第百十八話 辛辣な世界
今の内に、あちこちで起こってる問題を取り上げます。
世界が新たに発生した異変に翻弄されている頃、暁帝国の衛星監視網の隙を突く様に、新大陸から二つの船団が出港した。
見る者が見れば、それがセンテル帝国よりも先進的な近代艦である事が分かる。
それも、超弩級戦艦すら擁した艦隊である。
見る者を畏怖させる、又は興奮させる威容を誇る艦隊は、それぞれ東西へと向かった。
・・・ ・・・ ・・・
インシエント大陸 コロネ公国
元々の人口の少なさに加え、未開拓地域と旧属国地域が多く存在した事から、コロネ公国の人口は未だに大陸最少となっている。
その為、移民の流入数が最多となり、あらゆる種族が歩き回る人種の坩堝の様相を呈していた。
この国に、勇者一行が訪れていた。
イウリシア大陸の問題が解決の一途を辿る中、それに反比例する様に五人の出番は少なくなっていた。
東郷との顔合わせの後、休暇となった事でインシエント大陸の観光と洒落込んでいたのである。
移民を積極的に受け入れている事から非常に開放的な空気があり、これまで勇者の名を利用されて来た彼等には居心地が良く感じられていた。
「流石に暁勢力圏は、物流の規模が違いますね。」
五人の目の前には、大型ショッピングモールが聳え立っていた。
イウリシア大陸は、現地人の手に負える範囲での開発に留まっている関係上、流通に関する発展はやや限定的となっており、昔ながらの小売業が幅を利かせている。
それに対し、暁勢力圏は現代に近い発展を謳歌しており、人口の関係から高層ビルは少ないものの、一般的な国家の王城を凌駕する建造物がそこかしこに立ち並んでいた。
「さーて、何が売ってるか楽しみだなー・・・」
ウキウキ気分で店内へ入り、目に余るはしゃぎっぷりを披露した後、町の郊外にある宿泊施設へと向かう。
道半ばへと差し掛かる頃、周囲には畑が点在しており、目に見えて車や人通りが減っていた。
「ん?」
そんな長閑な光景を眺めていると、レオンはある人物が目に留まる。
「あれって・・・!」
「ちょっとレオン、何処に行くのよ!?」
四人は、突然駆け出したレオンを慌てて追う。
「お前、もしかしてマークか!?」
農作業をしていたマークは、呼ばれた相手を見て度肝を抜かれる。
「て・・・テ、テメェは・・・勇者レオン!」
武装していないマークは、慌てて持っていた草刈り鎌を構える。
「物騒なモンをいきなり構えるな!俺達がやりあう理由は、もう無い筈だろう!?」
レオンとマークは、かつては何度も戦った仲である。
実力はレオンの方が掛け値無しに上ではあるが、マークの並外れた危機察知はレオンでさえ苦戦を強いられる程のものであった。
いつしか、戦場での奇妙な顔見知りとなっており、同じくマークと共に戦場へ出る事の多かったメイも顔見知りとなっていた。
尚、ケイは後方での仕事が多かった為、顔を合わせた事は無い。
「そう言やぁ、お前等が亡命してイウリシア大陸に行ったとかニュースでやってたな。何でこんなトコにいる?」
マークは、鎌を降ろしながら問う
「レオン、女の子をもっと気遣うべき・・・!」
そこへ、残り四人が大量の買い物袋に翻弄されながら漸く追い付く。
よく見ると、レオンも袋をぶら下げていた。
「呑気な奴等だな・・・」
「って、マークじゃ無いか!何でこんな所に!?」
「それはこっちの台詞だ。何でこんな所でショッピングなんかしてんだよ?」
「何でと言われましても、偶の休暇に観光をしているだけですよ。」
「お前等のそんな姿は見たく無かった・・・」
戦場での凛々しい姿しか見た事の無いマークは、宿敵の見る影も無い姿に嘆く。
最も厄介な相手であったとは言え、その実力は互いに認めるところだったのである。
「何の騒ぎだ?」
そこへ、メイとケイがやって来た。
「あたしの目がおかしくなっているの・・・?」
メイは、マークと共にいるのが誰かをすぐに理解し、目を疑った。
「久しぶりね、メイ。」
