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第百四話  レック諸島沖海戦

 総合評価が、2000を突破しました!

 最初は、三桁も行かないだろうと思っていましたが、此処まで見て頂けるとは本当に嬉しいです。

 レック諸島沖  イーグル隊



 緊急発進したF-3一個小隊は、高度1000と言う低空を飛んでいた。

『此方イーグルリーダー、敵艦隊を目視。』

 小隊長はそう言うと、大きな魔力反応の元を探し始める。

(主力は、一等戦列艦が100前後か。通商破壊をやってた艦は三等から六等らしいから、格段の戦力だな。だが・・・)

 だが、何処にでもある何の変哲も無いただの戦列艦であり、何らかの特別な機能を持った特殊な艦は見当たらない。

『管制塔よりイーグルチームへ、現状報告せよ。』

『此方イーグルリーダー、敵艦隊は各種戦列艦のみ。特別な兵装は認められず。』

 落胆の色が無線機を通して伝わり、僅かな沈黙が流れる。

『イーグルチームへ、交戦を許可する。ただし、念の為に攻撃はミサイルのみとし、不用意な接近は行うな。』

『了解』



 ハレル教圏艦隊



「正面から、飛竜が接近!距離、およそ12キロ!数、4!」

 見張りが声を張り上げ、場が騒つく。

「もう来たのか!?」

「どうやって気付いたんだ?」

「チッ、たかが邪教徒如きが、随分鋭いじゃ無いか・・・」

 多国籍艦隊である事もあり、勝手に戦闘態勢を整える艦、回避行動を取ろうとする艦、単に騒いでいるだけの艦等々、素人目に見ても酷い有様となっていた。


 「全艦戦闘配置、艦幅を広く取れ!!」


 ボルドーの命令が空気を震わせ、混乱し始めていた艦隊の統制が元に戻る。

「弓兵、銃兵は、甲板へ集まれ!見張り員、敵騎の距離を再度報せ!」

 的確な命令を迅速に飛ばし、瞬く間に艦隊を掌握したボルドーは、反撃の糸口を掴みに掛かる。

(飛竜を出して来るとは厄介な・・・!艦からの反撃では撃墜は極めて困難だが、物量差で駆逐する程度は出来よう。)

 その為にも、敵の位置を正確に把握しておかなければならない。

「敵騎、6キロにまで接近・・・いえ、間も無く艦隊直上へ到達します!物凄い速度です!」

「何だと!?」

(どうやって、こんな短時間で12キロもの距離を詰めれるのだ!?)

 想定外の報告に、ボルドーに限らず誰もが狼狽える。



 ゴォォォォォォォォォ



「ヒッ・・・!」

 聞き覚えのある轟音が響き渡り、多くの者が半ば反射的に竦み上がる。

「な、何と言う速度だ!」

 対するボルドーは怯みはしなかったものの、初めて見る航空機に驚愕した。

「アレが・・・アレが飛竜だと!?違う、あんな飛竜は見た事が無い・・・」

 本能的に強敵の匂いを感じ取り、意味が無いと頭では理解しつつも思わず身構える。

(クッ、あんな速度で飛び回られては、此方の攻撃など全く当たらないな・・・それにしても、何をしているのだ?)

