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第十二話  領土紛争

 お待たせしました、無双開始です。

 スマレースト大陸沖  とある海域



 薄明るい夜明け前の海上に、異なる国旗を掲げた三つの船団が合流した。

「時間通りだな。」

「そちらは随分早かったな。」

「風が強かったから、思ったより早く着いてしまったよ。」

 彼等は、イサダの呼び掛けに応じて集まった ビンルギー公国 ハーレンス王国 ジンマニー王国 の強硬派である。

 全艦が揃った事を確認すると、イサダが語り始めた。

「我々は、かつて互いにいがみ合い、血を流して来た!だが、それも過去の話・・・。我等の共通の敵、暁帝国が現れたからだ!奴等は、我等の共通の故郷であるこのスマレースト大陸を不当に占拠しようとするだけでは飽き足らず、新たに発見した島さえも自らの版図に引き込もうとしている!これ程の蛮行は、未だかつて見た事が無い!諸君、蛮族暁帝国人を駆逐して我等の故郷を守り、奴等の新たな領土を乗っ取って我等に楯突いた報いを受けさせてやろうでは無いか!」


 「「「「「オォーーーーーーーーー!!!」」」」」


 全くの濡れ衣ではあるのだが、彼等に理屈は通用しなくなっていた。

 そして、三ヶ国の強硬派が集まった連合艦隊は、自分達の愚かな選択に気付かないまま暁帝国打倒を目指してメイハレンへ進んで行く。




 ・・・ ・・・ ・・・




 城塞都市  ルージュ



「イサダが行方不明?」

 現在ルージュでは、ビンルギー公国と暁帝国の首脳陣が同盟の細部の取り決めの為に連日会談を行っていた。

 だが、途中から公国側の軍務大臣であるイサダが顔を出さなくなっていた。

 国境線で不穏な動きがあるとの報告があり、その対応の為との事であったが、それが作り話である事が判明したのである。

「何をするつもりなの・・・?」

 イリスは、嫌な予感しかしなかった。




 ・・・ ・・・ ・・・




 メイハレン沖  巡視船 しきしま



「海軍より入電です。」

 いつもならば気の抜けた声で報告を行う副長だが、今回は緊張していた。

「何があった?」

 流石に只事では無いと思った船長は、強い口調で問う。

「此処から北東100海里程の海域に、未確認船団を確認したとの事です。」

「未確認船団?」

「はい。その船団は70隻程であり、武装しているそうです。」

「!」

 武装していると言う事は、軍艦で間違い無いだろう。

(だが、一体何処の軍艦だ?)

「船長、直接確認すべきだと思います。」

「そうだな。もしかしたら大規模な海賊船団かも知れん。海の治安維持は我々の仕事だ。」

 そう言うと、あかいしを連れて北東へと向かった。




 ・・・ ・・・ ・・・




 城塞都市  ルージュ



「総帥、気になる報告があります。」

「どうした?」

「先程、哨戒飛行を行っていた鳳翔の艦載機が、メイハレンの北東100海里の海域に不審な武装船団を発見したとの事です。」

「何だと!?」

 東郷は驚愕した。

 各国の使節団と密接に連絡を取り合った結果、現時点では四ヶ国とも順調に交渉が進んでいる事が分かっていた。

 この期に及んで軍事行動に出るなど、誰も予想していない事態である。

「現在、海上保安庁の巡視船 しきしま あかいし が武装船団を海賊と予測し、治安維持の名目で現場海域へ向かっています。」

「無茶な事を・・・」

 いくら重武装化しているとは言え、所詮は巡視船である。

「しかし、このタイミングで軍艦を動かすのは拙いです。」

「分かってる。だが、このまま放置も出来ない。一応、ヘリを寄越す様に鳳翔に伝えてくれ。」

 東郷は、直ちにイリスを呼んで会談を始めた。


 暫く後、


「緊急のお話との事ですが、どうされたのですか?」

「実は、先程メイハレンの北東100海里の海域に、不審な武装船団がいるとの報告がありました。」

「!!」

 公国側の顔色が悪くなる。

「その船団は70隻程であり、メイハレンへ向かっている様です。現在、海上保安庁の巡視船 しきしま あかいし が現場へ向かっております。」

「そんな事が・・・!」

 イリスは、イサダがいなくなった理由を察した。

「船団の進路から推察するに、我が艦隊を狙っている様に思えます。海賊が船団を組んで向かっているだけとも考えられますが、何か心当たりはありませんか?」 

「・・・イサダ軍務大臣が、関与している可能性があります。」

(イサダ?・・・ああ、あのいけ好かない奴か。)

