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自称凡人の異世界生活  作者: ナナシさん
一章 水の国オラン
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8話 『自称凡人』の意味

  目が覚める、そこは自分の部屋のベットだった。


「目が覚めた?」


  隣にいたのはアレンさんだった。


「アレンさん、どうなりました?」

「ワイバーン達はあの竜に連れられて居なくなったよ、本当に1人でやるとはね」

「少し無茶しましたけどね」

「数時間寝てたからね、本当は数日は目を覚まさない程の魔力消費だよ、一体何をしたの?」

「操られていた竜の魔法を解除しました」

「君が倒れる程の魔導師ね」

「そうですね」


  コンコン、とノックの音が聞こえる、


「アレンさん、交代の時間です」

「あぁ、入って来てくれ」


  入って来たのは、シルエット姉妹だった。


「音無さん!起きたんですね!」


  抱きつかれる。


「貴方、心配したのよ、いきなり倒れて起きないんだから」


  泣き始める。


「すみません、少し無茶をしました」


  2人の頭を撫でる。


「出てようか?」


  アレンさんがいう


「ミスティアさんを呼んで来て下さい、話したいことがあります」

「分かった」


  アレンさんが部屋からでる。


「音無さん、息もして無かったから死んじゃったかと思いましたよぉ」

「そうよ、アルに聞いても何も言わないんだもの」


  アルに聞いた?まさか。


「アル?」

「ごめんなさい、あまりに2人とも心配するものだから言い出せ無くて」

「2人とも、自分は心音を聞いても生きてるかわかりませんよ?」

「本当に心配したんですからね?」

「私達のために死んだって言ってましたね」

「しょうがないじゃない!」

「マスター2人の様子を録画したので見ます?」

「アル?」


  そんなことを話していると、コンコンとノックの音が聞こえる。


「失礼します」


  来たのはミスティアさんと、アレンさんだった。


「音無くん、あまり女の子を泣かせちゃ駄目よ?」

「すみません」

「それで話って?」

「まず、アレンさんはどこまで知ってますか?」

「サギの所まで」


  まぁ聞いたのだろう。


「それじゃあ少し昔話をしましょう」


  自分は音無ナギサと七音止サギの過去について話始めた。


  ある所に、1人の少年がいました。少年に名前は無く、両親も兄弟も分かりません。そしてある日1人の男に拾われます。


「今日からここがお前の家だ!」


  その男も名前は無く、呼び名は隊長でした。周りを見れば自分と同じような子供が多かった。


「ここにはお前と同じ奴が沢山いる仲良くしてやってくれ」


  男はそういった。隊長達はよく、朝に外へ出かけて夜に食料を買って帰ってくる。少年は、少し気になってある日こっそりついて行った。そこで見た光景は忘れられないものだった。隊長達はある日、人を助けた、ある日、悪者を倒した、ある日、人々の役に立っていた。少年はそんな隊長達を見て、隊長にお願いをした。


「隊長!俺を隊長達について行かせてくれ!」


  たった、6歳の子供がそういった。


「やっても何も見返りはこないぞ?」


  そう、隊長達がいう、だが少年は笑っていう。


「それが、カッコイイんだろ?」

「ははは、確かにそうだな、だがついて来るには最低限のことを覚えて貰わないとな」


  隊長達はそう言って自分の持てる限りの知識、技術を少年に叩き込んだ、武術、家事、読み書き、算数、数学、あらゆるものを教えた。ハッキリ言って少年は天才だった。一週間で教えられた全てを吸収した。


「お前は、天才だな」


  隊長達はいう。少年はとても嬉しかった。だが、少年は慢心しなかった。更にもっと上を目指した。

  9歳になる頃には、少年の知っている人物には負けなかった。だが、ある日事件は起こる。少年が10歳の時だった。少年も背が伸び、年齢に似合わず大人らしくなってきた。

  少年は最近色々な物をつくっている。その日は自立型成長プログラムをつくっていた。今日は朝から隊長達が居なかった。自分を呼ばないということは、ただの買い出しだろう、と少年は考えた。

  たが、それは少年がする初めての間違いだった。その日に自立型成長プログラムを完成させた少年は、試運転の為に隊長達の居場所を探った。隊長達はビルの中にいた。そこまではよかった。武器商人と話をしている可能性があるからだ。だが違った。周りを数百人の人に囲まれていた。少年はそれを見て走り出した。


「無事でいて下さい!」


  少年は走った。ビルを囲んでいる武装した集団を吹き飛ばす。少年を目で追えた者はいない、少年はビルの中に入り隊長達の周りにいた奴らを吹き飛ばした。隊長はそこにいた。だが右腕と左足が無かった。


