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第三十四話  大陸動乱6

 思った以上に長くなっています。

 もうしばらくお付き合い下さい。

 クローネル帝国  ライマ



「カエルムからだと?」

 総司令部で、スぺキアは報告書に目を通していた。

 そこへ、フロンド方面軍のカエルムから直通の通信が入ったとの報告が上がったのである。

(あのカエルムの事だ。余程の緊急事態なのだろう。)

 そう判断したスぺキアは、通信に出る事にした。

『通信規律を破る真似をしてしまい、申し訳ありません。』

「構わん。貴官がどれ程優秀かは分かっているつもりだ。態々この様なマネをしたと言う事は、余程の重要事項があっての事なのだろう?」

『はい、その通りです。』

「聞こう。」

 カエルムは、これまで入手した暁帝国に関する情報を包み隠さずに報告した。

『何度確認しても、事実であると言う結論しか出て来ませんでした。信じ難いとは思いますが、このままでは我が国は滅亡致します。』

 スぺキアは、あまりにも荒唐無稽な内容に咄嗟に言葉が出なかった。

 しかし、ある報告書を思い出すと、事実である可能性が高いと結論付けた。

「いや、信じよう。」

『!・・・本当ですか!?』

「ああ。君の今の報告について一つ心当たりがあってね・・・」

『?』

「クダラ王国の滅亡がほぼ確定した。」

『そ、そんな・・・早過ぎる・・・』

「そう、早過ぎるのだ。」

 だからこそ、この報告が信じられなかったのである。

 だが、カエルムの話が事実だとすれば、合点が行く。

「報告によると、飛竜の数十倍巨大な飛行物体が、黒竜の数倍の速度でクダラ王国各地に飛来したそうだ。そして、その飛行物体は何らかの攻撃を行ったらしい・・・甲高い音が聞こえたかと思うと、その飛行物体の真下で魔導砲の砲撃など問題にもならん程の大爆発が連続して起きたそうだ。」

『・・・』

 カエルムの息を呑む音が聞こえて来る。

「その後には、黒煙と爆発によって出来た巨大な穴だけがあり、建物も人も跡形も無くなっていたとの事だ・・・結果、抵抗力を完全に奪われた所にインシエント大陸連合の軍勢が一斉に攻め掛かり、遅滞戦術すら出来ていないと言うのがクダラ王国の顛末だ。」

