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第百三十七話  ガリスレーン大陸の攻防5

 総合評価が4000を突破しました。

 3000台で頭打ちになるかと思っていたので、凄く驚いてます。

 イズラン公国  バルディ



「右から接近!」「左から接近!」



 ダダン ダンッ ダンッ



「衛生兵ー!」

「しっかりしろ!大した傷じゃ無い!」

「調子に乗りやがってェ!」

「落ち着け、迂闊に動くな!」

「来るぞ!」


 「「「オオオオォォォォォォォォォーーー!!」」」


 度々やって来る妨害を退けつつ、どうにか市街地へと到達した鎮定軍上陸部隊だが、到着早々本格的なゲリラの洗礼を受けていた。

「後方に敵!」

 大多数が後ろを振り向いて反撃の構えを取る。

「前方に敵!」

 一瞬、全員が硬直する。



 ダンダンダンダンダン



 ほんの一瞬の動揺を突かれ、一気に死傷者が発生した。

「逃がさん!」



 タタタタタタタタタタタタ



 反撃するもすぐに路地裏へと逃げ込まれ、空振りに終わる。

「放っとけ!周囲を警戒しろ!」

 地の利は敵にある以上、迂闊な真似は出来ず負傷者を放置する訳にも行かない。

「突撃ィー!」 

 円陣を組もうとした矢先、剣や槍で武装した民兵が白兵戦を仕掛けて来た。

「は、早く撃て!近寄らせるな!」

 慌てて発砲するも、数人を倒すのが限界であった。



 ガッ キンキン ドッ ザクッ



 ただの民兵が相手と言えど、近代軍は接近戦では貧弱な軽歩兵に過ぎず、本格的な近接装備が相手では限界が訪れるまでに時間は掛からなかった。

「よーし、よくやった!すぐに他の救援に行くぞ!」




 軍司令部



「一番、五番街外縁にて迎撃を実行、敵小隊を殲滅しました!」

 部下からの報告を聞き、ファルは気付かれないよう息を吐く。

「よし、防衛ラインを一段下げろ。」

 部下は、まさかの命令に目を剥く。

「このまま迎撃を続けるのでは」

「早く行け!」

 ファルの有無を言わさぬ勢いに圧され、大慌てで部屋を出て行った。

「同じ方法が何度も通じる相手では無かろうに・・・」

 防衛隊は、既に痛い目を見ている。

 郊外での奇襲の成功に気を良くした結果、同じ方法で再度の奇襲を敢行しようとした所、艦砲射撃によって潜伏していた部隊が丸ごと耕されてしまったのである。

 そこで、防衛ラインを市街地まで一気に下げた。

 元が軍事基地から始まった街である為、砲撃等に備えた頑丈な作りとなっている。

 その上で、入り組んだ地形を利用した戦闘を展開している。

 まず、アルーシ連邦から輸入したアルシンライフルを装備した防衛隊が前後、又は左右から同時攻撃を行い、敵の対応力を飽和させて一方的にダメージを与える。

 この際、攻撃は一撃離脱を徹底させている。

 その後、態勢を立て直すまでの隙を突く形で市民兵による白兵戦を行う。

 銃火器は数が限られている事から市民にまで渡す事は出来ず、ある程度余裕のある近接武器が支給(貸与)されている。

 その上で、根こそぎ動員による数的優位によって訓練不足を補っている。

 更に、万が一突破を許した場合には、屋根に陣取った遠距離部隊によって徹底的な足止めを行う。

 この三段階を基本とした防衛ラインを何重にも張り巡らせ、ひたすらに耐え忍ぶのがファルの考え出した作戦である。

 自力ではどうにもならない事が既に判っている以上、出来る事は救援を当てにした籠城戦だけだとした開き直りとも言える割り切った発想であった。

(さて、次はどう来る?)




