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第二十九話  大陸動乱

 大陸丸ごと一つが、戦乱に巻き込まれます。

 エラニア公国 



「いやー、いい汗かいたー!」

「まだ終わって無いぞ。」

「いいじゃん、今位は浸らせてくれよ。」

 彼等は、暁帝国から派遣された技術者達である。

 道路網の整備を行っている最中であり、丁度休憩に入った所である。

「あの、良かったらこれ・・・」

「ん?」

 話し掛けて来たのは、近くの村人である。

 手には、パンの入った篭を持っていた。

「おう、態々すまんな。ありがたく頂くよ。」

「いえ・・・」

 顔を赤らめた村人は、そのまま何も言わずに駆け出した。

「テメー、何羨ましい真似してんだ!」

「イテ、イテーぞコラァ!」

「うるせぇ!テメーだけいい思いしやがって!」

 パンを受け取った作業員は、周りから嫉妬の嵐を受けてしまった。


 大陸での開発事業は、現地住民からも歓迎されていた。

 作業員達は、気の良い者達ばかりで近隣の者とあっという間に打ち解け、明らかにこれまでと違う生活水準を手に入れた事で、対暁帝国感情は鰻登りとなっていた。

 一部の老人は、保守的な思想に凝り固まっていたせいで不満を露わにしていたが、大勢を覆す程の力は無い。

 そして、先程の様な作業員に差し入れをする光景が各地で見られる様になっていた。


「そう言えば、ラビア王国の国境線で騒ぎがあったらしいぞ。」

 作業員の一人がパンを齧りながら話し出す。

「ああ、俺も聞いた。クダラ王国軍が略奪を働いたらしいな。家屋も結構焼かれて難民が増えて来てるそうだ。」

「何処までも邪魔な奴等だな・・・」

 全員が怒りを露わにする。


 クダラ王国が連合結成を妨害しようとしていた事は広く知られていた。

 加えて、拉致事件の一件も相まって「さっさと奴等を滅ぼせ!」と言う声が多く出ている。

 東郷も出来ればそうしたかったが、クローネル帝国が背後にいる上にあの様な国民性を持った人間を多数抱える事となれば、間違い無く獅子身中の虫となる。

 その結果、生かさず殺さずがベストな対応と結論された。


「まあ、その邪魔な奴等の被害から素早く立ち直れる様に、俺達がいるんだ。」

「その通りだな。それに、我が国の支援で敵をすぐに追い返せてるらしい。これ以上の悲劇を繰り返さない為にも、この工事を早く完了させるぞ!」

「ヨッシャァ!休憩は終わりだ、やるぞ!」

 作業員達は、士気を大きく上げて工事を再開した。




 ・・・ ・・・ ・・・




 クダラ王国  ザイル



「何故だ!」

 キメイダは、飽きもせずに荒れ狂っていた。

 だが、今回は本当に訳が分からなかった。

 官僚から上がって来た報告は、国境線の向こう側で盗賊による被害が急増していると言うものである。

 それだけならば「裏切り者共め、ざまあ見ろ!」となるのだが、その盗賊騒ぎがクダラ王国の仕業だと思われていると言うのである。

 その証拠に、イサークから上がってきた報告では各国がクダラ王国への懲罰部隊の準備を進めているとの事であった。

 周辺国への攻撃は、万全を期す方針を固めている為にまだ行っていない筈である。

「クソッ!こんな理不尽な事があってたまるか!」

 これまでの理不尽な行いを棚に上げて吐き捨てる。

「ヤショウ、今すぐに軍を進めろ!」

 キメイダは、殺られる前に殺れを地で行く決断をした。




 ・・・ ・・・ ・・・




「フハハハハハハ、とうとう動き出したか!蛮族共め、皆殺しだ!」

 イサークは、上機嫌に高笑いをしていた。

 軍備拡張が完了した事を知ったイサークは、復讐心に駆られて一刻も早く行動を起こすべきと考えていた。

 だが、その望みとは裏腹に、念入りな準備を行ってから攻撃を開始すると言う方針となってしまったのである。

 納得の行かないイサークは、独断で動き出した。

 大勢の盗賊を雇い、クダラ王国軍の格好をさせて国境付近の集落を襲わせたのである。

 こうすれば各国は間違い無く動き出し、その動きに触発されてクダラ王国も動かざるを得なくなる。

 その目論見通りに、各国は動き出していた。

 復讐心に捉われたイサークは、後の事など全く考えずに突き進む。

 インシエント大陸は、惨劇へと向かって行った。




 ・・・ ・・・ ・・・




 ラビア王国  国境砦



 この砦は、クダラ王国との国境線付近に設置された砦である。

 砦の後方には、ラビア王国領内へ続く一本道があり、この砦によって守られている。

 砦の周囲は険しい山が連なっている為、安全にラビア領内へ入るならば砦を通過するしか無い。

 暁帝国の援助によって以前よりも頑丈な作りとなっており、小規模な城塞都市の様になっていた。

「ん?何だ、あれは?」

 見張りが、クダラ王国から近付いて来る土煙を見付けた。

「!・・・や、奴等、遂に来やがった!敵襲、敵襲ゥーーーー!」



