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第百二十六話  前哨戦3

 総合評価が3000を突破、ブックマークが1000を突破しました!

 どちらも目標としていた数字です。

 本当に達成出来るとは思いませんでした。

 まだ話は続きますので、最後までお付き合い下さい。

 第一艦隊



『ホークアイより第一艦隊へ、敵編隊を殲滅した』

 空中管制機からの連絡を受け、艦橋の緊迫した空気が弛緩する。

「いきなり、こんな手を打って来るとはな・・・」

 井上が呟く。

 常識的に考えれば、今回の敵艦隊の状況では退くのが定石である。

 敵は未だに此方を一切捕捉出来ていないが、潜水艦との連絡が次々に途絶えている現状を考えれば、容易ならざる事態に直面している事はすぐに理解出来る。

 情報が酷く限られている以上、どの様な選択が正しいかは判断が付かないが、だからこそ安全策を採るのが最もリスクが小さい。

 理論的な井上らしく、その様に考えていた。

「ですが、此方の意表を突く上手い手です。」

 常識的な判断から外れているからこそ、相手の意表を突ける。

 その意味では、大島攻撃は確かに効果的な策である。

 ただし、その策が敵の対応力を上回っていると言う前提が成立すればの話である。

「我が方の正確な戦力分析が出来ていないのは確実だな。」

 セレンとの会談は、情報に於いても暁帝国が圧倒的優位にある事を示していたが、此処に来てそれが確実となった。

 だが、不安が無くなった訳では無い。

「それはそうと、メイジャーが艦隊にいると思うか?」

「可能性は高いかと。ただ、確証はありません。」

 メイジャーは、未だに未知の部分が多い。

 それだけに、現時点での直接的な衝突は避けたいのが本音である。

 だが確認しようにも、既にこの海域は拡散している魔力のエリアに入っており、目視以外に方法が無い。

「此処でメイジャーを減らしておきたいが・・・」

「しかし、何処にいるのか分からない以上は・・・」

 無意味な議論は、すぐに終了した。

『間も無く、航空隊が敵艦隊を射程に捉えます。』




 ・・・ ・・・ ・・・




 第一艦隊  航空隊



 航空隊の現在位置は、敵艦隊より400キロ地点である。

 編成は、F-3C一個中隊12機となっている。

 装備は、全機が胴体内に対艦ミサイル4発、主翼に汎用ミサイル4発を搭載している。

『大鷲1より旗艦、間も無く敵艦隊を射程に捉える』

『鳳翔より大鷲、射程に入り次第攻撃を許可する 優先目標は空母と巡洋艦だ 割り振りはそちらに任せる 駆逐艦は、可能な範囲で攻撃せよ』

『戦艦は?』

『戦艦は此方で対処する』

『了解』

 旗艦とのやり取りを終えた隊長機は、早速目標の割り振りを始める。

『・・・以上だ 各機、迅速に役目を果たせ』

 準備を終えた航空隊は、攻撃態勢を取る。




 ・・・ ・・・ ・・・




 鎮定海軍  第十一艦隊



「予定通りなら、航空隊が一番島に着いてる頃だな・・・」

 時計を見つつ、ルードは呟く。

 無線封鎖を行っている為、航空隊が攻撃を開始するまでは状況が分からない。

 攻撃成功の打電を寄越すのか、はたまた失敗の打電が送られて来るのか、緊張の瞬間である。

『レーダーに機影を探知!』

 突然の横槍に、緊張の糸が張り詰めていた艦橋要員の肩が跳ね上がる。

『十二時の方向より、航空機が多数接近中!総数、48!速力・・・!』

 そこで、報告が止まった。

「どうした、報告を続けろ!」

『速力・・・毎時、900キロを超えています!』

「「「「!?!?」」」」

 この報告から、艦橋は混乱を始めた。

 遷音速

 それは、レシプロエンジンでは到達出来ない速度である。

『現在、高度100より更に降下中!距離、80!』

「もうそんな近くに!?」

「戦闘機は間に合わん・・・対空戦闘用意急げー!」

「見張り員、十二時の方向を重点的に見張れ!」

 矢継ぎ早に指示が飛び交う中、ルードは黙って正面を見据えていた。

「・・・あれは」

 目を凝らしていると、細長い飛行物体を見付ける。

「レーダー、敵機は捉えてるか!?」

『不安定ですがどうにか・・・反応消失!たった今、レーダー上より消えました!』

(案の定だ!)