 ・・・ ・・・ ・・・




 シレイズ



「急げ、準備の済んだ隊から順次出発せよ!」

「予備の弾薬を荷馬車へありったけ積み込め!」

「おい、馬の一頭もまともにさばけんのか!?」

 少し前までの落ち着いた空気は何処へやら、あちらこちらで衛兵が慌ただしく駆け回っていた。

 バルディの状況を知ったマフェイトはブシルーフ全域を臨戦態勢への移行を指示、各地に配備されている戦力の動員を下令した。

 一方、藍原以下の先遣隊はマフェイトとの協議により、生活消耗品の補給を受ける事が決定した。

 そして、会談後に外へ出た藍原以下は、移動準備を進める部隊と合流した。

「どうですか?」

 スノウが問う。

「80人は集まったぞ。」

 フェイが答える。

 会談を行っている最中、残り三人と先遣隊一同は街中を歩き回り懸案であった後方要員の確保を行った。

 周辺地域よりも安定しているとは言え、少数ながら西から流れて来る者もいる。

 だが、その多くはブシルーフ以外に行く当ても無く、豊かな暮らしをしていただけに大きなリスクを取る事も出来ず、東端のシレイズで立ち往生してしまっていた。

 そんな時に降って沸いたのが、暁帝国軍の後方要員募集である。

 軍に付き従う事となる以上、当然ながら命の保障は無い。

 だが、目敏い者は「むしろ、付き従った方がずっと安全」であると考え、この募集に飛び付いた。

 結果として、僅か半日で80人の人員確保に成功した。

「上々ですがまだ足りません。ただ、時間も無い・・・」

「何かあったのか?」

 藍原の言動に不穏を感じ、レオンが尋ねる。

「会談中、バルディが攻撃を受けたとの報告が入りました。」

「何だと!?」

 街中が突然慌ただしくなった理由に合点が行った。

「間に合わなかったのね。」

 敵よりも早く沿岸へ到達し、水際防御を展開すると言う最も理想とした戦術は実行不可能となった。

 戦力差から完全に防ぎ切るのは無理だが、消耗を強いる事は出来る。

「出発は明朝とします。」

「ちょっと待った、そんな悠長にしてて良いのか?」

 藍原の決定に、フェイが抗議する。

「心外ですね、充分急いでいますよ。」

「バルディは今も攻撃を受けてるんだろ?今すぐに行くべきだ。」

「身一つでなら可能ですが、今回はそれなりの準備が必要ですよ。」

「・・・・・・!」

 更に言い募ろうとするも、額に手を当てて気を落ち着ける。

 頭では解っていても、民衆の危機に反射的に勇み足となってしまった。

 それはフェイだけで無く、他四人も同様であった。

 流石に正義云々とは言い出さないが、身体に染み付いた行動原理は如何ともし難く、急速に焦りが募って行った。

「それでは、今から先行して偵察を行っては貰えませんか?」

 見かねた藍原は、対案を提示する。

「俺達がか?」

 先遣隊の偵察は、ドローン及び本国からの衛星情報、それ以外では難民からの聞き取りに頼っている。

 より詳しい情報を知るには、あまりにも不足している。

「単独行動であなた方以上の適任はいません。」

「・・・どうする?」

 五人は顔を見合わせる。


 暫く後、


「分かった、引き受けよう。」

「感謝します。」

 軍事行動としての偵察の経験は少ない一行だが、冒険者としては何度も経験している。

 ならば、待つよりも動いた方が良いとの結論である。

「それでは、まずは荷物の選別ですが」

「「「「「エッ!?」」」」」

「どうしましたか?」

「置いてかなきゃ、ダメ・・・?」

 シルフィーが上目遣いで尋ねる。

「あれだけの荷物をどうやって持って行く気ですか?」

「それは、今まで通りに・・・。」

 上目遣いが効かなかった事に内心舌打ちしつつ答える。

「今回は、威力偵察ではありませんよ?目立ち過ぎるので許可出来ません。」

「そんな・・・!」

 膝をつく一同。

(どうしてこうなった)

