第三話 建国宣言
資源については詳しくないんです!
何か間違いがあっても見逃してください!(土下座)
異世界へ転移してから三ヶ月が過ぎた。
「三ヶ月前まで無人島だったとは思えないな。」
目の前の景色を見ながら、東郷は呟く。
この三ヶ月間、東郷達は島の探索と開発を続けていた。
確認を行った所、東郷が目覚めた場所は島の東側である事が判った。
港を造るのに適した地形であった為、小規模な港湾施設と周辺海域の探索の為の船舶と、その護衛艦を召喚した。
次に、最初に召喚した部隊には内陸の探索を命じた。
取り敢えず、当面の装備として M4A1 MINIMI カールグスタフM4 を召喚した。
しかし島が巨大な為(マダガスカル島と同規模)、一個連隊では人手が足りない。
その為、連隊は近場のみの探索とし、他は航空偵察を行う事となった。
そこで今度は、航空基地と偵察機を召喚して探索を始めた。
次に東郷が召喚したのは、一棟のビルと技術者である。
自由に召喚出来る期間が限られている為、早急な新兵器の設計を行う必要がある。
召喚したビルを<技術研究本部(仮)>と名付け、急いで各種兵器の設計を始めさせた。
そして三ヶ月が経過し、漸く目に見える成果が出始めたのである。
まず、この島は北半球に位置している事が判明した。
緯度は日本列島とほぼ同じであり、気候も殆どが温帯に属する。
ただし、北の諸島は亜寒帯であり、南の諸島は亜熱帯に属する。
そして、各諸島はそれぞれ 北部諸島 南部諸島 東部諸島 西部諸島 と名付けられ、島は<本土>と呼ぶ事となった。
次いで軍団規模の部隊が召喚され、本土の本格的な探索が開始された。
事前に航空偵察を行っているお陰で順調に進み、現時点で七割を超える地帯の探索が完了している。
それによって判明したのは、本土南部にある山岳地帯に大規模な鉱脈が存在する事と、農業に適した地域が多数存在する事であった。
資源の召喚、備蓄を継続して行っていた為、現段階でも無補給で三年は持ち堪える事が出来るが、喫緊の課題であった資源問題に解決の兆しが見えた事に東郷は喜んだ。
更に、北部諸島と東部諸島周辺海域に油田が存在する事が判明し、早急な開発が求められる事となった。
そして新兵器の設計は、陸上兵器が大半の設計を終えており、現在は海空の装備の設計を進めている。
最後に拠点だが、現在使っている拠点は仮の物であり、島の探索と都市の設計が済み次第消去して造り直す予定である。
ただし油田と鉱脈の発見により、採掘施設の建設を最優先とする方針となった為、暫くはこのままである。
「チートだな・・・」
三ヶ月と言う極僅かな期間で造り上げられた物を眺めながら、東郷は呟く。
「総司令官」
振り向くと、一人の男が立っていた。
陸軍軍人である 田中 太郎 大将 である。
そのあまりにもあんまりな名前のせいで、初対面の相手から向けられる視線は例外無く哀れみである。
一部の者は、苗字 名前 階級 の頭文字を取って3Tと陰で呼んでいる。
「田中大将か、どうした?」
「経過報告とこれからの方針をお聞きしたいので、会議室へお越し下さい。」
「解った」
会議室
「では、まずは経過報告をします。」
最初に口を開いたのは、藍原である。
「遂に、本土の探索が完了致しました。」
「おお、終わったか!」
東郷は吉報を喜ぶ。
「はい。これで残るは、西部諸島のみとなります。」
「そうか、出来るだけ急いでくれ。」
「了解しました。」
「では次に、資源について報告します。」
田中大将が口を開く。
「総司令官も御存知の通り、本土南部の山岳地帯からは鉄鉱石が、北部諸島と東部諸島周辺海域からは石油が産出します。先日、それ等の採掘施設の設計が完了しました。」
「よし、すぐにでも現地へ行って召喚しよう。」
「それと、本土南西部を探索した所、多量の希少金属が埋蔵されている事が新たに判りました。」
「本当か!?」
「はい。更に南部諸島に少量ですが、ゴムの木がありました。これから植林を行い、順次増やして行きます。」
「朗報だな。これで資源問題は殆ど解決したも同然だ。」
最初に最も懸念していた資源問題が初期の段階で殆ど解決出来てしまった事に驚いた東郷であったが、恐らく‘自称‘神が用意してくれたのだろうと思う事にした。
「次に、技術開発について報告します。」
口を開いたのは、会議の場であるにも関わらず白衣を着た如何にも研究者な見た目の男であった。
彼は 佐藤 健二 少佐である。
本当ならばもっと上の階級であってもおかしくないのだが、「現場から離れたくない」と言う強い要望(脅迫)により、取り敢えず少佐止まりとなった。
しかし、技術者としての彼の能力はトップクラスである為、現場に留めた方が良いとする多数の意見も後押しした。
その代わり、こうした場に出席する事を了承した(させられた)のである。
「まず、陸上装備の設計が全て終了しました。」
「早いな」
「当然です」
ドヤ顔となった佐藤。
(こいつ・・・!)
機嫌が悪くなった東郷を無視し、報告を続ける。
「次に海空についてですが、各種弾薬とそれに付随する装置類の設計を完了しています。これからその母体となる艦船、機体の設計を進めて行きますが、要求された性能を発揮させる為には衛星網の整備が不可欠です。」
現代戦は、人工衛星の存在が必要不可欠となっている。
戦略偵察を初め、遠距離通信、各種誘導弾の誘導等、人工衛星に依存している機能は非常に多い。
「確かに、衛星の打ち上げは急務だな。」
「既に、ロケットと衛星と各種設備の設計は完了しています。」
「へ?」
「完了しています。」
ドヤ顔で言った。
「ハァー・・・解った。」
佐藤のテンションに付いて行けなくなり、脱力する東郷。
「他に、何か報告する事はあるか?」
静まり返る
「なら、今後の方針について話そう。取り敢えず、資源地帯の開発と宇宙関連施設の整備を最優先で行い、その間に全部隊の装備更新をして行きたいと思うが、どうだ?」
「開発と更新を同時に行うのですか?」
「装備を召喚しておくから、受け渡しはそっちでやってくれ。」
「了解しました」
「資源地帯の開発が終わったら、いよいよ本格的な都市開発をやりたいと思ってる。」
「おお、いよいよですか!」
会議室がどよめく。
「ああ、そこで俺は建国宣言をしたいと思う。」
「建国宣言?」
全員が首を傾げる。
「そうだ。これから俺達は、この島を国土とする国を創るんだ。」
「「「おおおお」」」
どよめきが大きくなる。
「そこで、まずは国名を決めたいと思う。」
その言葉と共に、今度は静まり返る。
「<暁帝国>とする」
「「「暁帝国?」」」
「現在、この世界は脅威に晒されつつある。それを俺達が排除し、この世界に夜明けを齎す。そう言う意味だ。」
「良い名前だと思います」
「そうですね」
「これでいいだろう」
「いいな」
皆が口々に言う。
「国名を暁帝国とする。賛成の者は挙手を。」
全員が手を挙げた。
こうして、暁帝国が誕生した。
技術関係の軍人の階級ってどうなっているんですかね?
佐藤は適当に少佐にしちゃいましたけど、大丈夫かな?