 敵機は、艦隊上空を旋回しているだけであり、攻撃の素振りは見られない。

 暫くすると、東へ飛び去った。

「奴等、何がしたいんだ?」

「ただの偵察では?」

「あれ程の戦力を、単なる偵察に割くと思うか?」

 いくら議論しても結論は出ず、艦隊に漠然とした不安が蔓延した。

「とにかく、奴等に気付かれている事は間違い無さそうだ。いつ会敵してもいい様に、戦闘体制は解くな。」


 「正面より、再び飛行物体が接近!」


 再度、見張りからの声が上がる。

「今度は何だ!?」

「見張り員、数は!?」

「数は、32!先程の飛行物体とは、明らかに違います!矢の様な細長い形状の模様!」

 更なる未知の飛行物体の接近に、恐怖が蔓延し始める。

「オイ、君達の話には無かった敵だが、どう言う事なんだ?」

 堪らず、ボルドーは一番の情報源へ訪ねる。

「わ、我々にも分かりません。奴等の戦力は、全金属性の艦体に巨大な魔導砲を一門装備した大型軍艦しか・・・」

「ええい、一体どうなっているのだ!?」

 訳の分からない事象の連続に混乱し始めた所で、報告を受けた飛行物体らしき轟音が響き渡る。

 しかし先程とは違い、何処にいるのかが分からない。

 見張りへ位置を聞こうとした時、その見張りが叫んだ。

「飛行物体、真っ直ぐ此方へ向かって来ます!体当たりするつもりです!」

「何だと!?」

 一言発するのが限界であった。



 ドォン ドォン ドドドドォォォン ドォン ドドォン



 対応する間も無く、32発の矢は32隻の戦列艦を道連れに巨大な火柱を上げた。

 誰もが、口を開いたまま動けない。

 古代遺跡を解析し、セイキュリー大陸の持てる技術を結集して建造された戦列艦が、たったの一撃で爆沈してしまったのである。

「なん・・・なんだよ、これは・・・」

 理不尽すら感じる圧倒的な暴威を目の当たりにし、全員が立ち尽くす。

「どう、してだ?邪教徒共は、神罰を恐れて攻撃して来ないんじゃ無かったのか?」

「そうだ。だからこそ、俺達は大陸の惨状に目を背けてまで此処に来たんだ。」

「どうなってるんだよ!?答えろよ!」

 乗員の視線は、無根拠な楽観論の元凶であるジャックとテリーへ向けられる。

 だが、詰問された所で何か言える筈も無い。

「何で何も答えない!?何で黙ってるんだ!?」

「まさか、お前等が敵と通じてるのか!?」

「そんな・・・俺達は騙されてたのか!?」

「何て奴等だ!この背教者め!」

 正常な判断力など元から無く、更に冷静さまで失った彼等は、無根拠な願望を持ち込んだ二人を捌け口に定めた。

「火あぶりにしてしまえ!」

「いや、今すぐに海に叩き落せ!」

「俺が、この手で切り裂いてやる!」

 二人は、突然巻き起こった理不尽で理解不能な罵倒を前に、ただただ震え上がる事しか出来なかった。

 そして、罵倒に飽きた乗員が手を掛けようと二人へ近付く。


 「いい加減にせんか!!」


 突如、ボルドーの怒鳴り声が響き渡り、乗員がビクリと体を震わせる。

「背教者は貴様等だ!ハルーラ神の名の元に、懸命に腕を磨き、戦場へと舞い戻って来た戦士に対し罵声を浴びせるとは何事だ!?」

 ボルドーは、命を懸けて職務を全うする者達に対し、並々ならぬ敬意を抱いている。

 それは、一般兵であっても例外では無く、ネルウィー公国を相手に戦っている聖教軍に対しても同様である。

 特に、新兵が初参戦した後にショックでまともに喋れない程に衰弱している光景を何度も見て来た事で、再度戦場へと立ち向かって行く者達に対する敬意は、殊更に強いものがあった。

 その様な戦士に対する罵詈雑言は、ボルドーにとって我慢ならないものなのである。

「ハルーラ神に仕える者共が何てザマだ!刃を向けるべき敵の区別もつかんのか!?」

「しかし、そうで無ければ先程の被害の説明が付きません!」

「貴様等は、何処まで愚かなのだ!?ハルーラ神の加護を受けし者が、あの悪魔の力を味方へ向ける事などあるものか!」

 「暁帝国は、強大な悪魔へ魂を売った」と言うのが、教皇庁の公式見解である。

 その為、暁帝国との戦いは「愚かにもハルーラ様へ挑戦する悪魔を駆逐する」為の戦いでもある。

 暁帝国へと立ち向かう目的を忘れ、味方を敵となじる部下のあまりの多さに、ボルドーの怒りは嘆きへと変わる。

「邪教徒共を目前にして何たるザマだ・・・!」

 それ以上は何も言わなかった。

 いつまでもその様な事で時間を浪費している訳には行かないからである。

 ボルドーの意識は、先程の謎の攻撃へと移る。

(飛んで来た方角からして、先程の攻撃は暁帝国の物と見て間違い無かろう。しかし、奴等は何をしたのだ?)