 暫く、沈黙が支配する。

『スぺキア殿、停戦は出来ないでしょうか?我が軍の状況もこれまで以上に悪く、最早勝利は不可能となりつつあります。』

「・・・・・・分かった、検討しよう。君にも手伝って貰うぞ。」

 現実を知った者達は、破滅の未来を回避する為の方法を模索し始める。




 ・・・ ・・・ ・・・




 パルンド王国



 首都へと続く街道上に、クローネル帝国軍と暁帝国軍がいた。

 此処を突破されれば、首都までの進軍を阻む者はいなくなる。

 万が一にも突破されない様に塹壕を築いて待ち構える事となり、その手際の良さと素早い陣地構築にトールを筆頭とする武官達は圧倒された。

「こ、これが暁帝国の力か・・・」

「魔術が使えないと聞いたが、魔術を使わずにこれ程の事が出来るのか?」

「もう此処まで出来たのか!?」

 そこかしこで驚きの声が上がるが、近代戦の経験が無い彼等にはひたすら堀を掘っている様にしか見えなかった。

「藍原将軍、あの様に幅の狭い堀では意味が無いのでは?」

「あれは、堀ではありません。塹壕と呼ばれる防御陣地です。」

「塹壕?」

「はい。いくつか種類がありますが、あの壕の中に入って戦闘を行います。敵の攻撃を避けつつ、反撃を行えます。」

 銃火器を知らない彼等には、あの様な狭い溝の中でどうやって迎撃するのか想像も付かない。


 「敵襲ー!」


 突然の騒ぎに騒然となる武官達。

 見ると、上空から三騎の黒竜が接近していた。

「あ、藍原殿、何をしておられる!?」

 藍原は、その場から全く動こうとしない。



 シュパァーーーー・・・・ ドドドォォーーーン



 そうこうしていると、携SAM改の攻撃であっという間に三騎ともが撃墜された。

「・・・・・・」

 武官達は、絶句した。

 飛竜は、余程運が良くなければ同じく飛竜をぶつけるしか迎撃方法は無い。

 改良型の黒竜ともなれば、迎撃はほぼ不可能と言える。

 それを、ただの歩兵がいとも簡単に撃墜してしまったのである。

「今のは、恐らく偵察でしょう。本格攻勢を行うには、まだ距離があり過ぎます。」

 偵察情報さえ、一切持ち帰る事を許さない。

 あまりにも強力で容赦の無い攻撃に、味方ながら恐怖を覚える。

 もし、この力が大陸連合諸国へ向いたら・・・

「味方で良かった・・・」

 トールは呟く。

 あのまま、見下した態度を取っていたらどうなったか分からない。

(手遅れになる前に、態度を改めて良かった。)

 心の底からそう思った。




 ・・・ ・・・ ・・・




 クローネル帝国軍



「偵察隊との連絡は?」

「未だ回復せず!」

「クソッ!」

 マキシマスは、苛立っていた。

 緻密な計算を必要とする彼のやり方は、偵察情報一つの遅れも許されない。

 このままでは全体の計画が破綻し、作戦に致命的な遅れが生じかねない。

「将軍、仕方ありません。進軍を開始しましょう。」

「だが・・・」

 部下の言う通り、これ以上の遅れは許容出来ない。

 しかし、相手は暁帝国軍である。

 ただの弱小国では無いとの判断から、このまま進軍する事に躊躇していた。

「将軍、前衛部隊からです。予定時間を過ぎた事で兵達が苛立ち、近く抑え切れなくなるとの事です。」

「・・・仕方無い、前進命令!」

 いくら正確に計算したとしても、実行するのは人間である以上、この様な不確定要素は存在する。

 止むを得ず前進命令を出したが、不安を拭い切れない。

「将軍、少々神経質過ぎでは?敵を必要以上に過大評価する必要はありません。」

 副官である妖人族の女が言う。

 

 妖人族は、見た目の不気味さから長い間迫害されて来た歴史を持つ。

 生き残りを懸けて戦う者も多かったが、人間社会の中へ溶け込もうとする者も多かった。

 その結果、感情の機微に敏感になり、情報収集や交渉事に於いて優れた能力を持つ。


 マキシマスの不安の大きさを感じ取った副官は、緊張を和らげる必要があると判断した。

 マキシマスは副官の言葉を聞き、思った以上に肩の力が入っている事に気付く。

「うむ・・・そうだな。どうやら、根を詰め過ぎた様だ。少し休むとしよう。」

 暁帝国の参戦による計画修正に忙殺され、まともに眠れてもいなかった。

 パルンド方面軍の総兵力は、増援を含めて25万に達する。

 上層部の作業量は、殺人的なものである。

「フゥ・・・」

 マキシマスは横になると、疲れがドッと襲って来るのを感じた。


「報告します。ん、将軍はどちらに?」

「将軍はお休み中です。私が聞きます。」

 副官が答える。

「・・・分かりました。」

(不満そうね・・・まあ、将軍は人望も厚いし無理も無いわね。)

