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第十四話  現状

 ひとまず、建国作業はこれで終わりとします。

 スマレースト大陸同盟と同盟を締結してから、暁帝国を取り巻く環境は大きく変わった。


 まず、領有を認められた新領土の開発を開始した。

 この島は、西方からの脅威に備えた要塞島とする事が決定した。

 大規模な基地を複数備え、同時にそれに合わせた軍拡を開始した。

 まだ自由に召喚可能な期間であった為、軍拡も基地建設も短期間で完了した。

 新領土は国防の要となる事から、<硫黄島>と名付けられた。

 硫黄島の開拓が完了した事で、建国作業の終了が宣言された。

 

 暁帝国

 人口:約1億5000万人

 兵力  陸軍 総兵力:約120万人

      65個師団 20個旅団 7個空挺団 他 

     海軍 総艦艇数:約750隻

      8個艦隊 16個戦隊 12個潜水艦隊 他

     空軍 作戦機数:約3200機

      20個航空団(戦闘機) 4個航空団(爆撃機) 他

     海兵隊 総兵力:約25万人

      20個師団 他

 

 次に、スマレースト大陸と国交を結んだ事で、定期便の運航が開始された。

 本土にもスマレースト大陸の人間が訪れる様になり、様々な製品を大量に買い込んでは帰って行った。

 彼等は、「この世のものとは思えない光景が広がっていた。」と口を揃えて語った。

 その噂は瞬く間に広がり、人々は暁帝国に対し好奇心と憧れを抱いて次々と訪れた。

 商人はまだ見ぬ新しい商品を探しに、冒険者は探求心を刺激され、貴族は新しい土地へ興味を示し、あらゆる者達が訪れては帰って行く光景が繰り返された。

 暁帝国の製品は、スマレースト大陸で飛ぶ様に売れた。

 従来の常識では考えられない程に高品質である為、「列強国の商品を転売しているだけでは?」と勘繰る者がいた程である。

 その一方で、大陸からは魔石や魔術道具を輸入し、魔術に関する研究が開始された。

 それに伴い、科学技術省の傘下に<魔術庁>が設立され、日夜魔術に関する研究が行われている

 更に、親善訪問と称して軍事交流も行った結果、極少数ながら存在した同盟に疑問を持つ一派も沈黙させる事に成功した。

 だが同時に、いくつもの問題も発生している。

 商人の求める商品の中には、奴隷が存在している。

 この世界の大半の国では奴隷が当たり前に存在しており、「此処まで発展出来たのは、優秀な奴隷が多くいるからに違い無い。」と思う者が多数いたのである。

 暁帝国は、奴隷がいない事を繰り返し伝える事で理解を求めて行ったが、一部には国民を拉致して奴隷に仕立て上げようとする者もいた。

 幸いにも全て未遂に終わり、実行犯と主犯は無慈悲な結末を迎える事となった。

 この顛末には大陸同盟が焦り、共同で事態の打開に努めた結果、大陸内に潜伏する違法な市場を駆逐する事に成功し、この問題は解決した。

 問題はそれだけに留まらず、大陸同盟各国から武器の輸出を要請されている。

 先の強硬派の動きから、暁帝国首脳陣は各国の防諜能力に疑問を持ち、現在は返事を保留している。

 加えて、国防上の観点から最終的には武器の輸出を行う方針ではあるが、何を輸出するかに頭を悩ませていた。

 取り敢えず、輸出用の武器の製造を行う為の特別工廠の召喚を先行して行った。

 そして、スマレースト各国の要人から縁談の話が相次いでいる。

 政略結婚には一切興味がない為に全て断っているのだが、中々諦めない事もあり参ってしまっていた。

 更に、スマレースト大陸を介して他大陸からも接触が相次いでいる。

 暁帝国を訪れた商人は、当然ながら他大陸との貿易も行っている。

 そこから少しずつ暁帝国の存在が認知されて行き、官僚の耳にまで入り始めたのである。

 彼等は設置された大使館へ訪れてはいるが、「最果ての連中の様子を見に来た。」と言う態度の者が大半であり、友好国を増やしたい暁帝国にとって頭を抱える状況となっていた。