「誰かと思えば、モールでバカ騒ぎをしていた連中か。よりにもよって、お前達の知り合いとはな・・・付き合う相手は、慎重に選んだ方がいいぞ。」
勇者一行の顔を知らないケイは、冷めた視線を向ける。
「随分酷い言い種だが、探してる物を見付けた時ってのは、大概あんな感じだろ?」
レオンの反論に、四人が素早く反応する。
「少し黙ってろ!」
「時と場を考えなさいよ!」
「どうして、そこで言い返すんですか!?」
「恥の上塗りとは、この事・・・!」
ケイの指摘によって頭の冷えた四人は、未だに暴走を続けるレオンを押さえ込みに掛かる。
「イデデデデデデ・・・!分かった、俺が悪かったから!待てって、足の踏み場を考えろよ!折角買ったソフトを踏み潰す気か!?」
「これが本当に、あの勇者なの・・・?」
「それ以上言うな。」
目の前で繰り広げられる宿敵の醜い争いに、二人揃って肩を落とす。
「勇者だと?少し前に話題になっていた、あの勇者か?」
ケイは、即座に反応する。
「その勇者だよ。俺達が散々苦しめられたあの勇者だ。」
それを聞き、ケイは苦々しい顔をする。
作戦の大きな障害となっていた事は勿論、単独での遊撃戦も散々やられた事もあり、後方で頭を使う立場であったケイにとっては、前線を引っ掻き回す厄介極まり無いだけの存在であったのである。
「勇者による損害が無ければ、移民が必要な程に追い詰められる事も無かっただろうな。」
ハレル教圏の脅威とは関係無く、移民が正しい判断であったと結論を出しているケイだが、かつての敵を前にしてはやはりそう考えてしまう。
「そっちの襲撃が無かったら、俺が勇者として名を馳せる事も無かったろうな。」
ネルウィー公国の軍事行動こそがレオンの勇者としての活動のそもそもの元凶であり、何よりも家族や村の仲間の敵でもある。
「襲撃ってーと、アレか?お前が主導してた越境攻撃の事か?」
マークの不用意な発言により、レオンに火が付く。
「そうか、お前が諸悪の根源だったのか・・・!」
「責任転嫁とはいただけないな。そんな事をやらざるを得ない程に、此方を追い詰めたのはそちらだろう。」
「俺達は、帰る場所を失った。ハレル教圏では無く、生まれ育った故郷をずっと前に、その襲撃によってな。あれだけの事を正当化する気か?」
「逆に聞くが、お前達が主張していた亜人族の撲滅は正しいのか?」
この質問に、レオンの勢いが弱まる。
「他大陸と同じく、セイキュリー大陸も元々は種族に関係無く暮らしていた。それを破壊し、住処を奪ったのは何処の誰だ?我々は、生まれる以前から帰る場所を失っている。それどころか、漸く辿り着いた避難場所さえも破壊しようとした。」
ケイの口調は静かだが、確かな怒りが込められていた。
「ハレル教は、多くを殺し過ぎた。」
他でも無い勇者に対する糾弾であった。
「ケイ、その辺にしとけ。生きるのに苦労の無いトコにまで来て、余計な争いを持ち込むな。」
「・・・フンッ」
マークが止めに入り、ケイは鼻を鳴らして立ち去った。
「悪いな、アイツは気難しい奴でな。」
「・・・いや、俺こそ熱くなり過ぎた。」
セイキュリー大陸で多くの人生を狂わせた元凶が、他でも無いハレル教にある事を再認識する。
「思えば、随分遠くまで来てしまった・・・」
「全くだな。お前等と、こうしてのんびり話が出来るなんて思わなかった。それも、別大陸でな。」
レオンとマークは、道端に座り込みながら語らう。
勇者一行の受け入れは、移民に少なくない動揺と反発を与えたが、少しずつ受け入れられて行く。
・・・ ・・・ ・・・
モアガル帝国 国境線
奇麗に並んだモアガル帝国軍の戦列は、国境の向こう側で立ち昇る土煙を睨む。
よく見ると、数千にもなる歩兵が突撃して来ていた。
隊列を乱さない為か、突撃は駆け足程度の緩いものであり、動揺する者はいない。
敵の顔には、侮りの色が見られていた。
それも、無理は無かった。
現在、この戦場にいるモアガル帝国軍は、歩兵たったの400人である。
