5話 卒業試験からの異世界の強者
Aクラスの扉を開けると部屋には2人いた、1人は恐らく魔導師、もう一人は剣士、席に座り先生を待つ、暇なので買ったもう一つの本を読む。
「『無属性とは』ですか・・・」
小さく呟く。
無属性魔法とは、魔方陣を使わず魔法名を口にするだけで発動する。無属性魔法の使い手は多いが、同じ魔法を使える者はいない、効果が近い魔法は存在する、ここでは、有名な物を紹介する。
『コピー、対象を複製する』
『テレポート、自身と自身が間接的に触れている物を思い描いた場所に転移させる』
『ロックオン、対象選択し魔法を行使する』
『エンチャント、対象に任意の魔法を付与する』
『リリース、対象を分離する』
『クリエイト、対象の形状を変化させる』
『ヘイスト、対象の行動を早くする』
『フォルム:アニマル、姿を動物に変える』
『コマンド、対象に指定した行動を組み込む』
『フィーリング、五感を強化する』
『ナイトビジョン、暗闇でも明るく見える』
『スティール、対象を手元に寄せる』
『インビジブル、対象を見えなくする』
『トランスファー、魔力を対象に渡す』
『ストレージ、対象を収納する』
「アル、コピーに、リリースですよ」
小さい声で聞く。
「使いませんよね?」
「余程の事が無ければ、取り敢えず何か使えますかね?『フィーリング』」
「どうです?」
「つかえますね・・・」
「もう、驚きませんよ、マスターはそういう人ですから」
「エンチャント、コマンド・・・アル」
「はい?」
「5年前のあれ、ありますか?」
「ありますよ、やっと作るんです?」
「魔法なんていう、チートがありますから」
「あの時は、必要でしたが技術が足りなくて諦めましたよね」
「あの時以外、使う必要がありませんでしたから、ただこの世界だと使うことになるかもしれません」
そんな話をしていると教室の扉が開いた、入ってきたのはヴァルさんだった。
「すまん、予想以上に時間がかかった」
「それで要件は?」
「明日3人で依頼を受けて貰う、それが終わったら卒業だ」
「何もしてないわよ?」
魔導師がそう言う。
「すまんなA級冒険者に教えることはないんだ」
「まぁ分かった、で内容は?」
剣士が言う。
「ワイバーンの討伐だ」
2人が動揺する。
「ワイバーンだって!?A1級の冒険者がパーティーを組んでやっと倒せる相手だぞ!?」
剣士が声を荒らげる。
「そうよ!こんな何処の誰とも分からない奴と組んで倒せる相手じゃないわ!」
「こんな奴とはなんだ!俺はこれでも父様に鍛えて貰ってそこらの奴なら余裕でたおせるぞ!
「私も魔導師の一族の中でも天才と呼ばれてるのよ!そのくらいで威張らないで」」
なるほど、どちらもいい所の出という理由で、まぁ、それなりに実力はあるが、足りない、足りない所は親のコネと、2人は自分の力で合格したと思ってますね。
「まぁまぁ、流石に自己紹介もしていない冒険者をワイバーン狩りには行かせないぜ?入って来てくれ」
ヴァルさんがそう言うと、2人の男女が入ってきた。
「紹介する、Sランク冒険者の2人だ」
「Sランクって、この世界で数人しか居ない人達じゃない・・・」
Sランクはそこまで少ないと、確かにあの2人はかなりの実力がある、男性の方は白髪、蒼眼、1mほどの大剣を背にしている、ぱっと見て、剣士に見えるが、体から漏れでる魔力を見るに、魔法剣士だろう、魔力量はグウェン以上、女性の方は、金髪で右が赤、左が青のオッドアイ、腰にレイピアを下げてはいるが、本当は魔導師だろう、だが、剣の実力も高いと見た。魔力量は言わずもがな。
「アレンですよろしくお願いします」
「ミスティアですよろしくお願いします」
男性がアレンで、女性がミスティアらしい、どちらも15歳くらい。
「マティ・ダウナーです」
「ノーマ・ハリスです」
さっきまで喧嘩していた2人がキリッとする、これがSランクパワーですか。
「音無ナギサです、よろしくお願いします」
ミスティアが、まじまじと自分達3人を眺める。
マティ、ノーマ、自分と来て、不意に視線が止まる。
「アレン、あの子」
隣のアレンをミスティアがつつく。
「あの子がどうした?」
「あの子だけ、霧がかかったみたいに見えないの、それで・・・」
「考えも読めませんか?」
ミスティアの言葉を遮って言う。ミスティアは少し驚いた様子だったが、少し笑って。
「君、面白いね」
「ありがとうございます」
「ミスティアの魔眼でみえない・・・」
「魔眼?」
「あぁ、ここらじゃ珍しいよね、ミスティアは、生まれつき魔眼持ちでね、人の考えが読めるんだ」
「それだけじゃないけど、『アナライズ』って言う、私の無属性魔法もあります」
「ちなみにどのような?」
「相手の魔力をを自分基準で見えます、自分よりこのくらい強い、弱い、ってかんじです」
「なるほど」
「そっちの2人は年齢の割に、魔力量も多い、ただ、実戦経験がたりないね」
「だが、今回は、俺達もワイバーン討伐に入る、死ぬ様なことは無い安心してね」
「「はい!」」
マティとノーマの声が被る。
「じゃあ今から作戦会議をする、取り敢えず座ってね」
作戦会議も・・・何年ぶりかな。
「取り敢えず、皆自分の事を紹介してちょうだい」
「はい、俺はマティ・ダウナーです、剣士やってます」