 マキシマスは高いカリスマ性を持ち、世間一般での人気も高い。

 直接お目に掛かれる機会を持つ連絡員の期待は、非常に大きい。

「えー、ピルスカに潜ませた密偵からの報告です。ピルスカから西へ15キロ程行った街道上に、暁帝国軍を主力とする部隊が防衛線を敷いて待ち構えているとの事です。」

 一番欲しかった情報が手に入り、副官は歓喜した。

「良くやってくれた。しかし、偵察隊は何をしているのだ?」

 副官は、偵察隊が何処かでサボっているのではと本気で思い始める。

「それが、未確認情報ですが、敵の防衛線上空に差し掛かった時に撃墜されたとの事です。」

「な、何だと!?」

 普段、決して表情を変えない副官が驚愕の表情を露わにした。

「街中で噂になっているそうですが、暁帝国軍の歩兵が来襲した黒竜三騎を瞬時に撃墜したと・・・」

「そんな馬鹿な話があるか!たかが歩兵如きに墜とせる訳が無いだろう!」

 黒竜が地上部隊によって撃墜された事は、これまでにも何度かある。

 しかし、事故による墜落を除けば、油断して敵に近付き過ぎたせいでバリスタを喰らうか、投石器で撃ち出された岩に直撃するかのどちらかであり、その辺の歩兵に撃墜された例は無い。

 何よりも黒竜の鱗は頑丈であり、歩兵が使用する武器では有効なダメージを与えられないのである。

(しかし、偵察隊が連絡を絶ったのは事実。サボりで無いとしたら、墜とされたとしか・・・)

 信じ難い報告に、判断に迷う。

「何があった?」

 副官が振り向くと、マキシマスがいた。

 連絡員は、慌てて敬礼する。

「敬礼はいい。それで、何があった?」

「ハッ、ピルスカの密偵から報告が入りました。」

 連絡員は、再度報告する。

「君が大声を出す訳だ。確かに、怒鳴りたくなるな。」

 副官は赤面する。

「とは言え、偵察隊がやられたのは事実だろう。ただの歩兵が黒竜を撃墜出来るとは思えないが、何らかの迎撃手段を持っていると考えた方が良いだろうな。」

 副官は、歩兵にやられたと言う内容ばかりに目が行き、それ以外の可能性に全く考えが及ばなかった事に今更ながら気付き、自身の不明を恥じた。

「思った通り、一筋縄では行かない相手の様だ。第一プランを放棄する。第二プランへ移行するよう伝えよ。」

「ハッ!」

 連絡員は、急いで指示を伝えに行く。

 第一プランとは、戦力差を生かした正面突破である。

 第二プランは、テルシオに近い陣形を大規模に実施する半包囲作戦である。

「これで上手く行けば良いが・・・」

 マキシマスは、それでも不安が拭えなかった。




 ・・・ ・・・ ・・・




 暁帝国軍



「偵察機より情報が入りました。敵は、陣形から推察するに此方を包囲する構えです。」

 藍原は、偵察機から送られて来る映像を眺める。 

(正面兵力は4万と言った所か。その後ろに、砲兵が約50門いるな。)

「藍原殿、如何しますか?」

 トールが問う。

「このまま迎え撃ちます。」

「このままですか!?」

「はい。下手に動くと、逆に敵に付け入る隙を与えてしまいます。」

 この一帯は、所々に小規模な林や岩場があり、敵に奇襲攻撃を受ける危険がある。

 街道は既に整備されているが、街道から外れれば未開発の土地などいくらでもあった。

(あれ程の敵を正面から受け切れるのか?いや、先程の事もある。何かとんでもない隠し玉があるのかも知れん。)