 東郷は、イサダの初対面での態度を思い出し、少し機嫌が悪くなる。

「彼は、我が国で強硬派と呼ばれる派閥の筆頭でした。強硬派は、貴国との同盟締結にも反対の立場を表明しており、動向を注意深く探っていたのですが・・・」

(あっさりと出し抜かれたワケか。)

 東郷は、公国の諜報、防諜能力に不安を抱く。

「イサダ大臣については分かりました。それで、向かって来る船団についてお聞きしたいのですが。」

「それが問題です。」

「と、言いますと?」

「70隻と言う数は、我が国の保有する軍艦の四割を超える数です。」

「四割!?」

 今度は、帝国側が驚く。

「強硬派は、そんなに巨大な勢力なのですか!?」

 だとすれば、大問題である。

「いえ、強硬派に属している者は全て把握しておりますが、此処までの規模ではありません。それに、この様な謀反とも取れる行動には、いくら強硬派でも従わない者もいるでしょう。」

「・・・」

(だとすれば、一体何処からこんな数が?)



 バァン



「し、失礼します!」

 乱暴に扉が開けられると、帝国側の連絡員が血相を変えて飛び込んで来た。

「どうした、会議中だぞ!?」

「申し訳ありません!先程、ハーレンス王国、ジンマニー王国の使節責任者から緊急連絡が入り、両国の強硬派が艦隊を率いて離反した事が明らかになりました!」

「何だと!?」

「どうなっている!?」

「そんな事が・・・!」

 両首脳に衝撃が走る。

「と言う事は、接近中の船団は・・・」

「我が国の強硬派と合わせた、三ヶ国連合艦隊と言う事になります。」

 公国側の顔色は、真っ青になっていた。

「これで、我が艦隊が標的になっている事がハッキリしたな。しきしまとあかいしに詳細を伝えろ!」

「東郷殿、接近中の艦隊ですが、恐らく魔導砲搭載艦がいる筈です。」

「魔導砲?」

「大きな鉄の筒に鉛の弾を込め、火属性の魔術で遠くへ飛ばす兵器です。」

 要するに大砲である。

「ッ、連絡員!その事も絶対に伝えろ!」

 たかが帆船に乗せる大砲とは言え、魔術と言う詳細の分かっていない原理によって撃ち出されるのである。

 用心するに越した事は無い。

「イリス陛下、我々はこれからメイハレンへ行き、艦隊を出します。」

「と、東郷殿、いくら何でもそれは・・・どんなに急いでも、今からではとても間に合いません!」

 だが、東郷は余裕の表情で答えた。

「大丈夫です、数時間で着きますよ。何なら、貴方も付いて来ますか?」

「え?」



 バタタタタタタタタ



 外から、そんな音が聞こえた。




 ・・・ ・・・ ・・・




 巡視船  しきしま



「船長、使節団の連絡員から情報が入りました。接近中の船団は、ビンルギー公国 ハーレンス王国 ジンマニー王国 の強硬派が結託した連合艦隊の可能性が高いとの事です。」