 ・・・ ・・・ ・・・




 暁帝国  東京



「昨日、インシエント大陸から来たと思われる帆船が、西部諸島のEEZに侵入しました。巡視船が接近したところ、直ちに退避したとの事です。」

「またか・・・これで何度目だよ。」

 東郷は、頭を抱える。

 外部から接触しようとしている国は、大陸を介して来るばかりではなかった。

 船で本土へ直接乗り込んで来ようとする動きが後を絶たず、建国以来暇を持て余していた巡視船は忙しさを増していた。

 今の所は巡視船が近付くだけで逃げ帰っているが、いつまでもこのままと言う訳にも行かない。

「早く、インシエント大陸の各国と交渉をしないとだな。」

 東郷は、このまま取り返しの付かない事態になりかねない事を危惧していた。

「しかし、大使館から報告された反応を見る限り、極めて困難かと思われます。」

「あー、また黒船外交をやるしか無いだろうな・・・」

 そう言うと、溜息を吐いた。




 ・・・ ・・・ ・・・




 ハンカン王国



「・・・よって、貴国に例の不届き者に対して圧力を掛けて頂きたい。」

 現在、この国の国王に対して物申しているのは、クローネル帝国の使者である。

「ううむ・・・使者殿、その圧力と言うのは軍事行動も含まれるのか?」

「勿論です。我が国に逆らう様な蛮国など存在してはなりません。それに、このままでは貴国がお貸しした大金は帰っては来ませぬぞ?」

 国王である ハンガン は、難しい顔をする。

「使者殿、現状ではそれは困難と言わざるを得ん。貴殿の言われる通り、踏み倒される恐れはある。だが、御存知の通り我が国は大陸の不届き者共に対し、東から圧力を掛けておる。それ故、その圧力を掛けたまま他大陸へ戦力を振り向ける程の余裕など全く無いのだ。」

 ハンカン王国は、インシエント大陸の東に位置する島国である。

 準列強国であるクローネル帝国の保護国であり、大陸の西に位置しているクローネル帝国と連携して敵対国を抑え込んで来た。

 だが、いくら島国とは言え大陸へ睨みを利かせるには相応の戦力が必要となる。

 ハンカン王国には大陸へ睨みを利かせるだけの戦力しか無く、クローネル帝国の力が無ければ攻撃すら難しいのである。

 しかし、使者は意外な事を口にした。

「勿論存じております。そして、我が国は貴国がこれまで打ち立てた功績に応えたいとも思っております。そこで皇帝陛下の命により、貴国へ援軍を送る事が決定されました。」

「な、何だと!?」

 ハンガンは驚愕した。

 クローネル帝国は、通常援軍を求める事はあっても援軍を送る事は滅多に無いからである。

「して、その援軍の詳細は?」

「四等級戦列艦10隻と、二個竜騎兵中隊24騎をお送りします。もし、大陸の不届き者共が不穏な動きを見せる様でしたら、陸軍一個軍団も送る手筈となっております。」

 ハンガンは絶句した。

 破格と言っても良い程の規模である。

(これならば、怖いモノなど無いな)