「隊・・・長?」


  掠れた声しか出なかった。


「あぁ、お前かよくここが分かったな、助かった」


  隊長を仲間達が止血する、幸い隊長以外は誰も何とも無かった。


「悪い、しくじった、見たことねぇ武器商人だと思ったら左足をやられてな、殴ったら死にながら右腕も持っていきやがった」


  隊長はやれやれという感じだった。


「もう喋んな隊長!今助けるからな!」


  自分も止血に加わる。


「おいおい、言葉が崩れてるぞ、それに、もう助からねぇよ」

「わかんねぇだろ!そんなこと!」

「分かるさ、自分の体だからな」


  隊長の言葉を聞きながら止血をする。


「何で止まらねぇんだよ!」


  どれだけ止血しても血が止まらない。


「あいつら、刃に何か塗ってやがった多分それのせいだろう。」

「俺のせいだ、すぐに隊長達に、追いついてついて行けば良かったのに・・・」

「そうでも無いさ、お前もう10歳だろ?剣も拾い物使ってるから、皆で買ってやろうって話になったんだ」

「余計なお世話だ、剣くらい自分で買える」

「そう言うと思って実はもう一つプレゼントがあるんだ」

「なんだよ?」

「お前だけ呼び名がないだろ?だからな、名前を考えたんだよ」

「名前?」

「あぁ、お前いつも静かなくせに、仲間のこととなると容赦ねぇからな、音無ナギサか七音止サギがいいと思ってるんだが」

「相変わらずのネーミングセンスだな、詐欺的な無音に死地の音を止める鷺か」

「よくわかったな!流石だぜ、でどっちがいい?」

「あんたから貰った名前だ、どっちも名乗らせて貰うぜ」

「そうか!それはよかった・・・」


  隊長が安心したように目を閉じる。


「おい!目を閉じんな!開けろ!」

「もう、隊長は・・・」


  仲間の1人が止める。


「隊長はもう・・・」


  隊長は、自分が止血し始めた時にはもう、死んでてもおかしくない量の出血をしていた。最後の方は目も耳も聞こえ無かっただろう。


「何が天才だ!何が最強だ!皆を守るためにつけたこの力は偽物かよ!何が隊長達なら大丈夫だ!本当に俺は、ただの凡人だ・・・」


  そう言うと自分の中にあった何かが、砕けた気がした。


「もう、天才とは名乗らない、俺はただの凡人だ・・・」

 

  少年の目が両目黒から、右目黒、左目青に変わる。


「自分が音無ナギサで」

『俺が七音止サギだ』


「これが、自分とサギの話です」


  異世界と感づかれる部分は少しぼかして伝えた。


「なるほど、君程の奴が何で今まで見つからなかったのか分かったよ」


  1番に発言したのはアレンさんだった。


「そうね、それでその後はどうなったの?」

「仲間を連れてその場を離れました」

「そうか、それで君とサギの違いは?」

「ナギサは、身体能力と感情を失い、サギは言葉と技術を無くしました」

「なに?」

「大丈夫ですよ、ゼロになっただけですから、戻せます」

「いやいや、落ち着き過ぎです!」

「一生無くなるよりマシです」

「そういうもの?」

「そういうものです、それに見返りとして自分は超思考力、サギは超直感を手に入れましたから」

「それは?」

「簡単に言えば自分は時間がいるが確実に、サギは時間は要らないがほぼ確実に先に起こることを予測できます、まぁサギの外れたことないんですけど」

「そうか、で『交代チェンジ』だったかあれの代償は?」

「ありません」

「やっぱりそんなに重いの・・・え!?」

「メリットしかありません、簡単に言うと言葉が喋れないくらいです」

「本当ですか、何で使わないかは愚問か」

「じゃあ何でアルは焦ってたの?」

「最初に使った時、精神が不安定で周りを吹き飛ばしたからですね」

「それは確かに焦ります、それで音無」

「なんですか?」

「いい遅れたけど卒業おめでとう」

「確かにそう言う話でしたね」

「それで今回の件で王城に招待されてるんだが、断ってもいいよ?」

「いえ、折角招待してもらいましたから、行きますよ」

「そう、ならそう伝えおくよ」

「勿論、皆さん行きますよね?」

「そうだな、私たちは元々呼ばれていたから」

「そうなんですか、頑張って下さい」

「え?」

「「え?」」


  自分の後に2人の声が被る。


「何かおかしなこと言った?」

「2人も行くんですよ?」

「「え?」」


  また2人の声が被る。


「ドラゴンの足止めに、自分の救出に看護、招待されますよ?」

「あれは、たまたまそうなっただけで」

「まぁ、嫌ならいいが」

「どうする?お姉ちゃん」

「どうする?グウェン」


  2人があーだこーだ話始める。


「まぁ、終わったら伝えて、私達はマティ達の所に行かないと」

「あぁ、そうですね、サギの事は内密に」

「分かった、誰にも言わない、ミスティア頼む」

「わかった」


  そう言ってアレンさんは出ていく。


「貴方そんな事があったのね」

「はい」

「辛くないの?」

「はい、もう、何とも」

「そう」


  そういうミスティアさんの顔は悲しそうだった。

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