9話 王への謁見からの推薦
次の日の朝、自分達は王城の前にいた。2人はついて来ることにしたらしい。
「大きいですね・・・」
「初めて来るわ・・・」
「そこまで緊張しなくてもいいと思うぞ?」
ここにいるのは、アレンさん、ミスティアさん、シルエット姉妹と、マティ、ノーマ、自分。ノーマとマティは軽く謁見したら帰るそうだ。
「お待ちしておりました」
中に入ると大量の執事とメイドがいた。
「どうぞ、皆様こちらへ」
通されたのは、謁見の間だった。周りを見れば騎士が結構いる。今回の謁見はプライベートらしく、国民には公表しないそうだ。
「今回はご苦労だった」
王様が労いの声をかける。
『ナギサ』
『分かってます、影武者ですね』
サギから声がかかる。サギには昨日のうちに大体のことは話しておいた。
「さて、それでは」
国王が玉座から居なくなる。
「それじゃ」
「また」
マティとノーマが王城から出る。
「そこの騎士さん?そろそろいいですよね」
「バレていたか」
玉座の隣にいた騎士が甲冑を外す。
「それじゃあこれからは、ドラゴン討伐についての話だ」
今ここにいるのは、アレンさん、ミスティアさん、シルエット姉妹と自分、そして数人の騎士だ。
「報酬は何を望む?」
王が声をかける。
「私達はいらない」
アレンさんがそういう。
「私達も」
シルエット姉妹がそういう
「そうか、お主はどうする?」
王が自分に声をかける。
「やはり、冒険者学園への推薦か?」
冒険者学園?初めて聞く単語だ。
「冒険者学園は冒険者学校の課程を終えて、B以上の評価を得た者だけが行ける学園だね」
アレンさんが小声で教えてくれる。
「やはりお二人も行くのですか?」
「えぇ、そうねBランクで行くわ」
『ナギサ』
サギに声をかけられる。
「じゃあ自分の願いは、ドラゴンを倒したという事実を無くして、今学校に広がっている噂で自分を学園に推薦して下さい」
そう答える。
「本当にそれでいいのか?」
「私と王が推薦すればSランクは余裕だよ?」
アレンさんと、王様がそういう
「問題ありません、推薦が必要と言う事は高いランクは何かしらのコネがないといけないんですよね」
「確かにそうだ」
王様が答える。
「自分はシルエットさん達とパーティーを組みますので」
「「え!?」」
2人が驚いた声を上げる。
「いや、でしたか?」
「い、いえ、そんな事はないのですけれど、何で私達と?」
「どこの奴とも分からない奴と組むより、数回その人の戦いを見て、成長させるかいがある人の方が一緒にいて楽しいですから」
「それは、その」
そんな事を話していると。
「ワッハッハッハッハ」
王様が高らかに笑う。
「流石うちの娘が見込んだ男だな、面白い奴だ」
「ありがとうございます」
「その件良し、分かった、お主の言う通りにしよう、だがどう伝えればいいのだ?」
「そうですね、無属性魔法が少しだけ使えて、魔力量だけ多い、筋力バカですかね」
「いいぞ、私もお主を気に入ったからな、もう下がって良いぞ」
「はい」
謁見の間を出る。
「音無さん!」
「何です?」
「本当に良かったの?」
「はい、やりたいこともありますし、ランクが高いと動きづらいですから」
「そういうもの?」
「そういうものです」
「まぁ、それはいいとしても、君たちそろそろ行かないと駄目じゃ無いかい?」
「そうですね、アレンさん後で詳しい事を書いた紙を下さい」
「了解、何かあったら冒険者ギルドでアレンにと言えば繋いで貰える」
「はい、約束守ってくれてありがとうございます」
「じゃあ、また」
そう言ってアレンさん達は去る。
「じゃあ準備しましょうか、と言っても自分の準備するものは無いのですが、お二人共これからよろしくお願いします」
「はい、音無さん」
「そうね、パーティーを組むのだから、よそよそしいのも辞めましょうか、音無、敬語は要らないわ」
「いえ、このままで」
「うーん?・・・わかったわ」
納得してないようだ。
「じゃあまた、港で」
「はい」
二人を見送る、そして少し王城の庭を歩く。
「そろそろ出てきてもいいですよ?」
草むらに声をかける。
「ふむ、やはりバレていましたか」
「まぁ、そうですね、シルエット達のパーティーにいた方」
「そこまでバレていましたか」
少し驚いた顔をしている。
「申し遅れました、国王サカロス・シルバー・オランの娘、フィリア・シルバー・オランと申します」
「これは、ご丁寧にどうも、フィリア様」
「それで今日は聞きたい事があります」
「何でしょうか?」
「どうしてあんな要求をしたのですか?」
「そうですね、やっぱり動きやすいからですね」
「どういう?」