「強硬派?何処の世界にもそう言う連中はいるんだな・・・」

 船長は、副長の報告を聞いて呆れ返った。

「それと公国側からの情報提供で、魔導砲なる大砲が装備されている可能性があるとの事です。」

「大砲だと!?そんな技術まであるのか!?」

「はい。魔術を使って撃ち出すらしいですが、射程等の詳細な性能は不明です。」

 これは、イサダが機密保持を理由に情報統制を行っていたからである。

 詳細な性能を把握しているのは、同じ強硬派のみである。

「不確定要素が増えたな。迂闊に近付かない様にしないとだな。」

 船長は、そう言って気を引き締める。




 ・・・ ・・・ ・・・




 三ヶ国連合艦隊



「素晴らしい眺めだな。」

 イサダは呟く。

 現代では見る事が出来ない、帆船の大艦隊がそこにはいた。

 確かに、素晴らしく、力強い光景である。

 見た目だけは・・・

「果たして、何処まで食い下がれるか・・・」

 暁帝国の力を把握しているアクーラは、冷めた目で艦隊を眺めていた。

 本当ならば、死ぬと分かっているこんなバカげた事に参加したくはなかった。

 だが、彼に拒否権は無い。


 アクーラは、メイハレンで生まれ育った。

 成人したアクーラは、メイハレンの為にと領主であるイコセに仕える事を決意した。

 だが、一言で言えばイコセはクズであった。

 拉致 横領 略奪 密輸 あらゆる悪事に手を染めていたのである。

 アクーラは、この状況をどうにかしようと仲間を集め、クーデターを目論んだ。

 しかし、決行直前にイコセに察知されてしまう。

 仲間は全員捕えられ、アクーラとグリンを残して全員処刑されてしまった。

 更に、アクーラとグリンの家族が捕えられ、人質となってしまった。

 既に、アクーラの妻は病死しており、残る家族は娘だけであった。

 何としても娘を守りたいアクーラはイコセの言いなりとなるしか無く、秘書として直接仕え続けて来たのである。


「何と言う顔をしておるのだ?アクーラァ。」

 話し掛けて来たのは、イコセである。

「いえ、これで本当に勝てるのかと考えておりました。」

「儂等が負けると言うのか!?有り得んよ、見ろ!」

 自信満々な態度で、隣の艦を指差す。

「儂とイサダ様が、クローネル帝国から購入した魔導砲を搭載しておるのだ!これがあれば、魔力を持たん蛮族の船など物の数では無い!」

 クローネル帝国との貿易により、三ヶ国とも少数だが魔導砲搭載艦を保有していた。

 尤も、魔導砲は非常に高価である為、大半の艦はバリスタや弓しか遠距離手段が無い。

「しかし、暁帝国の艦は鉄で出来ています。魔導砲でも通用するかどうか・・・」

「通用するに決まってるだろう。」

 イスコが話に割って入る。

「確かに、木製の船に比べれば多少持ち堪えるかも知れないけど、鉄で出来てると言う事は凄く重いと言う事だ。碌な武器を乗せられないだろうし、一度穴が開けばあっという間に沈んじゃうだろうね。」

「流石、儂の自慢の息子だ。儂も同意見だ。アクーラ、貴様もイスコを見習え!この程度の事も分からんとは嘆かわしい!」

 そこへ、イサダがやって来る。

「その辺でやめてやれ。私も同じ事を考えていたが、油断すると死ぬのが戦いだ。多少用心深い方が生き残れるぞ?」

「イサダ様!?いやはや、我が国一の・・・いえ、大陸一の戦略家にご教示戴けるとは光栄ですな。」

 その後も、景気の良い話が続いた。




 ・・・ ・・・ ・・・




 ビンルギー公国上空



 イリスは恐怖していた。

 空を飛んでいる事に。

(どうやったらこんな鉄の物体を飛ばせるのよ!?落ちないわよね!?)

 表面上は穏やかな表情だが、内心は恐怖で荒れ狂っていた。

 だが、あまりの恐怖でポーカーフェイスは通用せず、帝国側の人間は気遣って何も話し掛けない様にしていた。

(何で何も言ってくれないの!?そこは気を利かせて安心させてよ!?)

 盛大に裏目に出ていたが・・・


 暫く後、


「メイハレンに到着しました。」

 

(やった!やっと降りられる!地面が恋しい!)

 機長の言葉に、そのまま地面に口付けをしそうな勢いで喜んだ。

「このまま鳳翔へ着艦します。」

「え?」

「鳳翔とは、我が海軍の軍艦です。このまま甲板へ降ります。」

 一転して、絶望の淵へ落された。

(艦!?今、艦って言った!?海に落ちたらどうするつもりなの!?嫌だいやだ死にたくないしにたくない・・・!)

