6話 自称凡人、人の心を知らず
自分の部屋のドアを開ける。中を見ると、ベットに机、といった結構充実した部屋だった。
「おぉ」
「凄いですね」
2人から感嘆の声がでる。
「流石Aランクですね・・・」
「他は違うんですか?」
「はい、Bランクは複数人部屋ですから」
「そうですか、まぁ、どうぞ」
椅子が一つしかないので、ベットに座るように促す。
「じゃあ失礼します」
「失礼するわ」
2人がベットに座り、ギシッとベットが音を立てる。
「2人の卒業依頼はどうなりました?」
「あぁ、それね商船の護衛よ」
「ちなみにどこからの?」
「ここですね」
グウェンが指したのは、ワイバーンの発見された島だった。
「・・・へぇ、同じ場所ですね」
「同じ場所?」
「はい、自分もその島で討伐依頼でして」
「確かに何か魔物がでたと言っていましたね」
「はい、パーティーで」
「パーティー?あぁ、あの2人ね」
「何かあるんですか?」
「あの2人、成績は私たちと変わらないのに、親のコネでAランクになったのよ」
「そのせいで音無さんもヤラセや、親のコネとか、言われていまして・・・」
だから、顔があまり知られてないのか、まぁ、いいのだけれど。
「見てない奴が、嫉妬して言ってるのよ、聞いててイラッとするわ」
「そうですよ、今の1番の噂でも、本当の事比べてかなり低く見積もられてますね」
「どんな感じなんです?」
「身体強化の魔法を使って、相手の油断している所に後ろから不意打ちして勝った、だって、獣族の子を助けたこともなくなってるわ」
「それで、理由もなく不意打ちした卑怯者になってますからね・・・」
「本当に聞いててイラッとするわ」
「もう、直接、言いつけてやりましょうかね?」
2人があれよあれよと話し合っていて、そろそろ止めないと、凄い方向に行きそうだったから、2人の手を取って。
「ひゃっ!」
「音無さん!?」
確か、女の人に誠意を込めて感謝を伝える時はこうするんだったっけ。
「自分のために怒ってくれて、ありがとうございます。ですが、おふたりに迷惑をおかけ出来ませんよ、気持ちだけで充分です」
少し笑ってそういう。
そうすると、2人の顔が真っ赤になる。
「大丈夫ですか?」
「ひゃい」
「だいじょうぶでしゅ」
大丈夫に見えないのだが・・・、スマホの画面を見るとアルも、顔を手で覆って、耳まで真っ赤になっている。
しばらくして。
「ふぅ」
「大丈夫?2人とも」
「はい、かなり落ち着きました」
熱でも出たのかと思って、寝るように言ったら、断られた。何だったんだろうか。
「それじゃ私たちはこれで、明日頑張ってね」
「はい、おふたりもあ、それとグウェンさんが」
「はい?」
「無詠唱と『連続詠唱』は緊急時以外使わない方がいいでしょう、自分は生まれつきということに出来ますが、グウェンさんは違いますからね?」
「はい、分かりました」
2人を見送る、音が聞こえなくなってから、スマホを開く。
「アルどうしました?」
「ふぅ、何がですか?」
「なぜ赤くなるのですか?」
「そうでした、マスターは女の子という生物を知らないんでした」
「?」
「まぁ、あれです、手を取られるのが恥ずかしかったんです」
「それは後で謝らないと」
「いや、謝らない方がいいでしょう」
「そういうものですか?」
「そういうものです」
ふーむ、むずかしいですね。
~シルエット姉妹視点~
部屋についた。そして何も考えずベットに飛び込んだ。
あの、あまり表情の変えない彼が、黒髪で、黒眼で、整った顔の彼が、いつもよりちょっと優しい声で、少し笑って、手を取って、ありがとう、といった。あの声が、あの顔が脳裏に焼き付いて離れない。
「お姉ちゃん」
その声で顔を上げる。妹のグウェンがいた。
「その、寝れないの」
「いいわよ、入って」
グウェンと一緒に寝るのは何年ぶりだろう。そんなことを考えながら、グウェンを抱き寄せる。
「お姉ちゃん」
「なに?」
「音無さんのこと、どう思う?」
ドキッとした。
「どうって?」
「好きか、嫌いかです」
「好きよ」
「私もです」