 武官達は、不安と興奮が入り乱れた様子で敵を待つ。


 30分後


「敵軍、30キロ圏内に侵入しました。」

 クローネル帝国軍の先頭集団が、砲兵隊の射程圏内(通常弾)に入った。

 その先頭集団の左右から別動隊が突出して来る。

「見事ね・・・」

 上空から見る敵軍の陣形の推移は、壮観の一言であった。

 武官達は、その映像を見てまた恐怖した。

「皆さん、どうされました?」

 藍原は、武官の様子がおかしい事に気付く。

「あ、いえ、何でもありませんよ、ハハハ・・・」


「総員、戦闘配置!」

 暁帝国軍の防衛線では、敵軍接近の知らせにより慌ただしくなっていた。

「早くせんかー!」

「ちょ、今かよ!?」

「DVDいいとこなのに・・・」

 飯時であった事もあり、のんびりしている兵士が多かった。

「何てタイミングで来るんだよ。」

「クローネル帝国滅すべし。」

「俺の楽しみの邪魔した代償は高いぞ。」

 理不尽な怒りをクローネル帝国へ向ける兵士が大勢いる現状を目にした隊長は、思わず敵に同情した。




 ・・・ ・・・ ・・・




 クローネル帝国軍



「あれが暁帝国軍か・・・」

 マキシマスは、5キロ地点から暁帝国軍の塹壕陣地を眺める。

「あれは堀ですか。随分幅が狭いですが、急造にしては良く出来ていますね。」

 クローネル帝国にも塹壕はあったが、使われた事は数える程しか無く、これまで戦った国に塹壕を使う国はいなかった為、堀と勘違いしていた。

「どうやら、優秀な工兵を多く抱えている様だな。我が軍に組み込みたい所だが・・・」

「皇帝陛下がお許しにならないでしょう。暁帝国を滅ぼす事に御執心ですから。」

 取り留めの無い会話をしながら、何処から攻撃するかを考える。

「よし、竜騎兵軍団による一斉攻撃から始めよう。いくら幅が狭いとは言え、堀を使われている以上はそこで被害が増すのは間違い無い。まずは、敵の抵抗力を上空から削ぐ。」

 マキシマスの指示を受け、120騎の黒竜から成る竜騎兵軍団が上空を通過する。

 並の国ならば、これだけで壊滅させる事も出来る程の圧倒的な戦力である。



 シュパァーーーーー・・・・ドドドドドドドォォーーーーーン



「「!!」」

 マキシマス達は、絶句とした。

 前方から何かが飛んで来たかと思うと、12騎の黒竜が一度に吹き飛んでしまったのである。


 当の竜騎兵軍団は、突然の惨劇に動揺していた。

 しかし、日頃の訓練が実を結び、編隊を乱さず飛行を続ける。

「クッ、何だ今のは!?」

「隊長、どうしますか!?」

 竜騎兵隊長は迷う。

 歴戦の彼でさえ、この様な事態は経験が無かった。

 まだ九割の竜騎兵が無傷で残っているが、そもそも一割にもなる数がこうもあっさりとやられてしまう事すらこれまで無かった事である。

「・・・撤退命令は出ていない、このまま攻撃を続行する!」

(あれ程強力な攻撃だ。魔力消費も大きい筈だ。此処は、物量差で押し切る!)

 隊長は、先程の攻撃を儀式魔術によるものと断定し、多少の被害には目を瞑る事で敵陣への到達を目指す。



 ダダダダダダダダダダダダダダ



 すると、下方から攻撃音らしき音が聞こえて来た。

「何だ?」

 隣の竜騎兵が真下を確認する。



 バシッ!



 直後、竜騎兵の顔が吹き飛んだ。

「ッ、何と言う事だ・・・!」



 ギャオオオオォォォォ



 黒竜の雄叫びがそこかしこから上がる。

 見ると、複数の黒竜が血飛沫を上げて墜ちて行った。

「ウワアアアアアアァァァ・・・・」

 一緒に落ちた竜騎兵からも悲鳴が上がる。

「こんな事が・・・」

 隊長は、目の前の光景が信じられなかった。

 無敵とまで呼ばれた、マキシマス指揮下の竜騎兵軍団。

 その無敵の称号が、脆くも崩れ去ろうとしていた。



 シュパァァーーーーー・・・・



 正面から聞こえる音に気付くと、最初の攻撃で放たれた魔術攻撃だと理解する。

 その攻撃は、真っ直ぐ隊長へ向かっていた。


 「畜生ォォォォーー!!」



 ドドドドドドドォォォォォォォーーーーーーン



 叫んだ直後、隊長を含む12騎が撃墜された。


 誰も何も言えない。

 一騎撃墜するのも途轍も無く困難な黒竜が、ハエを叩き落とすかの如くあっさりと墜とされて行く。

 120騎いた竜騎兵軍団は、30騎にまで減っていた。

「我々は、何と戦っているんだ・・・?」

 マキシマスの問いに答える者はいない。

 そうこうしていると、残りの竜騎兵も全て撃墜された。

「将軍、撤退を進言します。」

 部下の一人が言う。

「何を言う!此処までいい様にやられて、撤退すると言うのか!?」

「そんな事を言っている場合か!?敵の戦闘力は想像以上だ!このまま戦っても勝てないぞ!」

「確かに、対空能力は凄まじいものだ。だが、陸戦ならば数がモノを言う。更に、此方には魔導銃があるのだぞ!いくら敵の魔術が強力でも、兵力と兵士一人ひとりの質の高さは此方が上だ!」