 ガンガンガンガンガン



 異常を知らせる鐘の音が鳴り響く。

 その音に急かされた兵士達が、次々と持ち場に着いた。

「な、何て数だ・・・」

「軍拡してたってのは、本当だったのか・・・」

「いくら何でも防ぎ切れんぞ・・・」

 敵は、目測で5万人を超えていた。

 対する守備隊は、3000人プラス予備兵力1000人だけである。

 国境線を守るだけの砦にしては十分多いと言えるが、とても防ぎ切れるものでは無い。

「クッ、連絡員!大至急救援を要請しろ!」

「ハッ!」

 連絡員は、通信魔道具で連絡を取り始める。

「諸君、救援到着まで何としても持ち堪えるぞ!」


 「「「「「オォォォーーーーーー!」」」」」


 彼等の後ろには、守るべき者達がいる。

 その事実が、この絶望的な状況へと立ち向かう勇気を与えていた。

「敵軍、前進して来ます!」

「弓構えー!」

 城壁の上にいる弓兵が、一斉に敵軍を狙う。

「放てー!」



 バヒュゥーーーー・・・



 矢は、密集して突っ込んで来る敵兵に次々と命中した。

 矢を受けて倒れる兵士達。

 即死しなかった者も、倒れた直後に後続する味方に踏み潰されて絶命する。

「第二射、放てー!」



 バヒュゥーーーー・・・

 ガッガッガッガッガッ



 今度は、持っていた木製の盾を上に掲げて矢を防いだ。

 第一射よりも明らかに命中した数が少ない。

「クソッ!礫、投げぇーい!」

 砦内から、拳サイズの石礫が敵へ向けて投げ込まれる。

 その威力は大きく、掲げていた盾を粉砕される者も多かった。

「射殺せェーい!奴等を城壁に取り付かせるなァー!」

 司令官が怒鳴り続けるが、圧倒的な数の暴力には勝てず、遂に城壁に取り付かれてしまう。



 ガンッ ガンッ ガンッ ガンッ ガンッ



 多数の梯子が掛けられる。

「梯子を落とせー!」

 城壁にいる兵士達は、必死に梯子を落としに掛かる。



 ヒュガッ カンカンカンカン



「グアッ!」

「クソッ、何て数だ!」

 城壁の下から大量の矢を射掛けられ、あっという間に負傷者が増えて行く。



 メキメキメキメキ・・・ドオォォォーーーーン



 苦闘の末に、一本の梯子が落とされた。

 だが同時に、それ以外の梯子から最初の敵兵が登り終えた。

「仕留めろ!」

 たちまち乱戦となった。



 ガキンッ ズバッ キンキンキン



 敵味方入り乱れて、血みどろの白兵戦が展開される。



 ドゴオォォォーーーーーン



 突如、城門が鳴動した。

「ッ、破城槌だ!これ以上の侵入を許すなァー!」

 外の敵へ向けて石礫が投げ込まれる。



 バキッメキメキメキ・・・ドォォーーン



 だが、苦闘の甲斐無く城門は破られ、外から敵兵が押し寄せて来た。

「やれ!」

 待ち構えていた魔術師が、一斉に魔術を使って攻撃する。

 不意を突かれた先頭の敵兵が一斉に倒れた。

 しかし、それに構わず後続の敵兵が押し寄せて来る。

「槍、構えろー!」

 槍兵が、隊列を整えて敵へ槍を向ける。



 ザクッザクッザクッ



 何人かの敵兵が、槍襖によって串刺しとなり息絶えた。

 そのまま攻め立て続ける。

「クソ、数が多すぎる!」

 何とか抑え込んではいたが、予備兵力の乏しい守備隊は疲労が溜まって行った。



 カカカカカカカカン



「うわっ!」

「ぐあっ、痛ェー!」

 突然、上から矢が降って来た。

 見ると、城壁が敵に制圧されていた。

「な・・・これじゃあ防ぎ切れんぞ!」

「諦めるな!何としても、此処で踏み留まるんだ!」

 後ろには、守るべき者達がいる。

 その事実が、崩壊寸前となった士気を繋ぎ留めた。

 だが、彼等の奮戦虚しく砦は制圧された。

 守備隊は皆殺しにされ、原形を留めていた兵士の首が城壁に晒された。


「思ったよりも時間が掛かったな・・・被害も大きい。」

「小国如きがやってくれますなぁ。しかし、これで心置きなく奴等を痛め付ける事が出来ます。」

 後方から眺めていたクダラ王国軍の指揮官達が語る。




 ・・・ ・・・ ・・・




 ラビア王国  首都 ライガ



 国境砦の守備隊が全滅した頃、救援要請が首都に到達した。

「陛下、国境を越えた敵軍は5万に達するとの事であります。国境砦から救援要請が出ており、事態は切迫している様です。」

「な、何と言う事だ・・・クッ、予想を大きく超える数だが、何もしない訳には行かん。直ちに全軍を実戦配備とせよ!それと、連合に対して救援を要請するのだ!」

 国王の決断は、早かった。

 インシエント大陸連合へ事の次第をすぐに知らせ、救援を要請した。

 しかし、事態は想像以上に深刻化していた。

「陛下、クダラ王国の侵攻は、我が国だけではありません!全ての隣国に同時侵攻しております!」



 魔術が全然出てきませんね。(汗

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