7話 自称凡人或いは・・・
目的の島につく、ぱっと見た感じ、何も異常が無いように見えるが、耳をすませば、極端に動物の声が少ない。
「動物の声があまり、聞こえないですね」
「「え?」」
「そうですね、動物の声があまり聞こえない」
「これは、ワイバーンがいるっていうのは確定だね、ここの島は肉食系は少ないといえど、そこらの魔物に負けるほど弱くはない」
マティとノーマは驚き、アレンさんと、ミスティアは淡々と答える。
「複数体いる可能性も高いですね」
「動物のいなくなるスピードが早すぎるからですね」
「じゃ、作戦通りに行きますよ」
「「はい!」」
マティとノーマのやる気は十分か、後は実戦でどれだけやれるか、かな。
「行くよ、音無」
「はい」
しばらく森を歩いていると、唸り声が聞こえる。
「来るよ」
「はい」
2人でそういった時、目の前に5メートルはあるであろう巨体が降りてきた。色は緑だった。
「あっちもワイバーンに会えたみたいだ、音無、君の実力みせてくれよ?」
「了解です」
ワイバーンの前に立つ。
「ガゴォォォォォ!」
ワイバーンが叫ぶが、意味は無い。
「いつでもどうぞ」
そういうと、ワイバーンが尻尾叩きつけて来る。
「遅いですね」
アレンさんの方がもっとはやい。
ワイバーンが噛み付いてくる。
「動きが読みやす過ぎますね」
ワイバーンの噛み付いて来た顎を殴る。
「ガッ・・・ゴォ」
ワイバーンが音を立てて倒れる。
「音無、やっぱり君すごいね、Sランクはくだらないだろう」
「そこまででもありませんよ、それに」
「終わってない?」
「はい」
そんな話をしていると、山頂の方からワイバーンが5体ほど降りてくる。
「やっぱりまだいますよね」
「何秒でいける?」
「一秒あれば」
「じゃあ、2体頼むよ」
「お安い御用です」
アレンさんと同時に土を蹴る、そしてワイバーン2体の頭に踵落としをいれる。
「ふぅ、こんなものか」
後ろを見るとワイバーンが全部気絶している。
「アレンさんも引っかかりました?」
「まぁね」
「ワイバーンが動物だけ襲って、近くの村は襲わないなんて、おかしいですから」
「・・・気づいた?」
「はい、作戦会議した辺りから」
「はぁ」
「それで、質問なんですけど」
「なに?」
「ドラゴンに上下関係とかあります?」
そういった瞬間。
「ギャオォォォォン!!!」
島全体の空気が震えるほどの声が響いた。
そしてゆっくりと声の主が体を表す。
「あれは古代竜!」
「古代竜?」
「さっきの質問の答えはドラゴンにも上下関係は存在はある、下から翼竜、成竜、老竜、古代竜の順だね」
「つまり、1番上ですか」
「グガァァォァァァ」
『苦しい』
そんな声が聞こえた気がした、それと、どこか既視感がある。
「あの竜、操られていますね」
「やはり」
「やっぱり、そうでしたか、可能性としてはありましたから」
「この際、言うと私達は生物を操る、という人物を追っています」
「ふむ、なるほど」
そんな話をしていると、ドラゴンが向きを変える。
「あっちの方向は、まさか、オランを狙う気ですか!?」
オラン、その言葉を聞いて、心臓がドクンとなった。そして、走りだす。
「音無!どこへ!」
「あの竜を止めます」
「無理です!」
「無理でも足止め位はできます、その間にミスティアさんたちと合流してください」
「・・・分かりました、無理はしないように!」
オランさんの言葉を後に、走る。
「『ヘイスト』」
身体強化の魔法をかけて、走る。
「アル」
「はい!十秒後に、最も近くなります!」
「あの竜の進行上に商船はありますか?」
「はい・・シルエットさんの、依頼の商船が」
「そうですか・・・」
『すまんな、お前に教え切る前にこんなことになっちまって』
脳裏に浮かぶのは、血だらけの隊長、
「次は助けます『風』」
風に体を乗せ飛ぶ、そして尻尾を掴む。
「よし」
背中に移動する。
「操られてるのなら、どこかに何かあるはずです」
そんなことを考えいると、スマホがなる、画面を見れば着信女神とある。
「もしもし?」
「音無さん!音無さんの近くに、神の気配があるんですが!」
神の気配?まさか。
「女神さん、神って生物を操れますか?」
「え、まぁ、はい生物は本能的に神に逆らえませんが、例外もあります」
「いま、神に操られている、竜の上にいるんですが」
「操られている?音無さん、少し目を借りますね」
女神さんがそう言うと、視界が変わり、真っ黒い霧の様なものがみえた。
「これは?」
「神の力を目に見えるようにしています。普通の神なら、もっと澄んだ色をしているのですが・・・」
やっぱりこの感じ、
「思い出した、女神さんを助けた時と同じです」