「見張り員、海面ギリギリを探れ!近くまで来てるぞ!」

(まさか!?)

 ルードの言葉から、レーダー網が役に立たなくなった事をその場にいる全員が理解する。

「レーダー射撃は出来ねぇ!目視照準に切り替えろ!」

『見張りより艦橋、対象を目視!航空機ではありません!高度、約5メートル!距離、10!空母へ向かっています!』

「チィッ!」

 最も狙われたくない艦を狙われている事実に、思わず舌打ちが漏れる。

「弾幕を張れ!狙わなくてもいい!少しでも牽制するんだ!」

「何処だ!?敵機は何処にいる!?」

 艦橋要員の多くが双眼鏡を持って標的を探す中、準備の間に合った機銃や高角砲が一斉に火を吹く。



 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ

 ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ



 規則的な射撃音が響き渡り、空中に爆煙と弾丸と水飛沫が形成される。

「見付けたぞ!」

「何てスピードだ!」

 空の色が変化した事で、接近している白く細長い飛行物体の存在に多くの者が気付く。

 しかし同時に、悲しい程に当たらない対空砲火が目に入る。

 高角砲の信管は標的が通過した後に作動し、機銃もまるで照準が合っていない。

「な、何だ!?」

「上がったぞ!」

 直後、飛行物体は急上昇し、対空砲火を完全に置き去りにする。

 かと思った瞬間、今度は急降下してそのまま艦へと突っ込んだ。



 ドオオオオオオオオオオオン



 凄まじい爆炎が至る所から上がり、衝撃波によって海面が円を形成する。

 一拍置いて、巨大な爆音が轟いた。

「何と言う事だ・・・」

 詳細な被害を集計せずとも、一目見れば分かる程の惨状に誰ともなく嘆きの声が漏れる。

「報告します!」

 そこへ、詳細な報告がやって来た。

「攻撃を受けた艦は、空母 重巡 軽巡全艦及び、駆逐艦8と判明!駆逐艦は全艦が爆沈、軽巡も大半が轟沈、重巡は半数が撃沈、半数が大破ですが、全艦で総員退艦命令が発令されました!空母も全艦で総員退艦命令が発令されています!」