「了解した。我が国の名誉に賭けて、スマレーストへ首を突っ込んだ不届き者共を追い落として見せよう。」




 ・・・ ・・・ ・・・




 ビンルギー公国  暁帝国大使館



 ブランスルーへ新たに設置された大使館は、暁帝国の新たな窓口としての機能を期待されている。

 しかし、その期待に反してまともに取り合おうとする勢力は皆無であり、派遣された職員は空しい日々を送っていた。

 そんな中、イリス公王が突然訪れ、大使との間に会談の席が設けられた。

「ハンカン王国と言う国を御存知ですか?」

 開口一番、イリスは問う。

「いえ」

 大使に限らず、現在の暁帝国は細かな国を把握している最中である。

「分かりました。では、説明致します。」


 インシエント大陸には、クローネル帝国と言う準列強国が存在する。

 大陸の西側に位置しているが、大陸統一を掲げており、大陸の全ての国家へ隷属を要求した。

 当然どの国も応じなかったのだが、圧倒的な戦力によって次々と周辺国を征服し、大陸中を恐怖に陥れている。

 クローネル帝国は、保護国と属国を従えている。

 保護国は自ら隷属を誓った国であり、戦時に兵力の供出を求められるが、基本的に厚遇されている。

 属国は、クローネル帝国と戦って征服された国の成れの果てであり、一定数の税収と奴隷の献上、戦時になれば戦費と兵力の供出を命じられる。

 ハンカン王国は、真っ先に隷属を誓った国であり、保護国として厚遇されている。

 更に、戦時に於いては東に位置する島国と言う地理的特性を生かし、クローネル帝国と挟み撃ちにすると言う方法で最も武勲に輝いてもいる。


「よく分かりました。しかし、そのハンカン王国が此方に対して何かしたのですか?」

 大使は、ハンカン王国と何の関わりも無い暁帝国にこの話を持って来る意味が分からなかった。

「我が国とハーレンス王国、ジンマニー王国は、ハンカン王国に対して多額の負債が存在する事が判明致しました。」

「!・・・な、何故、その様な事に!?」

 何をどうしてそうなったとしか言えない状況に、大きな衝撃を受ける。

「イサダ他、強硬派の何名かがクローネル帝国から魔導砲を購入する為に、密かに借り入れていた様です。」

 そう言いつつ、イサダ邸で発見した書類を提示する。

 その額は、大金と呼んで差し支え無いものであった。

「と言う事は、その強硬派を排除してしまった我が国もハンカン王国から目の敵にされてしまう可能性があると・・・」

「そうなります。」

(先に言えよ!)

 尤もな感想だが、イリスは暁帝国を巻き込む為にわざと隠していたのである。 

「まだ動きはありませんが、近い内に此方に接触して来ると思われます。」

 嫌な予感しかしない。

「この件は本国にも伝えます。宜しいですね?」

「構いません。また何か分かり次第、お伝え致します。」

(どうせ、手遅れになってから言うんだろうなぁ・・・)

「有り難う御座います。その時は、宜しくお願い致します。」

 表面上は礼を言いつつも、更なる厄介事に巻き込まれる予感しかしない大使の内心は冷ややかなものであった。




 ・・・ ・・・ ・・・




 首都  ブランスルー



 此処には現在、ハンカン王国の使者が訪れていた。

「全く、最果ての小国如きがいつまで待たせる気だ・・・!」

「礼儀が成っておりませんな。」

 王城の控室で待たされている彼等は呟く。



 ガチャッ



 扉が開く。

「お待たせしました。此方へどうぞ。」

 官僚の案内を受け、使者は会議室へ入る。

 会議室には、イリスを筆頭とする公国の重鎮達が揃っていた。

「ようこそ、私が公王イリスです。早速ですが、御用件をお聞きしましょう。」

 使者がやって来た理由を察しているイリスは、挨拶も碌にせずに話を進めようとする。

「全く舐められたものですな・・・貴国は、王ですらまともに礼儀がなっていないとは。」

 主導権を握っていると思い込んでいる使者は、尊大な態度で語り出す。

「き、貴様等・・・!」

 公国側の面々は、あまりの態度に怒りを露わにする。

「止めなさい。この様な挑発に乗っては、一国の代表者失格です。」

 女傑のキツイ一言により、冷静さを取り戻す。

「話が進まないので、早く要件を言って頂けませんか?」

 イリスの言い種に眉を顰めた使者だが、話が進まないのは彼等も困るので本題へ入った。

「では言いましょう。我が国は、貴国を含むスマレースト各国に大金を貸し出している。今回は、その返済の督促に来ました。これが、証拠の書類になります。」

 使者が提示した書類には、イサダの名が書かれていた。

「貴国への負債が存在する事は、我が国も把握しております。しかし、残念ながら我が国はその督促に応じる事はありません。」

 使者は、血相を変えた。

「何を言っている!?国家間の同意によって成立した、この正式な督促を断ると言われるのか!?」

「国家間の同意ではありません。この負債は、当時軍務大臣であったイサダを筆頭とする強硬派の独断によって行われたものであり、我が国そのものに返済の義務は存在しません。」

「その様な話を信じる根拠は無い!第一、我が国が金を貸したのは紛れも無い事実だ!そちらがどの様な主張を行おうと、耳を揃えて返して戴く!」

(此方の主張に耳を傾ける気は一切無しか・・・)

 イリスは、この後に使者が何を言うかを正確に予測した。

「もし、この期に及んでも返済を断ると言われるなら、不本意ながら軍を派遣する事になりますぞ!」

 公国側の閣僚は、大きく動揺した。

(やはりか。ハンカン王国の後ろにはクローネル帝国がいる。暁帝国を巻き込まないと我が国は・・・いや、この大陸は滅びる。)