「私を助けた時?」
「トラックから助けた時のことです」
「知ってたんですか!?」
「はい、話し方が恩人に向けるものだったので可能性としてはあるかと思いまして」
「こほん、それより、同じというのは?」
「感覚的に、同じ感じがします」
「襲われた本人の音無さんが言うなら、そうなんでしょう」
「この竜を元に戻すには、どうすればいいですか?」
「神の力とそのドラゴンを離せれば・・・」
「離せればいいんですね?」
「はい、でもいくら地上にいたとしても神は神です、今の音無さんの魔力量では・・・」
「それは大丈夫ですが、やっぱり見つかりましたか」
数百メートル先に、商船が見える。
~シルエット姉妹視点~
今までは、特に何も無く暇な船旅だった、だが。
「何か飛んでくるぞ!」
船員の1人が叫ぶ、その方向を見ると、赤色の竜がこちらに向かっていた。
「ドラゴン?」
「ドラゴンだ!逃げろ!」
船長が叫ぶがもう遅い、ドラゴンがもう、火の玉を口から吐いている。
「避けろ!」
「無理です!間に合いません」
死を覚悟した。ここで終わるのかと思った。けど、せめて最後の我儘が言えるなら。
「誰か助けて・・・」
そう願った、こんな時、本だと、颯爽と登場して、助けてくれる、騎士様が・・・。
「いるわけ、ないよね」
そう思っていた。
「まだ、諦めるには早いですよ『水壁』」
水の分厚い障壁ができ、竜の火の玉を止める。
そこにいたのは、あまり見ない服、この世界では珍しい、黒髪、黒眼、そして余裕のある表情の音無ナギサだった。
~音無 ナギサ 視点~
「間に合ってよかったです」
「「音無!」」
2人に抱きつかれる。
「ちょっと2人とも!」
「音無さん、凄い怖かったですよぉ」
「全く、どんなタイミングでくるのよぉ」
「2人とも、泣かないで下さい、全員守りますから」
そう言って甲板の上を歩く。
「アル、後は頼みます『交代』」
「マスター!」
目を閉じる、そうすると、意識がきえる。
「今の自分じゃあ力不足です、力を貸して下さい」
目の前にいる自分と同じ姿の人物に声をかける。その人はゆっくり目を開ける。目は青色、その人はこちらを見ると、頷いた。
「すみません、迷惑を掛けます」
その人は首を横に振る。
~???視点~
目を開け、周りを見ると、何処かの船の上だ、2人の少女が後にいる、目の前には、童話で見るドラゴン。
「サギさん、あの竜の体に触って『リリース』といって下さい」
ふむ、なるほど大体分かった。
「ナギサさん?」
あのふたりどうするの?指をさす。
「私をお二人に渡して下さい」
いいの?首を傾げる。
「マスターに、後は頼んだと言われましたから」
~シルエット姉妹視点~
音無さんの様子がおかしい、さっきから喋らなくなった。
そして、こちらに来て、長方形の物体を渡して来た。
「これは?」
「私が説明します」
長方形の物体から声が聞こえる。
「あなたは?」
「アルです、それと一つ訂正があります、あの人物は音無ナギサではありません、七音止サギといって、マスターもとい音無ナギサさんであって音無ナギサさんでは無い人です」
「どういうことですか?」
「体は共有してはいますが、有り体に言えば心が違います」
「心ですか・・・」
確かそんな魔術があった気がする。
「サギさん!こちらに気にせず行って下さい」
~七音止 サギ 視点~
こくりと、頷く。
さてそろそろ、蒸気が消えるな。
「サギさん!」
振り向く。
「あの、あまり無理はしないで下さい」
ふーむ、なるほどな、少し笑って手を振る。あ、赤くなった。
「やっぱりサギさんは分かりましたか」
まぁ、ね、ナギサは分からないだろうけど、さて、行きますか。
甲板を蹴って飛ぶ。
あれ?弱くなってる?
「やっぱり身体能力はサギさんに行ってますか」
「「?」」
2人が首を傾げる。
「こっちの話です」
ドラゴンの背中に乗る。暴れるが意味は無い。
これで、『リリース』と、ナギサこれで、いい?
『ごめんなさい、迷惑をかけました』
いいよ、後で説明してね?
『はい、必ず』
じゃあ『交代』。
「ありがとうございました・・・サ・・ギ・・」
体から力が抜ける。竜から落ちると思ったが竜にくわえられる。
『ありがとうございます、人の子』
「いえ、それほどでも」
『竜の言葉を理解しますか、面白い方ですね、また今度お礼に参ります』
「お気になさらず」
竜が去っていく。
「マスター!」
「音無!」
「音無さん!」
その声を聞いて意識が途切れる。
~???視点~
「音無ナギサさん、流石ですね」
今回のことといい、冒険者を倒した時と言い、流石としか言えない。
「今度、声をかけて見ましょう」
銀髪の少女がそういう。