 不穏な空気を纏ったまま、艦隊は更に東へと向かう。




 ・・・ ・・・ ・・・




 大陸統合軍艦隊



『此方イーグルチーム、攻撃成功。敵艦32隻を撃沈した。』

 艦隊旗艦<ベルモーク>では、幕僚が眉間に皺を寄せていた。

「これで、我が艦隊の被害は少しは減るでしょうね。」

「少しはな・・・」

 この攻撃により、確かに敵艦隊は数を減らした。

 だが、その物量は圧倒的である。

 現在、この海域の艦隊を集めて西へと向かっているが、その内訳は装甲コルベット艦27隻である。

 ハレル教圏の戦列艦よりも遥かに打たれ強く、武装も強力であり、足も速い。

 だが、暁帝国艦隊の様に百発百中の命中精度も無ければ、センテル艦隊の様に一方的にアウトレンジ出来る訳でも無い。

 今回対峙する敵の物量は、性能面でリードしている此方を巻き返す事が出来る程のものなのである。

 いくら近代技術を会得しようとも、それだけで自惚れる程彼等は愚かでは無かった。

 だからこそ、敵を目指しつつ待っている者がいる。

『9時の方角より、巡視船が接近!』

 見張りの声が聞こえ、南を見る。

 すると、しきしまを先頭にした3隻の巡視船がやって来た。

『此方、巡視船しきしま。これより、貴艦隊と行動を共にする。』

「此方ベルモーク、貴艦等を歓迎します。」

 たったの3隻だが、艦隊の士気を上げるには十分過ぎる程の援軍である。

「暁帝国は、我々を見捨てなかった!」

「良かった、これで勝機が見えて来たぞ!」

 治安維持を目的としている巡視船だが、諸外国を基準にすればその武装は極めて強力である。

 特に大陸同盟にとっては、スマレースト紛争の経緯から最も頼りになる船である。

 3隻の巡視船は艦隊正面と側面へ陣取り、最も危険な位置を守る。



 巡視船 しきしま



「艦隊運動は、及第点をやれそうだな。中々やるじゃ無いか。」

 船長は、大陸統合軍艦隊を見ながら呟く。

 ハッキリ言ってしまえば、今回の艦隊は寄せ集めである。

 更に、近代艦が就役を始めてからそれ程時間も経っていない。

 随分な無茶であるが、船長が及第点を付ける程度には上手く航行出来ていた。

「艦隊行動だけ出来ても、何の意味も無いでしょうね。」

 相変わらず真剣な副長は、淡々と述べる。

「それはそうだが、何も出来ない事は無いだろう。敵よりも優速で頑丈で、おまけに射程も長いんだからな。」

「その前に、味方艦同士で衝突する未来が見えますよ。前にあった船団みたいに。」

「流石に、素人の寄せ集めと比べるのはどうかと思うぞ。濃霧で見通しが極端に悪いとかならともかく、何も無い海域でそう簡単に衝突する事は無いと見てもいいだろう。」

「索敵手段が目視に限られると言うのは、何とも嫌なものですね。」

「・・・そうだな。」

 船長としては、やたらと真剣な今の副長こそが不気味で嫌であった。

『海軍の第二十戦隊より入電!間も無く、合流するとの事!』

 この報せは、統合軍艦隊の士気を更に上げる事となった。



 ハレル教圏艦隊



 第二十戦隊が合流して間も無く、両艦隊は目視可能な程にまで接近していた。

「敵艦隊、約19キロ!鉄に覆われています!数、34!」

「は・・・!?」

 見張りからの報告を聞いたボルドーは、素っ頓狂な声を上げる。

「奴等、何処まで・・・!」

 近付いてくる敵艦隊を睨み、恨みがましい声を上げる。

 「船とは、木で出来ている。」と言う固定観念に囚われ、更に悪魔に魂を売ったとされる敵が常識外の戦力を有しているのである。

 敵の理解の及ばない物体=悪の産物 と言う方程式が脳内で成り立ち、憎悪を募らせる。

「待て、この距離であのサイズだと?」

 少し眺めていると、敵艦のサイズに違和感を覚える。

「て、敵艦、200メートルに迫る巨艦を確認出来ます!」

 見張りから、驚き交じりの報告が入る。

「ボ、ボルドー様・・・」

 乗員達は、その多くが委縮していた。

(チッ、腰抜け共が!)