 恐怖のあまり、ポーカーフェイスも維持出来なくなってしまった。


「だ、大丈夫ですか?」

「・・・・・・はい・・・」

 イリスとその護衛は、やつれた顔で答えた。

「と、取り敢えず状況の説明をしますので、艦橋へ御案内致します。」


 艦橋へ移動した彼等は、早速状況説明を受けた。

「現在、武装船団は此処より北東約80海里まで接近しております。間も無く、海上保安庁所属の巡視船 しきしま あかいし が目視可能圏内へ到達するとの事です。まずは、武装船団の所属を確認します。我が艦隊はこれより武装船団へ向けて出撃しますが、巡視船の接触には間に合いません。そこで、船団から敵対の意思が確認され次第巡視船のみで反撃を行い、撃退不可能なら我が艦隊が攻撃を行います。」

 イリスは驚いた。

 たったの2隻で、70隻に達する艦隊に挑ませようと言うのである。

「それは、いくら何でも無謀では?」

「御心配には及びません。あっという間に返り討ちにしてやります。」

 本当は、魔導砲の性能に若干の不安があるのだが、そんな所を見せる訳には行かない。

(確かに、とても大きくて頑丈そうだけど・・・)

 イリスは、艦橋から鳳翔の甲板を見る。

 武装らしき物が何一つ見当たらない。

 イリスの脳裏には、同じ様に武装を搭載していない2隻の巡視船が、艦隊に囲まれ魔導砲の餌食となる光景が浮かんでいた。




 ・・・ ・・・ ・・・




 巡視船  しきしま



『十二時の方向、多数の帆船を確認!此方へ向かって来ます!』

 見張りからの報告が入る。

「おーおー、一杯いるなぁ!カッコいー!」

 副長が興奮した様子で口を開く。

「調子に乗るんじゃない。確かに壮観だが・・・」

 船長は、副長を叱り呼ばしつつも同意した。

「帆船もいいものですねー。帰ったら、観光用に帆船の建造を具申するのもいいかも知れませんねぇ。」

「一人でやってろ。全く・・・」

 そう言いつつも、副長がいつもの調子に戻った事で緊張が和らいでいた。

「・・・あの国旗、間違い無いな。」

 双眼鏡を覗いた船長の目には、ハッキリと三種類の国旗が見えていた。

「せんちょー、どーしますかー?」

「まずは様子を見る。本船は右、あかいしは左から接近する。」

 2隻は、すぐに指示通りに動いた。



 三ヶ国連合艦隊



「何だあれは!?」

「デケェ・・・!」

「あんなサイズで、あんなスピードが出るのか!?」

「ん?まさか、鉄で出来てるのか!?」

 巡視船を目にした船員達は、驚きざわめく。

「なるほど、多少はてこずりそうだな。だが、たったの2隻で挑もうとはやはり蛮族だな。優れた船を持っていても、使い方が分からんらしい。いや、あの船は列強国から購入したのだろう。蛮族にあれ程の物を作れるワケが無い。」