「いつもは必要なことしか話さないで無表情で、何考えてるか分からないけど」
「周りをちゃんと見て、困った人がいたら助ける、責任は自分で取り、全員を助ける」
「実力もあって、周りに被害も出さずに、相手も殺さない」
「先に1人で行き過ぎず、足踏みをする、それでも足りないなら自分の技を喜んで教える」
「凄いお人好しなのよね」
「ですね」
グウェンと少し話をしてから眠った。
~音無ナギサ視点~
目が覚める、スマホを見れば朝の4時、ベットから起きて、着替える
「トレーニング用の服、鞄に入れていてよかった」
トレーニング用の服を来て軽い筋トレをする。外に出て軽いジョギングをする。
「『水』」
そう唱え、更に。
「『炎』」
そう唱えると温水の完成、頭から被り目を覚ます。ジョギング次いでに買った魔導書が役に立った。しばらく歩くと校庭から剣を振る音が聞こえる。見てみるとそこにいたのはアレンさんだった。
「朝、早いですね」
「音無か、君も早いね、その服は?」
「体を鍛える用の服です」
「ふむ」
「依頼の時はあの服きますよ」
「あの服動きにくくない?」
「まぁ、少しは」
「ちょっと質問なんですが、音無はなんで格闘家を?」
「あぁ、それですか、それは少し齧ってる中で今、格闘をやってるから格闘家と言ったんです」
「じゃあ、剣術も出来るよね?」
「はい、少しは」
「じゃあ」
木剣を手渡される。
「木剣ですか・・・」
「使えない?」
「いえ、アレンさんとやったら砕け散るので」
「ははは、確かに、じゃあ砕け散るまで」
「いいですよ」
剣を握るのも何年ぶりか。
「よし、じゃあ行くぜ!」
アレンさんが強化魔法無しに突っ込んで来る。それでもかなりの速度だ。
「おっと」
受け流したが、かなり重い一撃だ。
「次はこちらからです」
アレンさんに突っ込む。片手で切りかかる。そしてアレンさんが受け流しの体勢に入った所で。剣を離してもう片方の手で取り、切りかかる。
「っ」
アレンさんの反応が少し遅れる。その間に木剣に木剣を叩きつける。衝撃を殺すこと無くぶつかった木剣は砕け散る。
「終わりですね」
「そうだね」
「アレンさん、身体強化の魔法使わないであれですか、凄いですね」
「そんなことないよ、音無、あれはなに、振られていた剣が一瞬止まったよ」
「あれは、剣の持ち手を変えただけですよ」
「持ち手を変えた?どうやって?」
「こうですね」
わかるようにゆっくり見せる。
「これは、自分ほどになると、持ち手を注視してないと見えませんね、まぁ、その隙があったら倒すんですが」
「音無、いつ真剣を握ったの?」
「8歳の時に、握ったのは、5年ぶり位ですが」
「・・・そうか、君がどんな生き方をしてきたのかは知らないけど」
「・・・」
「まぁ、今回の依頼はよろしく頼みます」
「はい」
部屋に戻り、ベットに座る。
「思い出しました?」
アルがそういう。
「・・・少し」
『今日からここがお前の家だ!』
はげた頭の男性が思い浮かぶ。
「自分は、どうすればよかったんでしょうか」
「そんなの、誰にも分かりませんよ」
「いいんです、それが自分の初めての間違いですから、だからもう、間違わないと決めました、隊長達に誓って」
隊長、それが彼の名前だった。
「さて、準備しましょうか」
頬を叩いて、沈んだ気持ちを元に戻す。
「帰ったらアレの準備もしないと」
「はい!その調子ですマスター!」
「ごめんなさい、いつも」
「いえいえ、マスターには、返せない恩がありますから」
「アルはそういう性格でしたね」
出かける準備をする。
学校の制服に着替え、鞄を片手に持つ、
「いきますか」
靴を履き、ドアを開け、校庭に行く、既にアレンさんとミスティアさんは来ていた、今の時刻は6:30、しばらくするとマティとノーマが来る。
「さて、全員来たね、行くよ」
アレンさんの声を聞き、馬車に乗る。道中は特に何もなく港につく。御者はミスティアさんだった。
「そろそろ着くよ」
ミスティアさんの声を聞き、本を閉じる。
船に乗り、目的の島へと行く。
さぁ、ワイバーン狩りの始まりだ。