3話 異世界で初遭遇
しばらく、馬車に揺られていると。
「そろそろ、街につきますよ」
と、グリードさんに声をかけられた。
街を見ればさすが水の国というだけあって街の至る所に水路があり、船も見かける、遠くに見える港も商船、輸送船がみえた。
「おぉ、凄いですね」
思わず感嘆の声が出た。
「はい、この街オランは、この国に存在する唯一の街で、主に漁業で生計をたてています」
「だから、冒険者の依頼も海の魔物が多いんです」
「ふむ、なるほど」
「それで、皆さん、お時間があれば私の屋敷に来ませんか?」
グリードさんの屋敷ですか、自分は特にやることありませんから。
「いいですよ」
「私達も大丈夫よ」
「それは、よかった、では行きましょうか」
グリードさんに連れられた場所は、かなりの豪邸だった。
「凄い広いですね・・・」
グウェンが呟く。
「流石グリード商会の会長ですね・・・」
「いえいえ、私はまだまだですよ」
グリードさんと話していると。
「会長、お帰りになりましたか」
現れたのは年齢にして50歳ほどの老人だった。
「魔物に襲われたと聞いたときは生きた心地がしませんでしたよ」
「心配をかけました、それでこの方達が私を助けてくれた人達です」
「それはそれは」
「クリス、準備してくれ、私は客室に皆様を通す」
「承知しました」
この執事の名前はクリスというらしい、グリードさんについていき客間に通され、紅茶をだされた、しばらく待つとクリスが3つの袋を持ってくる。
「皆さん、今回は助けてくれて本当にありがとうございました、お礼といっては何ですが、報酬を用意しました、受け取って下さい」
そういって渡された袋には金貨10枚が入っていた。
「金貨10枚も!?流石にもらい過ぎですよ!?」
グウェンの話によるとこの世界の貨幣は銅貨、銀貨、金貨、白銀貨、白金貨、があって、それぞれ100枚で次の貨幣1枚、普通の宿に1日止まるのにだいたい銀貨5枚、つまり200日はそれなりの宿に泊まれるということだった。
「ここまでの量の訳を聞いても?」
「はい、それは、まず初のオラン支店の存続の危険の排除、私自身の護衛、そして、これからも御贔屓にという感じですね」
「じゃあこれはありがたく頂戴します」
「はい」
「そういうことなら、私達も」
「ありがとうございます」
「それでは、グリードさん、また今度」
「次は襲われないように来て下さいね?」
「はは、そうします」
「では、機会があればまた」
自分はそういってグリード邸を後にした。
「さて、これからどうしましょうか」
お金はもらったので、向こうの大陸には渡れる、だが、渡る理由は今の所なし。
「うーむ」
「どうしたの?」
考えていると、シルエット姉妹に声をかけられた。
「いえ、これからどうしようかと思いまして」
「故郷には戻らないの?」
「はい、元々旅に出た身ですので」
「そう、なら貴方冒険者にならない?」
「お姉ちゃん!?」
ふむ、冒険者ですか、悪くはありませんね。
「いいですよ」
「無理しなくていいんですよ?」
「大丈夫です」
「オッケー、なら学校にいきましょ、ちょうど試験の日だし」
「学校?冒険者の学校があるんですか?」
「そう、正確にいえば冒険者の素質の見極めをする場所ね、元々冒険者には資格なんてほぼ要らないけどね」
「冒険者には、それぞれランクがあって、下からE、D、C、B、A、SがあってEが完全なる初心者で、DからD3、D2、D1のように別れます。入学試験でランクが決まり、一週間の授業で3、2、1が決まります」
「試験内容は?」
「簡単な体力、魔力測定、実戦の3つですね」
「魔力とは?」
「自分にどれだけ魔力があるかですね」
「なるほど、ありがとうございます」
「それで、受けるの?」
「はい、受けますよ」
「貴方ならBは行けそうね、因みに私達はBよ」
「今、何日目ですか?」
「6日目ね、明日クエストを受けて卒業よ」
「卒業と言っても、学園に行くと言う手もありますね」
「それは、それは、シルエットさん達はどうするのですか?」
「私達は見学してるわ」
「分かりました、頑張ります」
そして、冒険者の学校へ向かう途中、古本屋にあった本を2つ買う、古本1冊銀貨5枚、銅貨1枚10円としたら5000円、1冊はおおよそ童話のようなタイトルだ、厚さもあまりない事からやはり、紙はそれなりに貴重なようだ。
「それ、どうするの?」
「暇な時に読もうと思いまして」
「音無さんそんな趣味あったんですね」
「はい、中身は読んでのお楽しみです、本はいいですよ」
『祝福オフ』と心の中で呟き、一ページめくって見ると、見た事の無い文字の羅列だった。