 その後もゴネたものの、藍原が首を縦に振る事は無かった。

 一行は、傷心のまま一足先に出発した。




 ・・・ ・・・ ・・・




 センテル帝国  ペルヒ



「諸君の任務は、世界を侵略せんとする脅威へ対抗する為の尖兵となる事である!」

 ペルヒの軍港には多数の輸送艦、揚陸艦が並び、桟橋付近では万単位の兵員が整列している。

 各方面の必死の努力の末に、ガリスレーン大陸への派遣隊の準備が整ったのである。

 現在、出撃前の壮行会の最中であり、アーノルドが演説を行っている。

「・・・諸君等の勇壮なるこの姿を生涯忘れはしないだろう!以上である!」



 ザッ



 一子乱れず、全員が敬礼する。

 程無くして壮行会は終了したが、出撃までにはもう一段階あった。

「無事で帰って来いよ!」

「泣くんじゃない、一生のお別れみたいにしないでくれ。」

「後生だから行かないで頂戴!」

「母さんを困らせるんじゃないぞ?」

 家族との挨拶である。

 反応は様々であるが、出来れば行きたくないし行って欲しくない。

 それでも別れの時は容赦無くやって来る。

「集合!点呼を行い、順次搭乗せよ!」

 後ろ髪を引かれつつも、義務を負った者達はその場を離れる。

 家族の伸ばした手は届かず、その視線は船の中へと消え行く姿を捉え続けた。

 そして間も無く、先行している地方艦隊の護衛の元ガリスレーン大陸へと向かって行った。




 ・・・ ・・・ ・・・




 イズラン公国  バルディ沖



「いつまで掛かっている!?既に2時間の遅れが出ているぞ!」

 それなりの規模があるとは言え、たかの知れた弱小勢力風情に想定を大きく超えた被害を負わされ、本来の予定を大幅に狂わされている。

 一応は被害が想定されていた主力艦隊と違い、地上戦は大した苦労は無いと見積もられていた。

 何処までも思い通りにならない現実に、コートは今にも飛び出さんばかりであった。

「いっその事、第三波以降直ちにを上陸させ、あの街を無視した方が宜しいのでは?」

 幕僚の一人が恐る恐る進言する。

「・・・・・・」

 眉間に皺を寄せ、黙考する。

「・・・第二波までは攻略を続行し、第三波以降は東進する。すぐに準備しろ。」

 本来の予定では、第二波までの部隊までで迅速にバルディを占領し、その後は港湾から上陸を行う筈であった。

 その目論見は見事に外れ、引き続き強襲上陸を行う事となった。

 港湾を使わない方法は時間と手間が掛かる為、結局は更なる遅延が発生してしまう。

 その事実に、遂には殺気まで纏い始めた。



 バルディ 軍司令部



「第二中隊、損耗率50パーセントを超過!」

「救護隊、負傷者が多過ぎパンク状態です!」

「第一中隊より、敵増援到着との事!」

 当初、地の利を活かして優勢に戦いを進めていた防衛隊は、間も無く窮地に立たされた。

 敵の第二陣が上陸、順次市街戦に加わったのである。

 単純な数も然る事ながら、超小型の火砲まで持ち出して来た事で、火力の面でも圧倒的劣勢となっている。

 要所に構築されたバリケードは吹き飛ばされ、頭数の増加によって路地裏からの奇襲も当初よりも効果が薄くなっている。

 その反面、味方の被害は増す一方である。

(想像以上だ・・・だが、此処で少しでも長く持ち堪え、少しでも多くの敵を道連れにしなければ・・・!)

 最初から勝てるとは思っていないが、想定をあまりにも大きく超える敵の実力にファルは冷や汗を禁じ得ない。

 まだ抵抗力を失った訳では無いが、街は三分の一以上が制圧されてしまい、選択肢は確実に狭まっている。

(そろそろ出るか?)

 特級魔術師であるファルは、現在のバルディの切り札である。

 指揮官が最前線へ出るなど悪手だが、その様な選り好みをする余裕も無い。

「報告!見張りより、敵の第三陣の上陸を確認したとの事!」

「どっちへ向かってる!?」

「それが、東へ向かい、此方には目もくれる様子が無いと・・・」

(とうとう来たか!)

 強固な拠点は、多くの場合は直接的な攻撃を避ける。

 それだけ頑強な抵抗が出来ていると言う事だが、敵の進撃を許せない彼等にとっては最悪の凶報である。

 この状況をどうにかする為にも、ファルは自身の出撃を決めた。

(さて、どのタイミングで)



 ドガガガガッ



 突如、凄まじい破壊音が響き渡る。

 見ると、街の一角の石畳が瓦礫として大量に舞い上がっていた。

「何が起きた!?」

 ファルの叫は何処にも届かない。

 降り注ぐ瓦礫と悲鳴や破壊音が全てを覆い尽くす。

 街中が大混乱となっているが、ファルの目は一点を凝視する

 そこには、憤怒の表情のコートが佇んでいた。



 中国に対する賠償請求が京を超えてるらしいです。

 暴発が恐すぎる。

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