 内心舌打ちをすると、声を上げる。

「皆の物、貴様等は何の為に此処へ来た!?悪魔と手を結び、ハルーラ神と我等に挑戦を続ける邪教徒を打倒する為だ!我等は、ハルーラ神のお導きにより、一番槍と言う栄誉を授かった!今こそ、信徒としての模範を示す時である!」

 高らかに宣言するボルドーであったが、反応は鈍い。

(クソッ、この土壇場で団結を乱すとは・・・!)

 先のミサイル攻撃の衝撃から立ち直れていない彼等は、正義や模範など御構い無しに一刻も早く逃げ出したい気持ちに駆られていた。

「我々は、ハルーラ様の僕として、身命を賭して敵に立ち向かいます!」

 声を上げたのは、ジャックである。

「誰が何と言おうと、我々は忠実なハレル教徒であります!いざとなれば、この命を投げ出す覚悟です!」

 テリーも続く。

(こいつ等、マジか!?)

 多くの者が、この決意表明に驚愕する。

 その覚悟の篭った目を見ては、嘘偽りがあるとは口が裂けても言えなかった。

(チッ、あいつらがやると言ってるってのに、こっちがやらん訳には行かねえじゃねえかよ!)

 散々罵声を飛ばしていた相手に真っ先に決意表明をされて引き下がる程、プライドを捨てている者はこの中にはいない。

「待てよ、お前等にばかりいい格好させて堪るか。俺達も行こうじゃ無いか。」

「え?」

「そうだそうだ。お前等だけに手柄を独り占めされて堪るかってんだ。」

 口々に嫉妬とも称賛ともつかない言葉を口にされ、渦中の二人は戸惑う。

「と言うか、よく見ればあの巨大艦も大した事は無さそうだぞ。」

「どう言う事だ?」

「見ろよ。魔導砲が甲板に一門しか無い。かなりデカいから威力はありそうだが、そう簡単に当たらない事は分かってるだろう?」

「い、言われてみればそうだ。俺達は、何に対してビビッてたんだ!?」

 冷静さを取り戻し始めた者達は、口々に自軍がどれ程有利な状況にあるかを語り、余裕を取り戻して行った。

(団結を乱す原因となった者が、皆を繋ぎ止めるか・・・)