「自分の目的のためには情報が必要です、情報を集めるには伝手が必要です、冒険者の依頼によって伝手を手に入れる必要があるのですが、いきなりAランクましてやSランクになると邪魔をしてくる人物が出てくるでしょう、だから、最初はBランクで探りを入れ、邪魔が入らない様にランクを上げていく、という事です」
「貴方はあの一瞬でそれを考えたのですか?」
「元々伝手は欲しいと思っていましたから」
「何について調べるのですか?」
「しばらくは魔法についてですかね」
「筋力バカだからですか?」
クスリと笑う。
「あながち間違ってませんね」
「そうですか、それじゃあまた」
「はい、次は学園で」
「・・・貴方はどこまで知ってるのですか?」
「会話するだけ知ってます」
「そうですか」
そう言い残してお姫様は去って行く。
「そろそろ港で待っていますかね」
港に向かうとアレンさん達がいた。
「音無、これが詳しい紙」
「ありがとうございます」
「それにしても本当に良かったの?」
「地位に頼るのはあまり得策では無いですから」
「まぁ、落ちこぼれのBだとしても頑張ってね?」
「やっぱりあるんですか」
「まぁ、何かと因縁付けられますから」
「二人と行動するよう心がけます」
「後、頼むことは無い?」
「特に、約束を守ってくれれば」
「音無くん」
ミスティアさんに声をかけられる。
「なんですか?」
「貴方にこの魔法を教えるわ」
「どのような?」
「『思念通話』と『解析』よ」
「いいのですか?それはミスティアの無属性魔法ですよね?」
「問題無いわ貴方なら上手く使ってくれるでしょ?」
「悪用はしません」
「『思念通話』は対象を選びその相手と通話出来るわ、声に出さなくてもいいわ、最初は触れないと発動出来ないけど、次からはどこまで離れても通話出来るわ」
「ふむ」
「『解析』はまず基準を設定して、それを100として扱い、他の人の実力を見分けられるわ、因みに潜在能力は見抜けないから、それは貴方の眼しだいね」
「誰を基準にすれば?」
「そうね、あの人とか」
ミスティアが指を指したのは警備をしている騎士だった。
「分かりました『解析』」
『騎士』
耐久力・・100
筋力・・・100
敏捷性・・100
魔力・・・100
魔法適正・なし
「出来たわね、それじゃあ他の誰かを見てみて」
「『解析』」
『グウェン・シルエット』
耐久力・・300
筋力・・・75
敏捷性・・250
魔力・・・25000
魔法適正・火、水、雷、光、治癒
「これは中々」
「私見ました?」
「はい、ですが筋力以外全て勝ってますね、魔力は25000ですか」
「へえ、やったわねグウェン」
「どうしてこれでBランクなのですか?」
「うっ・・・私達2人とも本番には弱いのよ・・・」
「ははは、そこも課題ですね『解析』」
『エリーゼ・シルエット』
耐久力・・2500
筋力・・・1000
敏捷性・・1200
魔力・・・2000
魔法適正・無
「エリーゼさんもかなりのものですね」
「ちなみに桁が違い過ぎると実力が見えないわ」
「『解析』」
『ミスティア』
耐久力・・???
筋力・・・???
敏捷性・・???
魔力・・・???
魔法適正・火、水、風、土、雷、光、治癒、無
「確かに『解析』」
『アレン』
耐久力・・???
筋力・・・???
敏捷性・・???
魔力・・・???
魔法適正・火、光、無
「お二人共凄いですね」
「いえ、貴方の方が異常よ」
「『解析』」
『???』
耐久力・・???
筋力・・・???
敏捷性・・???
魔力・・・???
魔法適正・???
「これは・・・」
「魔法適正すら見抜けないのは初めてだわ、貴方なら見えたでしょ?」
「いえ、名前も全て???です」
「名前と魔法適正すら?おかしいわね」
「多分、表示しているステータスは自分のですがサギの事もあるのでしょう」
「『解析』にすら引っ掛からないのなら、貴方は最高の魔力耐性持ちね」
「周りの人達の向上心が無くなりますね」
「そう」
ミスティアさんが悲しそうな顔をする。
「ミスティアさんは自分が話をする度に悲しそうな顔をしますね」
「ごめんなさいただ・・・」
「才能に溺れて死んだ人を見たことがあるからですか?」
「そうね、貴方は大丈夫なんだろうけど」
「大丈夫です自分はもう慢心はしないと決めましたから」
「そろそろ、時間か行かないと」
アレンさんがそういう。
「『思念通話』で寂しい時はいつでも話相手になりますよ?」
「たまには頼らせて貰うよ」
「では」
二人に別れを告げ向かうは魔法王国ミストラル。
「二人とも、頑張りましょう!」
「はい!」
「えぇ」
さて、そろそろ魔法を極めていきますかね。
次から新しい章に入ります