「繰り返しますが、我が国に返済の義務は存在しません。軍を派遣されるのでしたらどうぞ。我が大陸同盟も、全力でお答えしましょう。」

「この期に及んでもまだその様な事を・・・いいでしょう、その態度が後で高く付く事になる。今の内に、全国民の墓を用意しておきさい。」

 そう言い捨ると、使者は帰って行った。

 閣僚達は慄いた。

「陛下、ハンカン王国を敵に回しては・・・!」

「分かっています。暁帝国へ協力の要請をします。準備を進めなさい!」

「「「ハッ!」」」

 スマレースト大陸は、己の存亡を賭けて動き出す。




 ・・・ ・・・ ・・・




 ハンカン王国  首都 シーエン



 使者から返済を断られた件が報告されると、王城にて大臣や将軍を集めた会議が開始された。

「使者の話によると、三ヶ国とも我が国の要求を拒否したそうだ。」

 ハンガンが語り出す。

「我々は、軍を派遣してこの不届き者共に天誅を加えるものである。」

「お待ち下さい!」

 待ったをかけたのは、将軍の一人である モウテン である。

 彼は、王国一の猛将と名が高く、クローネル帝国でも名前が知られている程である。

「我が軍は大陸への備えで手一杯であり、別方面へ兵力を派遣する余裕はありません。」

 他の将軍も、その言葉に頷く。

「心配は要らない。実は、先日クローネル帝国から使者が来た。」

 その言葉に、全員が騷付く。

「帝国は、我が国に援軍を派遣するとの事だ。」

 騷付きが大きくなる。

「な、何故クローネル帝国が援軍を!?」

 クローネル帝国が援軍を滅多に送らない事を知っている者にとっては、当然の疑問である。

「スマレースト紛争の事を知っているか?」

「は、はい。」

 スマレースト紛争の一件は、商人を介してインシエント大陸にも伝わっていた。

 しかし、あまりにも荒唐無稽な内容から紛争の推移を信じる者はおらず、「暁帝国は、妄想と現実の区別が付かない哀れな蛮族だ。」と思われてしまい、大使館への冷やかしと言う形で表に出てしまっていたのである。

「あの紛争で魔導砲搭載艦が撃沈された事は、どうやら事実の様なのだ。」

「「「!!」」」

「言うまでもない事だが、その魔導砲はクローネル帝国が輸出した物だ。そして、その魔導砲を搭載した艦を沈められた事を、重大な敵対行為だと判断したとの事だ。」

 一同は、事態が思ったよりも重大である事に戦慄する。

「しかし、それならば何故スマレースト大陸へ向かったのですか?直接暁帝国へ警告すれば良いのでは?」

「尤もな疑問だが、問題がある。クローネル帝国の情報収集によって分かった事だが、奴等の国土は此処から離れ過ぎているのだ。そこで、奴等と深く関わっているスマレースト大陸を介して圧力を掛ける事となったのだ。奴等の同盟国は、スマレースト大陸の連中だけだと言うからな。まずは、大使館を通して揺さぶりを掛ける。奴等が、我等に膝を屈するならばそれで良し。反抗するならば、スマレーストの連中を仕留めた後に孤立無援となって力を失った奴等を嬲り殺しにすれば良い。」

(援軍がいるなら、十分勝機はあるか。)

 モウテンは、そう判断して出兵の準備を始めた。




 ・・・ ・・・ ・・・




 インシエント大陸北部  とある小国



「連中、また開戦するそうよ。」

「はぁ、性懲りも無く・・・」

「しかも今回は、海の向こうへ行くとか。」

「何だと!奴等、気でも触れたのか!?」

「相手はスマレースト大陸同盟と暁帝国だそうよ。」

「暁帝国?ああ、最近噂になってるあの国か。」

「何でも、噂の海戦で奴等が輸出した魔導砲を積んだ艦を一方的に沈めたとか。その事に腹を立てたそうよ。」

「不幸な国がまた増えるか・・・」

 彼等は、これまで通り暁帝国も滅ぼされると考えていた。




 人口も兵力も多すぎかな?

 かなり適当に決めた数字です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 兵力に関してですが、アメリカの場合航空機の機数は一万を越え、3000前後だと中国くらいですね。参考までに。
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