 その様子を眺めるボルドーは、自然と笑みを零していた。

「腹は決まった様だな。皆の者、恐れる事は無い!あの様な小勢など、すぐに叩き潰して島を奪還するぞ!」


 「「「「「オォォォォォーーー!!」」」」」


 勇ましい雄叫びを上げつつ、艦隊は更に接近する。



 大陸統合軍艦隊



『敵艦隊との距離、15キロ』

 ハレル教圏艦隊が士気を持ち直した頃、巡視船と海防艦は砲撃を開始しようとしていた。

『敵艦の割り振り完了』

『全艦、攻撃準備完了』

『撃ち方始め』



 ドン… ドン… ドン… ドン…



 砲撃から数拍置き、敵艦へと着弾する。

「直に見ても、信じられんな・・・」

「本当に恐ろしい威力と精度だ。」

 ベルモークの甲板から砲撃の様子を眺める幕僚は、当たり前の様に百発百中で砲弾を叩き込んで行く光景に、恐怖を覚える。



 ハレル教圏艦隊



 此方は、先程の威勢は何処へやら、沈黙したままであった。

 冷静さを取り戻した彼等は、口々に敵を嘲った。

 「殆ど当たらない砲を一門しか積まないなど、愚か者だ」「悪魔の影響で、知能が下がったらしい」「道具の使い方一つ理解出来ない邪教徒共」・・・

 だが、現実は真逆であった。

 狙って当てる事が出来るのなら、砲は一門で事足りる。

 仮に知能が下がっていようとも、挽回する方法などいくらでもある。

 道具の使い方が分からないのでは無く、新たな使い方を編み出していたに過ぎない。

 艦隊は恐るべき勢いで数を減らしており、敵はまだ遥か彼方である。

「どうしてだ・・・どうして、こんな事が起こり得るんだ!?」

「違う・・・断じて違う!我等は、ハルーラ様の御加護を賜った無敵の軍勢だ!邪教徒如きに敗北するなど有り得ない!」

「落ち着くんだ!これは、ハルーラ様より賜った試練だ!此処で怖気づく者は、背教者だぞ!」

 再度、団結が失われようとする中、ボルドーは至って冷静であった。

「なるほどな。悪魔の力とは、侮り難いものである様だ。だが、此方の切り札に対抗出来るかな?」

「ボルドー様、一体何を?」

「アレを出すぞ。」

「!・・・か、畏まりました!」

 ボルドーの命令による変化は、直ちに察知される事となる。



 大陸統合軍艦隊



「CICへ、魔力反応は変わらずか?」

『変わらず』

「どの艦なんだ?」

 艦隊では、不自然に巨大な魔力を有している艦の見分けが付かず、多少の苛立ちが見られ始めていた。

『ッ!魔力反応、艦隊より突出して来ます!速力、30ノット!』

「何だと!?」

 突然の変化に、大きく動揺する。

『聴音より、異常な泡沫音を探知!数、5!』

「奴等、潜水艦でも持っていたのか!?対潜戦闘!」

 想定外の事態に、艦隊は大わらわとなった。

『対潜ミサイル、発射体制!』

「発射!」



 ドオォォォォォォ・・・・



 五発の対潜ミサイルがVLSより撃ち出され、正体不明の対潜目標へと飛翔する。

 途中、落下傘を開いて着水すると、目標へと一気に距離を詰めた。

『爆発音確認!数、2!』

「躱されただと!?」

 更なる想定外の事態に、更に慌てる。

「焦るな、魚雷を使え!」

 舷側に装備された一式短魚雷が三発射出される。

『弾着、今!』

「どうだ?」

『爆発音、二発のみ!』

「クソッ、第三次攻撃急げ!」

『敵、艦隊直下へ到達、浮上して来ます!」



 ザバァァァァァァァ



「うわあ!」

 艦隊のド真ん中の海面が隆起し、多くの艦が波に煽られる。

「こ、これは・・・!?」

 それは、巨大な海蛇の様な姿をしていた。

「か、海獣だーー!」

 誰かが叫ぶと同時に、海獣は手近な装甲コルベット艦へ体当たりをかました。



 ゴォォォォォォォン



 凄まじい轟音が鳴り響き、攻撃を受けた艦は装甲が大きく凹む。

「クッ、あんな攻撃、そう何発も喰らってられないぞ。反撃せよ!」

 周囲の艦が直ちに反応し、海獣へ照準を合わせる。

 艦隊のド真ん中へ現れた事が幸いし、狙えば当たる程の至近距離である事から、同士討ちの心配は無かった。

「撃てー!」



 ドドドドドドドォォォォォォン



 ハレル教圏の魔導砲を上回る威力を持つ砲撃を一斉に受けた海獣は、全身からおびただしい血を噴き出して海面へとその身を横たえた。

 そして、そのまま海中へと沈んで行った。

「危なかった・・・まさか、海獣を使役するとは・・・」

 技術的に遅れている筈の列強国の底力に、心底畏怖する一同であった。



 ハレル教圏艦隊



「海獣部隊、全滅した模様・・・」

 海獣を使役していた魔導士の声は、力無い物であった。

「そんな・・・そんな馬鹿な・・・」

 決して防ぎようが無い。

 そう思っていたボルドーの自信は、呆気無く崩れ去った。

「敵艦隊、砲撃を再開。」

 海獣へ対処する為に砲撃を一時中断していた艦隊は、再度正確無比に砲弾を叩き込み始めた。

「何て事だ、これ程とは・・・!」

 ボルドーは悔しさで唇を噛み、血が滲む程に拳を握り締める。

 そうしている間にも、味方は次々と沈んで行く。

「すまないな、お前達の敵を討てそうに無い。」

 ボルドーは、ジャックとテリーの元へ行くとそう漏らす。

「いえ、我々はボルドー様の元で戦う事が出来て幸せでした。此処で死のうとも、悔いはありません。」

「そうか・・・では、死にに行こうでは無いか!」

 死地を見付けた彼等は、最後まで退く事は無かった。

 誰もが前を向き、最後まで憎き敵から目を逸らさなかった。

 そして、最後まで残った旗艦がとうとう標的となった。

「勇敢な戦士達よ、よく戦った!」

 ボルドーが叫んだ直後、旗艦は爆沈した。

 ハレル教圏の野心は、艦隊の全滅によっていきなり躓く事となった。



 イーグルの名前をどうしても使いたかったので無理矢理使いましたが、違和感が凄いですね。

 実は、F-15よりもF-14の方が好きです。

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