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第百二十四話  前哨戦

 俺、復活!!!

 PCの故障を乗り越え、全話の見直しを終え、遂に還って来た!

 暁帝国  東京



 敵艦隊接近の報を受け、暁帝国では迎撃準備が進んでいた。

 東郷の元では、敵艦隊に関する最終確認が行われていた。

「それでは、此方を御覧下さい。」

 進行役がそう言うと、モニターに衛星写真が表示される。

「御覧の通り、接近している艦隊は第二次世界大戦レベルとなっております。内訳は、戦艦4 空母6 重巡20 軽巡14 駆逐艦66 となっており、その他に潜水艦が22隻先行しております。」

 更に後方には補給艦も同行しており、護衛艦が周囲を囲んでいる。

「大艦隊だが、対処出来ない規模でも無いな。」

 東郷は、楽観的な見解を述べる。

「では次に、各艦の詳細を見て行きます。」

 接近している艦は、どれも第二次世界大戦当時のアメリカ艦と瓜二つであった。


 戦艦=大改装後のコロラド級

 空母=ヨークタウン級

 重巡洋艦=ノーザンプトン級

 軽巡洋艦=オマハ級

 駆逐艦=ベンソン級

 潜水艦=サーモン級


 更に、全艦にレーダーらしき構造物が確認されており、索敵能力は同時代のアメリカよりも優れている可能性が指摘されている。

「艦載機も、既知の機体に酷似しているものと思われます。推測される機体はF2AからF4Uまで幅があり、判然としません。」

「接近している艦隊以外の情報は?」

「敵本土の見通しはかなり良くなっていますが、現在は情報収集の段階にありますので、もう暫くお待ち下さい。」

 現在、立ち込めていた光は八割近くが消えており、本格的な敵状調査が始まっている。

 とは言え、巨大な大陸を丸ごと一つ分析しなければならない関係上、報告可能な段階に至るまでには未だに膨大な時間を必要としてるのが現状である。

「なら、まずは接近している艦隊にどう対処するかだな。」

「では、各軍毎に御説明致します。」

 敵艦隊の接近を許した場合、最初に犠牲となるのは東部諸島と推測されている。

 そこで陸軍は、対艦ミサイル装備の砲兵連隊を中心に戦力を派遣しており、濃密なミサイル網を構築している。

 また、航空戦力の到来に備え、防空網の整備も進んでいる。

 海軍は、一個艦隊 二個戦隊 四個沿岸警備隊 一個潜水艦隊 を出撃させており、東部諸島東側海域へ展開させている。

 空軍は、二個航空団を動員、戦況次第で他の航空団からの増援を送る手筈となっている。

 更に、念の為にこの海域の巡視船も戦列に加わる。

 とは言え、その用途は艦隊が撃ち漏らした敵航空隊の迎撃であり、実質予備である。

「敵艦隊の所在は現時点では筒抜けですから敵機の出撃を許す事は無いと思われますが、念の為に海上保安庁にも協力して貰います。」

「確かに、巡視船と言えども性能は高過ぎると言っていい位だからな。対空艦として見れば、第二次世界大戦レベルを軽く超えてる。まぁ、巡視船が交戦状態になる前に決着を付けるのが最善だけどな。」

「その前に、まずは潜水艦同士の応酬から始まります。」

「勝負になるのか?」

「恐らく、一方的な展開になるでしょう。敵潜水艦は、見た目からも可潜艦と呼べるレベルに過ぎません。我が方の艦が補足される可能性は限り無く低く、誘導兵器を保有している可能性もほぼゼロです。」

 敗ける要素は無いが、それでも不確定要素は存在していた。

「敵艦隊には勝てるとしても、海戦の最中に海獣に襲われる危険は無いか?」

「可能性は低いと考えますが、想定される事態です。ですので、艦隊周辺に常時哨戒機を飛ばします。発見次第、最優先で対処する方針です。」

 魚雷を躱す程の高い能力を持つ海獣が相手と言う事もあり、東郷はこれだけでは安心出来なかった。

 だが、やれる事は全てやっているのである。

 不安を払拭する様に、東郷はゴーサインを出した。




 ・・・ ・・・ ・・・




 ハーベスト鎮定海軍  第十一艦隊



「何だって俺が・・・」

 ルードは、戦艦の艦橋で黄昏れる。

 彼は、本来であればそのまま西部地域を担当している筈であった。

 しかし、サハタインの元でエイグロス帝国の拠点化が完了するまでは東部地域へ戦力を集中させる方針が決まった事で、その第一陣の司令官として彼が選ばれてしまったのである。