更に、戦列は二列だけである為、薄く広がっている。
この陣形は、部隊の火力を万遍無く浴びせる事が出来るが、肉薄されると突破され易い諸刃の剣である。
そんな陣形を、よりにもよって圧倒的な戦力的劣勢の中でやっているのである。
しかも、敵軍はその多くがマスケットを持っている。
これでは、火力的優位も殆ど存在しない。
「前列、構えー!」
隊長の命令と同時に、一列目の歩兵200が銃を構える。
「何をやってるんだ?まだ、こんなに離れてんのに。」
「ホントにな。届くワケ無いだろ。」
距離は、1キロを切った所である。
敵兵は、走りながら余裕で私語を始める。
「隊列を乱すなー!敵に集中しろ!」
周囲で馬を走らせている士官が、サーベルを振り上げながら監督する。
「もう間も無く、交戦開始だ!決して退いてはならん!」
だが、距離が700メートルに迫った時、異変が起きた。
「敵部隊、発砲を開始!」
「何の真似だ?これだけの距離で当たるは」
バシッ
生々しい音が響き、数十人が倒れる。
「な・・・一体、どうなってるんだ!?」
決して届く筈の無い距離からの攻撃に、動揺が広がる。
被弾した者の中には、弾が奇麗に貫通している者もいた。
弾道が安定せず、弾速も遅いマスケットの球形弾では、まず有り得ない光景である。
「後列、構えー!」
第一射を終えた前列は、直ちに装填作業を始める。
その間に後列が射撃体勢に入り、狙いを定める。
「撃てー!」
バァァァァァァン
隊長の命令と同時に200発の銃弾が撃ち出され、50人近くの敵兵が倒れる。
「前列、構えー!」
後列が装填作業を始めると同時に、前列が構える。
「撃てー!」
先程よりも近付いている為、撃つ毎に命中率は上がって行く。
「何なんだアレは!?何であんなに連射出来る!?」
「この距離で、何であんなに当てれるんだよ!?これじゃぁ、無駄死にじゃ無いか!」
「これの何処が弱ってるってんだ!?滅茶苦茶強力だろうが!」
あっという間に数百人が倒される様を見せ付けられた事で、このほんの僅かな合間に敵兵の士気は大きく下がっていた。
「狼狽えるでない!敵部隊まで、残り500メートルだ!構えろー!」
バァァァァァァァン
「ガッ・・・!」
部下へ喝を入れようとした士官は、直後の発砲を受けて斃れた。
この死に様に他の士官も動揺してしまい、進撃速度が鈍ってしまう。
その隙は致命傷となり、次の発砲ではほぼ百発百中となって膨大な死者を出す。
同時に、数名の士官も撃ち抜かれた事で、戦列が崩壊を始めた。
「後列、構えー!」
ガシャッ
「撃てー!」
バァァァァァァァン
「前列、構えー!」
隊長の流れ作業の様な命令に、部下は忠実に答える。
「敵軍、残り400メートル!」
「有効射程に入ったぞ、絶対に外すな!」
一斉射毎に200人が倒れて行き、しかも速射性も従来のマスケットとは比較とはならない。
進撃速度の鈍った敵軍は、じりじりと戦線が後退を始めた。
それだけに留まらず、馬上で目立ちやすい士官が次々と撃ち抜かれて行く。
「敵軍、敗走を開始!」
間も無く、指揮系統を失った敵は我先に逃げ出した。
暫く警戒を続けるも、敵が完全に見えなくなってから戦果確認へ移る。
「敵は、1300人以上が戦死、我が方の被害はゼロです。」
「全く、アルーシ連邦はとんでもない物を作ったもんだ。」
隊長は、支給されたばかりのライフルを眺めながら呟く。
それから少し経ち、モアガル帝国は敵対国に対する攻勢を開始した。
局地戦でさえ大損害を出していた各国は、本気を出した列強国に対抗する術など持たなかった。
エイグロス帝国から購入したマスケットも、次世代の兵器であるライフルには歯が立たず、まともに撃てもせずに打ち捨てられる事態が多発した。
この動きを察知したエイグロス帝国は、密売以外の工作員を迅速に引き上げる事を決定した。
この局面に於いてもエイグロス帝国を頼ろうとした各国は、仲介人が姿を消した事に絶叫する事となる。