「地上戦だけが常識的な範疇に収まっている訳が無いだろう!まだ何か隠し玉があっても不思議では無い!」

 マキシマスは、部下達の議論すら耳に入っていなかった。

 これまで積み上げた物が崩れ去って行く様な感覚に捉われ、目の前が真っ暗になって行く。

(こんな・・・こんな事が・・・)

「将軍、しっかりして下さい!貴方が決断せずに、誰が決断するんですか!?」

 見かねた副官が喝を入れた。

「・・・あ・・・うむ・・・そ、そうだな。ああ、そうだ。すまない。」

 マキシマスは正気を取り戻したが、どうするべきか大いに悩んだ。

「攻撃を続行しましょう。」

「撤退しましょう。」

 部下達が進言するが、別な結論を出す。

「全軍を此処から5キロ下げろ。防御態勢を敷く。上空援護無しで攻撃を強行するのは自殺行為だ。だが、撤退も許されない。予備の竜騎兵を呼び寄せておけ。」

 マキシマスは、持久戦を選択した。

 その方針に従い、直ちに全軍が動き出す。

 兵士達は、後退命令に安堵した。

 竜騎兵の全滅を見せ付けられ、士気が地に落ちてしまっていたのである。




 ・・・ ・・・ ・・・




 暁帝国軍



 トールは、実感が沸かなかった。

 120騎もの黒竜の編隊を目にした瞬間、彼は死を覚悟した。

 しかし、暁帝国は歯牙にも掛けずあっさりと全騎撃墜してしまった。

 全騎である。

 黒竜を落とすなど、一個竜騎兵中隊は必要である。

 それを、地上からの攻撃だけで墜としてしまった。

 敵は、竜騎兵が全滅したのを見届けると、後退を始めた。

「何と凄まじい・・・」

 武官の一人が口に出す。

 見ると、彼の顔色は真っ青であった。

 他の武官も、似たり寄ったりであった。


「防御態勢を整えているな・・・」

 藍原は、偵察機から送られて来る映像を見ながら呟く。

 堀や杭を設置し、魔導砲の援護を受けられる範囲内に兵を配置しているのが確認されていた。

「攻勢に出よう。準備を。」

「了解。」

 今度は、攻守を交代して第二ラウンドが始まろうとしていた。




 ・・・ ・・・ ・・・




 クローネル帝国  ライマ



「想像以上だよ。」

『そうですね・・・』

 スぺキアとカエルムは、パルンド方面軍の損害について話していた。

 マキシマスの竜騎兵軍団が全滅したとの報告を受け、流石のカエルムも狼狽えた。

「これでは、逆侵攻を受けかねん。君の進言に耳を貸して本当に良かったよ。」

『・・・・・・』

 カエルムは、素直に喜べなかった。

「しかし、マキシマス殿は間に合わんだろうな・・・彼を失いたくは無いんだが、止むを得ん。」

 スペキアは、一切感情の篭もっていない言葉を平然と吐く。

「君の所はどんな感じだ?」

『悪いとしか言えません。敵が我が方の魔導銃を大量に鹵獲し、大きな被害が出ております。仮に山岳地帯を越えたとしても、その頃には半壊しているでしょう。』

 スぺキアは、予想通りの返答に眉一つ動かさない。

「ふむ、やはりさっさと停戦した方がいいな。あの皇帝を黙らす事が出来ればだが・・・」

『出来ますか?』

「出来るとは君も思って無いだろう。そうなると、最後の手段を取るしか無いな。」

『それは?』

「クーデターだよ。」

『!!』



 次回、決戦

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