 通常であればセレンが担当する所ではあるが、暁帝国に関する予測が彼女の進言で甘い可能性が浮上した為、直接見聞きした彼女は後方で情報分析へ駆り出されていた。

 尚、ルードはその手の作業を特に苦手としており、前線指揮官が最も適していると言う事情から来た判断でもある。

 そして、彼の指揮する第十一艦隊は主力では無い。

 主力艦隊は一桁台の番号を使い、二桁台は旧式艦から成る二線級である。

 旧式と言えども全世界を圧倒する程の戦力ではあるが、当然ながら不満しか無い。

 そんな不満を紛らわす様に、ルードは紙の束を取り出す。

「航空機の速度は400キロ半ば、装甲空母を保有、主砲は130ミリクラスが一門・・・」

 それは、現時点で判明している暁帝国に関する資料である。

(何回確認しても、意味が分からん・・・)

 確認すればする程、疑問符ばかりが浮かんで来る。

 資料から、有力な航空戦力が存在する事は理解出来る。

 だが、それ以外がまるで理解出来ない。

 巡洋艦や駆逐艦は多数確認されているが、肝心の戦艦が一隻も確認されていない。

 その巡洋艦と駆逐艦にしても小口径砲を一門搭載するのみであり、魚雷の装備も確認されていない。

 いくら航空機の発達によって砲雷撃戦の重要度が下がっているとは言え、未だに有力な戦力である事に変わりは無い。

 対空能力が予想よりも高いと新たに分析されてはいるが、対空装備の為に此処まで極端に砲戦能力を落とすのは馬鹿げている。

(常識的に考えれば、後方に強力な装備を積んだ本命があると見るべきだ。だが、そんな戦力があるなら事前調査で引っ掛かってる筈だ・・・なら、本当にこんな雑魚艦を主力に?)

「・・・・・・フッ」

 一通り悩んで困惑すると、今度は鼻で笑う。

「通りで、センテル帝国より評価が低い訳だ。警戒すべきは航空戦力のみ。それも、こっちの戦力に多少劣る程度と来た。どれだけの数を揃えてるかが気になるトコだが、直衞を常時上げて各艦に持ち回りでスクランブル待機させとけば十分だろうな。」

 失笑しようとも、想定される最悪の事態へ十分に対処出来るだけの体制を練り、直ちに艦隊を動かす。


 暫く後、


「ルード様、間も無く敵の予想警戒海域へ入ります。」

 上空直援の戦闘機が空母から発艦を続ける中、ルードの脇に控える参謀が報告する。

「レーダーに異常は?」

「ありません。ですが、敵に捕捉されるのも時間の問題かと。」

「そうか・・・」

 一言だけ返しつつ、不安を押し殺す。

 海戦は、見敵必殺が鉄則である。

 如何に早く敵を見付け出し、如何に早く攻撃に移るかが勝敗の決め手となる。

(セレンの奴の言う通りなら、間違い無く敵に先手を取られる・・・!)

 セレンによって齋された、自分達よりも優れた索敵能力。

 その情報が、ルードの不安の元凶である。

 その不安の裏返しが資料確認であり、失笑であり、直援機の配備である。

 直接命を懸ける前線指揮官として、これ程までに不安な事は無い。

「潜水艦からはどうだ?」

「未だ、何も・・・」

 不安は否応無しに高まって行く。


 「報告!!」


 暫く沈黙していると、慌てた様子で通信兵が駆け込んで来る。

「現在までに、9隻の潜水艦との交信が途絶!撃沈されたと判断致します!」




 ・・・ ・・・ ・・・




 東部諸島沖



 東部諸島より約30海里地点

 その海域の下、深度10メートルには口があれば舌舐めずりしていそうなハンターが潜んでいた。

「爆雷が艦橋構造物の横に三発、投下軌条に載せられている。反対側にもあるだろうから計六発か・・・海獣退治で慌てて増設したのだろうな。」

 それは、第十一艦隊所属の潜水艦である。

 隠密行動を是とする潜水艦は、簡単に敵の懐深くへと潜り込める。

 自身の勢力圏内だからと油断している者は、忽ち餌食となってしまうのである。

「何とも奇妙な艦だ・・・」

 潜望鏡を覗く艦長は、標的のスッキリとした形状に違和感を覚える。

 彼等のよく知る軍艦とは、多数の装備によって無骨で堂々とした見た目をしているものである。

 それとは全く逆を行く敵艦の造りには、ある種の不気味さすら感じていた。

「・・・潜望鏡下ろせー!魚雷戦用意!」

 いつまでも眺めている訳にも行かず、声を張り上げる。

(あんな装備でいるんだ、対潜水艦戦の経験は無いだろう。)