必死の抵抗も空しく、ガリスレーン大陸はモアガル帝国派によって統一された。
・・・ ・・・ ・・・
北セイルモン諸島沖
「さて、どうしたものか・・・」
ノシフスキーは、視線の先に見える陸地を眺めながら眉間に皺を寄せる。
東部地域最後の問題と言える北セイルモン諸島は、アルーシ ピルシー センテル 暁帝国艦隊により、完全封鎖されていた。
「降伏する様子は?」
「ありません。相変わらず、厳戒態勢を保ったままです。」
見張り員は、双眼鏡で眺めたまま答える。
北諸島には、セイキュリー大陸出身者が多数滞在している。
彼等は、大陸と同じくひたすら頑迷であり、降伏勧告に対して砲撃で返していた。
ハレル教圏が崩壊した事も併せて伝えてはいたが、誰一人として信じる者はおらず、具体的な処遇が決まらない状況で下手に刺激したくない事もあり、旅順を包囲する連合艦隊よろしく、無為な時間を過ごしていた。
「退屈だ・・・」
度々、突発訓練を実施する事で乗員を締め付けてはいるが、同じ艦同士での行動に慣れて来ると、半ば作業と化していた。
「センテル艦に、仮想敵役をやって貰うかな。」
「暁帝国では無く、センテル帝国にですか?」
「技術差があり過ぎて訓練にもならんぞ。暁帝国の基本戦術は、目視圏外での戦闘だからな。」
軍の改革に特に熱心な事もあり、ノシフスキーは各国の武器と戦術をよく研究している。
「早く、装甲艦を運用出来る様にならんとだな。」
現状のアルーシ連邦海軍は、センテル帝国から購入した戦艦を除き、未だに装甲艦を配備出来ていない。
尚、戦艦は計3隻購入している。
ドォォン…
「ん?」
「敵の砲撃を確認しました。一発だけです。」
「いつものか。」
ただの虚勢でしか無いが、島から度々砲撃が行われていた。
しかし射程外にいる上に、一発だけでは最悪でも小破にしかならない。
ドォォォォォォォォン
「装甲巡洋艦より、威嚇射撃を確認。」
センテル艦から、お返しの砲撃が実施される。
威嚇である為、島の手前に巨大な水柱を上げただけであった。
「補給も出来ないんだし、そろそろ降伏してはくれんかね?」
解決の目途は立っていないが、緊張状態と言うにはあまりにも呑気な空気が流れていた。
・・・ ・・・ ・・・
ボルゴノドルフ大陸
それが、新大陸の名称である。
この大陸の各所には、戦前の西欧を思わせる町並みが広がっており、非常に栄えた大陸国家に見える。
しかし、何処へ行っても戦闘車両や軍人が配置されており、息苦しい事この上無い。
誰がどう見ても全会一致で軍事政権が実権を握っていると結論するであろうこの大陸の中央には、洗練された計画都市と思しき大都市があり、その中心に聳え立つ近世の砦を巨大化した様な施設では、重大な意思決定が行われようとしていた。
大陸管理都市 メイジアⅧ 中央官庁
町の中央の砦の中心には、特権階級の居城を思わせる高級感と、近代的な機能性を兼ね備えた一棟のビルが存在感を放っていた。
ボルゴノドルフ大陸の全てを統括すると同時に、万が一の時には最後の砦となる大陸最重要施設である。
その最上階の会議室に、異様に巨大な魔力を擁する一団が集まっていた。
「魔導管理局」
「顕現による負荷により、魔術陣が大きく破損しました。再度の使用は不可能です。魔力制御装置も同様です。これにより、留めていた魔力が一斉に空気中へ拡散していますが、不都合は認められません。」
「大陸管理局」
「各地の調査を行いましたが、異常は見られません。既に、既定の配置を終えております。」
「軍事管理局」
「予定通り、事前に取り決められた二勢力に対する艦隊を派遣した。対外進出の準備は、もう暫く掛かる見込みだ。」
「外務管理局」
「交渉要員を、艦隊に同伴致しております。その他の勢力に対する交渉団につきましては、別途準備を進めております。」
「情報管理局」
「現状では、新たな情報はありません。」
一通りの確認作業を終えると、この場のトップである サハタイン の目付きが鋭くなる。