「私はノーマ・ハリスです、魔導師です、適正は火と水です」
自分の番・・・どう紹介したものか。
「音無ナギサです。格闘家やってます」
真実を教えることもないか。
「アレン、剣士やってるよ」
「ミスティアです。魔導師です、適正は闇以外全てあります」
ほぉ、それは・・・。
「闇以外全部!?」
まぁ、驚きますよね。
「音無、君、武器はないの?」
「持ってませんから」
「まぁ、いいけど君どうやって過ごして来たの?2人とも、音無の実技みた?」
2人は首をふる。
「え、まぁいいかな、ちなみに音無、君の戦闘力が1番分からないからね」
はぁ、とアレンがため息をつくそして剣を構えて突っ込んで来る。
~ノーマ、マティ視点~
アレンさんがため息をついたと思ったら、視界から消えた。
探していたら、後ろから声が聞こえた。
「何故避けなかった?」
「止めると分かっていましたから」
あの、音無とか言うやつのにアレンさんが、剣を向けていた。
~アレン視点~
音無ナギサ、面白い少年、こっちが突っ込んでも微動だにしなかった、これだけだとまだ、弱いのかもしれないけど。
~ナギサ視点~
アレンさん、剣術はかなりのものだ、しかも魔法も使っていない、それと、あのミスティアさんも入ってこの人の本気となる。
この世界だとかなり上位の力量だろう。
「アレンさん、そろそろ話を・・・ミスティアさんの視線が痛いです」
「あぁ、すまん」
「アレン、いきなり、実力を計らないで」
「ごめん、気をつける」
「ごめんなさい音無君、アレンはこんな性格だから、後でキツく言っとくね」
「いえいえ、大丈夫です、試されるのはよくある事ですから、慣れてます、それに、自分は凡人ですから、試されるのは嬉しいことです」
「凡人、貴方のそれがなにを指すのかは聞きません、アレン説明して」
「うん、それで今回ワイバーンが出た場所だけど、ここ」
「青い場所がオラン、赤い場所がワイバーンが見つかった場所、明日には、船でこの島に移動する。混乱を避けるために、オランの人達にはまだ言っていないよ」
なるほどな、話が見えてきた。
「本当は、アレンさん達が秘密裏にやることだったが、丁度良いから、自分達の卒業試験をみてくれと」
アレンさんは少し気まずそうに。
「君にはやっぱりバレた、何処からそんな発想がでるのやら」
「まぁ、アレンさんたちにメリットがないですからね、まぁ、お人好しのアレンさん達なら、あるかと思いましたが、オランの人たちに、話していない事、場所で確信しました」
「まぁ、そうだね、けど、君達を見て少しやる気が出たのは本当だしね」
「ありがとうございます、それで?」
「取り敢えず今確認出来たワイバーンの数は1体、だけと私は、後、数体はいると思う」
「何か、心当たりが?」
「まぁ、確信はないから話せないけど」
「まぁ、大体読めましたが・・・」
「それで、ワイバーンが1体の場合、マティとノーマに相手をしてもらう、音無はサポート」
「え!できませんよ!」
「そうです、無理ですよ」
2人がそう答える。
「大丈夫、私達もサポートする、それに危なくなったら私が入る」
「それで、複数体の場合は?」
「ミスティアとマティ、ノーマ、俺と音無で分かれる、君達は、1体倒したら良い、私達で後は倒す」
「ふむ、分かりました、いい作戦です」
「貴方、本当に言ってるの?」
ノーマがそういう。
「はい、ワイバーンがどんなのか知りませんが、アレンさんたちなら、おそらく一撃で落とせますから、それに実戦経験としてはかなりいい方です」
「へぇ、ワイバーンも見たことないのにどうしてそう思う?」
「自己紹介してくれればわかりますよ」
「はは、そこまで見破っている?」
「作戦はこれで、いいですか?」
「あまり決めすぎると動きにくくなるからね」
「それでは、また明日」
「朝校庭に集合ね、寮があるからそこで泊まるといいよ」
アレンさんの言葉を聞きながら寮を目指す、途中で他のランクの教室の前を通るが、冒険者の基本や、明日の依頼に向けての作戦会議などをしていた。Bランクのクラスの前を通るとドアが開く。
「ふわぁー疲れた、作戦会議なんて軽くでいいのよ」
「お姉ちゃん、そんなこといわないで、ね?」
「分かってるわよ」
出てきたのはシルエット姉妹だった。
「シルエットさん」
「「あ、音無」」
2人の声が重なる。
「覚えてましたか」
「忘れ無いわよ、B級の冒険者パーティーを瞬殺って、凄い噂よ」
「そんなことになってたんですね」
シルエット姉妹と話をしていると。「シルエットさんが男の人と話してる!」「彼氏かな?」「チッ!」などと聞こえてきた。
「何か、色々と言われてますね。」
「そうね、良く聞こえないけどね」
「彼氏かな?とか言っていますね」
「「かっ、彼氏!?」」
2人が顔を赤くする。
「どうかしました?」
「「何でもないわよ(です)!」」
「それにしても、噂されてる割には、顔が知られてませんね」
「それは、あの時、音無さんがベストを着てたのと、速すぎて顔が見えませんでしたから」
そういうものか。
「立ち話も何ですし自分の部屋に来ます?」
「そうね」
「そうしましょう」
そうして2人を連れて自分の部屋に向かった、「部屋に連れ込むのか」とか、舌打ちが聞こえた気がするが気にしない。