 そう考えている間に、準備が終わる。

「魚雷管注水開始!」

 注水を進めている間に、再度潜望鏡を上げる。

「目標、進路、速度、まま。魚雷発射地点到達ま・・・!」

 そこまで言った時、標的の舷側から何かが射出された事を確認する。

「か・・・艦長!」

 直後、聴音兵が声を上げた。

「敵艦の方向より、探信音が接近中!」

「な、何だと!?」



 ・・ォーーーン  コーーーーーン……  コーーーーーン……



 艦長が驚愕した直後、明らかに探信音としか思えない音が聞こえて来る。

「探信音の音源より、推進音を探知!・・・こ、これは魚雷です!魚雷が探信音を発しながら接近しています!」

「そ、そんな馬鹿な!そんな高性能な兵器があって堪るか!」

 艦長は怒鳴るが、探信音は確実に近付いて来る。

「機関全速、面舵一杯、アップトリム最大!」

 艦長は形振り構わず回避行動へ移るが、魚雷は容赦無く接近を続ける。

「駄目です、まだ接近して来ます!」

 聴音の言葉に、全乗員は絶望する。

 探信音は尚も接近し、遂に命中した。



 ドッ・・バキバキメキッ・・・ゴゴゴゴゴゴ・・・・・



 必死の回避も虚しく、一番槍となる筈であった潜水艦は艦体破壊音を響かながら海中深くへと没した。



 巡洋艦 妙高



『魚雷命中、艦体破壊音を探知。』

「中々大胆な事をして来るじゃ無いか。」

 CICからの報告を聞き、艦長は呟く。

「現在までに、戦闘海域に入っている敵艦は12隻です。間も無く、担当艦の射程に入ります。」

 副長の報告に、艦長は軽く頷く。

「こんな所で躓く訳には行かん。速やかに排除して、本隊へ備えなければな・・・」

 海戦は、まだ始まったばかりである。




 ・・・ ・・・ ・・・




 潜水艦 伊-101



「目標深度30、距離7000」

 妙高とは別の海域でも、敵潜水艦の排除は進められていた。

「魚雷室へ、一番発射管へ魚雷装填。通常弾頭、音響誘導。発射管注水」

 艦長の命令に従い、攻撃準備が整えられて行く。

「聴音、目標に変化は?」

「ありません」

(流石に、本艦の捕捉は無理か・・・)

 第二次世界大戦当時の可潜艦と現代の潜水艦とでは、静粛性もソナーも性能が違い過ぎる。

 原潜ならば探知の可能性もあるが、ディーゼル潜である百番台の艦が相手である。

『目標諸元入力完了、発射準備よし。』

 艦長は一瞬目を閉じ、見えない敵の冥福を祈る。

「魚雷発射!」



 ドシュッ



 目を見開いた艦長の命令に従い、魚雷が発射された。

『魚雷、目標へ向けて順調に航走中。』

 そのまま沈黙する事一分、

『目標、回避行動を開始。アップトリムをかけています。』

 しかし、魚雷は回避の為に立てている派手な推進音へと真っ直ぐに向かう。

『間も無く、着弾します。』

 沈黙を続ける艦内。

『・・・着弾、命中です。』

 数瞬遅れて、爆発音が響き渡る。

 しかし、誰も喜ばない。

「同じ潜水艦乗りとして重いな・・・」

 艦長が、乗員の心境を代弁する。

 彼等も、一歩間違えば同じ様に暗い海中へ引きずり込まれるのである。

「通信ブイを上げろ。」

 旗艦へ敵艦撃沈を報告すると、再び海中へと身を隠した。



 見直してみたら、描写不足が多かったです。

 計1万2000文字近くも加筆する羽目になるとは。

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