「大した問題は発生していない様で、それは何よりである。これまでの、長い準備が実を結んだのであろう。実にご苦労であった。」
穏やかに労いの言葉を掛けるが、目付きは鋭いままであった。
「だが、目覚めの時まで残り僅かな時しか残されていない。引き続き、最大限の努力を求めるものである。」
「しかしよォ、何も此処まで慎重にやる事ァ無ェだろ。これじゃァ、何の為に戦力強化ヤって来たのか分からんぜ。」
声を上げたのは、軍事管理局長の ゼルベード である。
粗野で喧嘩っ早いが、武人としての資質を備えている。
彼にとって、交渉や懐柔は性に合わないやり方である。
「装備も兵力も戦術も、あの時よりずっと上だろ?だったら、時間を掛けずに一気に全土を制圧すりゃァいいじゃ無ェか。事前に集めた情報でも、相手にならねェのは確認済みだろ。なァ?」
ゼルベードは、そう言って情報管理局長である ファレス を見る。
見た目は少年のファレスだが、長年サハタインの補佐を行って来た真面目一辺倒である。
「此方に劣る事は確かですが、相手にならないとは限りません。損害を与え得るだけの戦力を保有しています。油断は禁物です。」
「ケッ、いつもそれだな。俺だって、油断するつもりは無ェよ。けどよ、家畜共にヘコヘコすんのが正しいやり方だとはどうしても思えねェぜ。」
「それは、聞き捨てなりませんよ。」
怒りを露わにしたのは、外務管理局長の マモ である。
基本的に丁寧な言葉使いではあるが、売り言葉に買い言葉になり易い事が難点である。
「私達には、余計な死者を出している余裕はありません。より円滑に制圧を行う為に外務管理局は在るのです。」
「だから、武力制圧した方が早いだろーが。余計な艦隊派遣のせいで、全体の準備がまだ終わってねェこっちの身にもなれってんだ。」
「制圧そのものが早くとも、その後の統治に悪影響が出てしまっては意味がありません。かつては、それで失敗したのですから。」
「その辺でやめておけ。」
サハタインに諫められ、両者は引き下がる。
「ゼルベード、我等の目的を忘れてはならん。マモの言う通り、余計な死者を出す余裕は無いのだ。だが、奴等が大人しく従わぬのならば、貴様は遠慮無く制圧を行えば良いだろう。」
此処まで言われて、ゼルベードは完全に口を閉ざした。
「だが問題は、我等が姿を隠していた間に奴等が新たな魔導を編み出していないかだ。これまでの調査では、我等に匹敵する戦力は装甲空母しか確認されておらんが、想定外の強大な攻撃法を編み出していないと言う保証は何処にも無いであろう。」
そう言うと、魔導管理局長である アドルカモフ を睨む。
「派遣艦隊には、我が局の魔導調査員を同乗させています。要警戒要因となっている二勢力の調査が出来れば、粗方の魔導形態は判明すると思われます。」
「今は、調査結果を待つしか無いか・・・では、制圧後の統治に関する準備については?」
今度は、大陸管理局長である ベルゴール を睨む。
「管理都市建設の為の資材と人員の手配は完了しております。後は、輸送と建設を如何に手早く終わらせるかが問題となっておりますが、軍の協力次第となります。」
「俺は、便利屋じゃ無ェんだがなァ・・・」
ゼルベードは不満を漏らすが、流石に断る事は無かった。
「よく聞け!」
サハタインは、一際大きな声で語り始める。
「我等は、この星の管理者である!我等は、管理者として生を受けたのである!我等は、自らの役目を全うする為、今日まで闇の底で耐えて来たのである!何故ならば、我等がメイジャーだからである!今こそ、かつて失敗した役目を全うする時である!自らが、管理人たるメイジャーである事を決して忘れず役目を全うするのだ!各々、仕事に掛かれィッ!」
全員が一斉に立ち上がり、それぞれの仕事場へと赴く。
世界中で語られて来たメイジャーが、歴史の表舞台へと踊り出た。
何かと言えば、名前を考えるのが大変で困ります。
オラにネーミングセンスを分けてくれ!