 ほんの僅かな時間で引き起こされた惨劇は、彼等の想像を大きく超える結果を生み出した。



 バゴオオオオオオオオオン



 再度、凄まじい爆音が大気を揺らす。

『空母ハンテロ、弾庫へ誘爆した模様・・・』

 見張り員からの報告に目を向けると、これまでよりも巨大な爆炎を上げつつ真っ二つに割れて轟沈する空母が目に入る。

「・・・・・・」

 誰も、何も言えない。

 技術的にも物量的にも他を圧倒している筈の自分達が、この一瞬の内に窮地に立たされていた。

 それが示す事は一つしか無い。

「・・・撤退する。」

 ルードは素早く考えを纏め、決断した。

 残存艦は、一斉に反転を開始する。

 その過程で生存者の捜索が行われたが、圧倒的な暴威を前にしては、数える程しか生き永らえる事は出来なかった。

『レーダーに、更なる機影を探知!数、48!』

「な・・・!」

「対空戦闘!」

 容赦無い追撃に、大半が内心絶望する。



 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ

 ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ



 必死の対空砲火が展開されるが、主力艦の多くを欠いた弾幕は先程よりも明らかに薄く、相変わらず照準も信管も合わない。



 ドオオオオオオオオオオオン



 そのまま飛行物体は、48隻の駆逐艦を破壊した。

「急げ、最大戦速で離脱するぞ!何が何でも生き残って、この事を報せるんだ!」

 ルードの形振り構わない命令により、二度に渡る攻撃を生き延びた艦は一気に増速した。

 最早陣形の維持など出来ず、誰がどう見ても惨めな敗走であった。




 ・・・ ・・・ ・・・




 第一艦隊



『敵艦隊、全速で離脱中 速力、28ノット』

「追撃する」

 井上の号令の元、艦隊は36ノットに増速した。

「間も無く、敵艦隊を対艦ミサイルの射程に捉えます。」

「標的は、戦艦のみだ。駆逐艦は狙うな。」

 追い縋る第一艦隊は、遂に戦艦を射程に捉えた。

『妙高 那智 浜波 沖波 攻撃態勢に入ります』

 指定された4隻が、艦中央部に設置されている発射筒を向ける為、転舵を開始する。

 その間、画面上に表示された敵艦隊の内4隻が赤い四角の囲いに囲われる。

『各艦、目標を捕捉 攻撃まで後十秒』

『・・・5 4 3 2 1 攻撃開始』



 ドオオオオオオオオオ・・・・



 ブースターに点火したミサイルは、瞬く間に加速するとすぐにブースターを切り離し、発射直後に撒き散らした炎と煙を置き去りにした。

『各ミサイル共に、最高速へ到達 着弾まで、残り29分』

 周囲に目立った脅威の存在しない第一艦隊は、待ちに入った。




 ・・・ ・・・ ・・・




 暁帝国



「多良間島より、複数の目撃情報です。」

「新たに、巡視船2隻、タンカー1隻の損傷が確認されました。」

「北部諸島の石油プラント付近にも出没したとの事です。」

 第一艦隊が東からの侵略に対応している頃、本国では海獣の出没件数が急増しており、その対応であらゆる部所が忙しなく動き回っていた。

「海軍の状況は、どうなってる?」

「手が回らん。セイルモン諸島海域どころか、ウォルデ大陸沖にも艦艇を派遣してるんだぞ。」

「海保は?」

「直接的な被害が海軍より大きいせいで、稼働率は下がる一方だ。第一、普段から酷使してるからこれ以上の無理は利かん。」

 海獣対策は海中戦力と言う事情から、暁帝国以外に殆どまともに対応出来ずにいる。

 その為、必然的に暁帝国の負担が大きくなり、暁勢力圏は勿論、セイルモン諸島海域 ウォルデ大陸沖 イウリシア大陸沖 ウォルデ大陸南方航路 まで艦艇を派遣している状態にある。

 無論、各国も対応しているとは言え、あまり有用とは言えない。

「・・・仕方無い。第一艦隊を呼び戻そう。それと、やりたく無いがミサイル艇で牽制を行う。」

 ミサイル艇は、一撃離脱を前提としている為に継続的な戦闘は想定されていない。

 しかし、そうせざるを得ない程に事態は切迫しているのである。




 ・・・ ・・・ ・・・




 第一艦隊



 艦隊より放たれたミサイルは、全弾が寸分違わず目標へ命中していた。

『敵戦艦、レーダー上より消滅を確認 撃沈です』

 残りは、駆逐艦10隻のみでである。

「司令、追撃は」

「しない。理由はすぐに分かる。全艦、反転180度!」

 追撃を望む幕僚は、井上の言葉に首を傾げる。

 井上の指示に従い艦隊が反転する中、連絡員がやって来た。

「本国より入電、帰還命令です。」

 幕僚は、井上を見る。

「難しい話では無い。海獣による人手不足が原因だ。今回の出撃で、許容限界に達したんだ。むしろ、予想より遅かった位だ。」

 戦術的な指揮は苦手とする井上だが、決して無能では無い。

 幕僚は、井上の先見性を改めて思い知った。

「海戦の最中に帰還命令を出すんだ。余裕は無さそうだな。急いで横須賀へ帰還する。」

 メイジャーとの初戦は勝利に終わったが、余韻に浸る間も無く次の戦いへ身を投じて行く。

 技術差は圧倒的だが、依然として余裕は皆無である。




 ・・・ ・・・ ・・・




 第十一艦隊残存艦



 ルードは、載っていた戦艦を撃沈されたもののどうにか無事であり、生き残っていた駆逐艦へ移乗した。

「何だったんだ、アレは・・・」

 二度に渡って繰り広げられた惨劇。

 それと同じ物が、間を置いて4隻の戦艦へと襲い掛かった。

 それは、意思を持つかの様な動きで寸分違わず突っ込んで来た。

 それどころか、他とは格段の違いを見せる戦艦の装甲をいとも容易く貫通し、その暴威は重要防御区画にまで到達した。

 如何に戦艦と言えども、そこまでやられてしまっては無事では済まない。

 多くの乗員が火達磨となり、ルードでさえ死を覚悟した。

 正体不明の攻撃は、メイジャーでさえ危機を感じる程の威力を持つと判断したのである。

「セレンの予測でさえ甘い見通しだ。どうにかしないと・・・」

 ルードは、一刻も早く情報を持ち帰る為、乗員を急かす。



 投稿ペースが酷くなっていますが、リアルの事情がありまして・・・

 落ち着くのは、来月になりそうです。

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