の仕掛け人との情報もあります。現地人は、あの一帯とスマレースト大陸を、暁勢力圏と呼称しているそうです。」

「なるほどな。いくら中小国でも、一つに纏まれば巨大な力になり得る。しかし、あれ程多数の国家を纏めるとは、かなりの力があると見るべきであろう。」

「我が国の脅威にはなり得ないと思われますが・・・」

「いや、油断してはならん。我が国は、セイキュリー大陸と対立しておる。此処から更にもう一つの大陸と事を構えるのは、いくら我が国の物量でも厳しい。むしろ、暁帝国と友好関係を結ぶべきであろう。」

「ゆ、友好関係ですと!?」

 部下は、驚愕した。

 かつてのアルーシ連邦は貪欲に周辺国を征服していたが、最近では友好的な関係を結んで行く方針へ転換している。

 とは言え、遠く離れた島国の為に列強国たるアルーシ連邦が自ら友好関係を築きに行くなど、常軌を逸した判断と考えても無理は無い。

「気持ちは分かるが、北の狂信者共に対抗する為にはこの方が良い。」

 アルーシ連邦は、暁帝国へ積極的に接触する方針を固めた。




 ・・・ ・・・ ・・・




 神聖ジェイスティス教皇国



「教皇様、クローネル帝国軍が撤退したとの情報が入りました。」

「何だと!?どうしてそうなった!?」

 教皇と呼ばれた男は、その威厳ある服装に見合わない大声を上げる。

「きょ、教皇様、どうか冷静に。」

「む、そうだな・・・」

 部下の諫めにより、教皇は深呼吸して落ち着きを取り戻す。

「フゥ・・・それで、どう言う事だ?」

「はい。フロンド方面はいつもの事なので省略致しますが、パルンド方面は暁帝国軍の参戦によって壊滅状態になったとの情報です。」

「暁帝国と言うと、我が国の宣教船を追い返したとか言う国か?」

「その暁帝国です。」

 彼等は、最近では海外へ船を出して積極的に布教活動を行っている。

 暁帝国の存在を知った事で、更に布教する範囲が広がると喜び宣教師を派遣した結果、巡視船に驚いて逃げ帰ってしまったのである。

 しかし逃げ帰ったとは言えず、軍艦で追い返されたと虚偽の報告をしており、この国の対暁帝国感情は非常に悪いものとなっていた。

「クッ、邪悪な異教徒め・・・これでは、折角の投資が無駄になってしまう。」

 セイキュリー大陸では、神聖ジェイスティス教皇国を総本山とする<ハレル教>が広く信仰されている。

 トライヌスは、密かにこのハレル教の信徒となり、自国にある遺跡の調査権と引き換えに莫大な資金援助を受けているのである。

 その為、クローネル帝国の敵対国は、神聖ジェイスティス教皇国の敵対国と同義となっていた。

「教皇様、援軍を派遣しては如何でしょう?」

「それは無理だ。南の邪教徒共が、また圧力を強めて来ている。」

「・・・懲りない奴等め!」

「即座の資金援助の引き換えとして借り受けていた艦隊を返してやるとしよう。」

 財政が切迫しているクローネル帝国は、迅速に援助を実施する事を強く望んだ。

 その引き換えとして、艦隊の多くを暫くの間貸与する事となっていたのである。

「クローネル帝国が敗北する様な事は、絶対にあってはならん。このまま援助を継続せよ。それと、暁帝国に対して圧力を加える準備を進めよ。」

 神聖ジェイスティス教皇国は、暁帝国と敵対する方針を固めた。




 ・・・ ・・・ ・・・




 センテル帝国



 世界最強のこの国も、インシエント大陸の動向に注目していた。

 情報伝達が速い都市部では、市民達が語り合っていた。

「おい、聞いたかよ?クローネル帝国が負けたらしいぞ!」

「ハア!?そんな事あるワケ無いだろ。我が国に比べれば雑魚も同然とは言え、あの辺では最強の国だぞ?」

 これまでに無い大きな話題に、周辺の者達も注目する。

「何度も確認したんだけど、本当みたいだぜ。しかも、聞いた事も無い国にやられちまったみたいなんだ。」

「オイオイ、一体どんな国なんだよ?」

 聞いた事も無い国と聞き、聴衆は興奮する。

「暁帝国とか言う名前らしい。」

 一瞬、静まり返る。

「本当に聞いた事無ぇな・・・」

「お前、知ってるか?」

「いんや、知らねぇな。」

 騷付き出す聴衆を無視し、話は続く。

「暁帝国人は、魔術が一切使えないらしい。」

 騷付きが大きくなる。

「そんな馬鹿な!それでどうやって戦うんだ?」

「魔術が使えない様な弱小国に負けるなんてあり得んだろう。」

「何かの間違いだ。いや、魔術が使えないなんて話の方が信じられん。」

「此処から先は全くワケが分からないんだが、暁帝国は魔術が使えない代わりに、黒竜よりも圧倒的に速い巨大な鉄の鳥を使ってるそうだ。更に、地上では巨大な鉄の箱を動かしてるそうだ。」

 沈黙が場を支配する。

「な、何言ってんだ。」

「頭おかしいだろう、そんな事言い出した奴は。」

 想像の斜め上を行く話に、聴衆は反応に困る。

 そんな聴衆の中に、熱心にメモを取っている者がいた。

(うーん、報告書の作成が大変だな・・・)


 この国で、インシエント大陸の騒動に関心を向けているのは、民衆ばかりでは無かった。

 一目で一般人の住む施設では無いと判る豪華な部屋でも、インシエント大陸に関する話がされていた。

「各方面から集めた情報によりますと、暁帝国と呼ばれる国が深く関わっていると思われます。」

「暁帝国?朕は、全ての国を記憶している筈だが、その様な国は覚えが無い。」

 荘厳な雰囲気を醸し出す男は、ゆったりとした口調で語る。

「はい。情報部でもあらゆる資料を調べておりますが、過去にもその様な名前の国家が存在した事は確認出来ておりません。」

「ふむ・・・それで、その暁帝国とやらはどの様な国なのかね?」

「未だ、民衆の噂話程度しか集まっておりません。」

 そう前置きし、集まった情報を報告する。

「・・・・・・」

 荘厳な雰囲気はそのままに、男は固まってしまう。

「所詮は噂話であります。インシエント大陸は此処からかなり離れておりますので、原形が分からなくなる程に尾ヒレが付いてしまったのでしょう。」

「う、うむ・・・しかし、スマレースト大陸と反クローネル帝国国家を纏め上げたと言う話までが嘘とは思えん。それ程の力があるならば、クローネル帝国を打ち負かす事も可能なのだろうな。」

「はい。情報部もそう判断し、全力で情報収集に当たっております。」

 好ましい回答に、男は満足気に頷く。

「くれぐれも不備の無い様にな。我が臣民の脅威となるのか、慎重に調べるのだ。」

「お任せ下さい。」



 一度に列強国を出したけど、この先の展開が不安になってきた。

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