 巡視船を見て少し驚いたイサダであったが、そう言って馬鹿にした。

「敵艦が左右に展開!挟み撃ちにするつもりの様です!」

 見張りの声が聞こえる。

「イサダ様、早速魔導砲を使いましょう。」

 イコセが言う。

「フフフフ、そうだな。まだ射程外だが、少し脅してやるとしよう。」

 魔導砲の射撃準備が終わる頃には、巡視船は二キロの距離で並走していた。

「撃てーーーーーー!!」



 ドォォォォォォォーーーン



 射撃音の大きさに、味方の水兵も竦み上がる。

 砲弾は、巡視船の遥か手前で着弾した。

「ハッハッハッハッハ!見たか、これが魔導砲だァ!」

 砲弾の上げる水飛沫を見たイサダは、上機嫌に叫んだ。

「奴等の慌てる顔が目に浮かびますなぁ。」

 船員達も、歓声を上げていた。

「ん、何だ?甲板の筒が動き出したぞ。」

 船員の一人が口に出す。

「奴等、何をする気だ・・・」

 流石のイサダも不安になる。

「まさか、魔導砲か!?」



 巡視船  しきしま



「肝を冷やしたな・・・」

「びっくりしたなー・・・しかし、想像してたよりも射程は短いみたいですねぇ。一キロも無いみたいですよ?」

 砲弾は、900メートル地点に着弾していた。

「これは重要な情報だ。これより、正当防衛射撃を行う。」

「りょーかーい♪」

「しきしまより第一艦隊旗艦鳳翔へ、接近中の艦隊より砲撃を受けた。これを敵性艦隊と認め、正当防衛射撃を実行する。」

『此方鳳翔、了解した。敵艦隊を殲滅されたし。繰り返す、敵艦隊を殲滅されたし。』

「了解した、敵艦隊を殲滅する。」

 反撃が開始された。

『主砲、照準よし。』

「撃ち方始めー!!」



 ドン… ドン… ドン… ドン… ドン…



 前甲板に設置された76ミリ速射砲が、一定のペースで主砲弾を吐き出し続ける。

 砲弾は、一発たりとも外れる事無く敵艦へ命中して行った。



 三ヶ国連合艦隊



 誰も何も言えない。

 敵の魔導砲により、次々と味方が沈められていた。

 一撃で沈む威力、百発百中の命中精度、圧倒的な射程

 何もかもが、彼等の想像を超えていた。

「こんな・・・こんな事が・・・」

「何かの間違いだ・・・蛮族如きに・・・辺境の蛮族如きに・・・」

「そんな・・・僕は死ぬのか・・・こんな所で・・・」

 つい先程までの威勢は鳴りを潜め、受け入れ難い現実を前に悲嘆に暮れるイサダ達。

 乗員達も、恐怖に顔を歪めている。

(此処までだな。私も、奴等も・・・)

 アクーラは、剣を抜いた。

「な・・・アクーラ、貴様何をするつもりだ!?」

「何もしなくてもどうせ全員死ぬ。だが、貴様等だけは私が直接トドメを刺さなければ気が済まない。」

「貴様ァ、自分が何をしているか分かっておるのか!?反乱を起こそうとしたにも関わらず、生かしてやった恩を忘れたか!?」

 イコセは、顔を真っ赤にして怒鳴った。

 その間にも味方は減り続けて行く。

「何が恩だ!?あらゆる犯罪に手を染め、同胞を殺め、娘を人質に取っておいて!」

「そうだ!こんな事をした以上、娘の命は無いだろうね!」

 イスコが王手を掛けた様に言うが、アクーラは動じない。

「娘の抹殺を指示する者が死ねば、その心配は無い。」

 イコセとイスコは青ざめた。

「な・・・そ、そんな事をしてみろ!貴様もタダでは済まんぞ!」

 後ずさりながらイコセは叫ぶ。

「どうせ、全員此処で死ぬ。あの魔導砲からは誰も逃れられんだろう。」

「そんなワケが無いだろう!あんな蛮族共にやられるなど」



 ドスッ



「見苦しい、まだそんな事を言うのか・・・」

 アクーラは、これ以上付き合えないと言う顔でイコセの胸を刺した。

「ヒッ・・・!」

 その様子を見たイスコは、腰が抜けてしまった。

 意に介さず、アクーラはイスコへ近付く。

「く、来るな!」



 ドスッ



 何も言わず、イスコの胸を刺した。

「は、はは・・・そうだ。これは夢だ・・・夢に違い無い・・・」

 イサダは、遂に現実逃避を始めた。

 だが、現実は彼だけを見逃してはくれなかった。



 ドォォォォォォン



 直後、イサダとアクーラの乗った最後の一隻が撃沈され、三ヶ国連合艦隊は全滅した。



 巡視船  しきしま



「敵艦隊の殲滅を確認。生存者の姿も見えます。」

「救助する。」

 戦闘を終えた両船は、漂流している生存者の救助を開始した。

 救助された者の中には、アクーラも含まれていた。



 緊張感の演出がかなり上手くできたのでは無いかと自画自賛してみる。

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