「30分位ですかね」
「何がですか?」
「この本を読み終えるのにかかる時間です」
「見た感じ英雄譚ぽいですね」
「あとは、試験が終わってからです」
そして冒険者の学校へ向かった。
「ようこそ、冒険者の学校へ、どんなご用ですか?」
受け付けの人が話しかけてくる。
「入学試験を受けに」
「はい、こちらに名前と、年齢を書いて下さい、受験費は銀貨1枚です」
「はい」
音無ナギサっと。
「はい、音無ナギサ様ですね」
よかった書けたみたいだ。さっき本を買っておいてよかった。
「それでは校庭に移動して下さい」
受け付けの人の指示に従って移動すると、他の受験者がいた、校舎を見るとシルエット姉妹もいた、あ、手ふってる。
「お前が音無だな」
そう話しかけてきたのは身長190位の男性。
「俺は、ヴァル・オーダムここの教師で試験官をしてる」
「宜しくお願いしますヴァルさん」
「ん~、ヴァルさんかお前はちゃんとしてるなぁ」
「ヴァル、何をしているのですか」
「おっと、すまねぇ」
ヴァルを呼んだのはメガネをかけた女性。
「私はジュディス・バルフォワです、貴方が音無ですね?そろそろ試験を始めます」
「はい」
ぱっと見た感じ受験者は40人位、この人数から何人か落とされるのだろうか。
「これから、試験を始める、まず体力だ、これを付けて学校の周りを走って貰う」
持った感じ50kgくらいだった、学校の外周は1周1キロちょい。
「これ着て5周だ、時間はあるから、ゆっくり走れ、術者は無理するなよー」
5キロと半分くらいかまぁ時間あるなら軽く走ろう。
「お、音無、お前が1番か、早いな」
「まぁ、軽く走りましたけどね」
「軽くで30分で走る奴がいるか」
「そこらあるいても?」
「あぁいいぞ」
そして自分はシルエット姉妹の所にいった。
「音無、貴方早いわね」
「まぁ、ね」
「お姉ちゃんはだいたい40分位でしたよね?」
「そうね」
「少し質問なんですがあの、受験者の中のあの頭に耳の生えた子は?」
「獣人族は初めて見る?」
「そうですね」
「獣人族は獣王国アルペジオに多く住む種族ですね。身体能力や五感が鋭く、昔は魔族として迫害されていた時代もありました」
「ふむ、なるほど」
「どうしてそんなことを?」
「少し気になる事がありまして」
「ふーん」
しばらくして。
「数人脱落したが、大丈夫だな、じゃあ、1列に並んでくれ」
全員がどんどん並んでいく。
「ほら、早くいきなさいよ」
「あぁ、すみません」
エリーゼに言われて並んだがやはり最後尾だった。
「120、340、260、460」
ジュディスさんの声が聞こえる。記録をしているのだろう。
「あれは?」
近くにいたヴァルさんに聞いてみる。
「あれは、魔力量を計る魔道具だ、普通の戦士が100として、新米魔導師が1000、熟練すると5000くらいか、ちなみに俺は、400だぜ」
ヴァルさんが丁寧に教えてくれた。
「そんな物があるんですね」
「まぁな」
ヴァルとしばらく話していると。
「12000」
そう聞こえた。
「12000、大魔道士レベルだぜ・・・」
ヴァルがそう呟く。
「大魔道士・・・凄いですね」
「あぁ、でも確か、お前が、話しかけてた妹の方、あいつもそのくらいだぜ」
「グウェンさんが?」
グウェンの魔力量が大魔道士レベル、凄い人と知りあっていたんですね。
少し待って自分の番がきた。
「そこに手を置いて」
ジュディスがそういう。手を置くと数値がどんどん上がっていく。だが、途中で0になった。
「あれ?止まったわね、壊れたかしら」
ジュディスが魔道具をいじる。
「ごめんなさい、先に行っていいわよ」
言われるままに進む。
「どうだった?」
ヴァルに聞かれる。
「その、壊れたみたいで」
「壊れた?結構長い事使ってるからな、まぁいい実戦をやるか」
ヴァルさんが、ルールを説明していると。
「おいおい、邪魔だよてめぇら」
そう言ってきたのは武装した男5人、全員剣と、鎧を着ている。
「何をしているのですか!試験中ですよ!」
獣人族の女性が声を上げる。
「あ?獣風情がB級冒険者に用か?」
男の1人がそういう。
「ヴァルさんあれは?」
「B級冒険者のパーティーだ、今までなりをひそためてたが、今日卒業だから来たんだろう、下がっていてくれ俺がやる」
なるほどね。
「ヴァルさん、実戦は自分で相手を選べるのですよね?」
「そうだが・・・お前、まさか?」
「まぁ、きちんと試験官して下さい」
自分は、そう言ってB級冒険者と獣人族の女性の所へいく。
「B級だからってなんですか?」
「てめぇ、調子に乗りやがって」
男が手を上げる。
まだ距離がある。
獣人族の子がガードの形に入ったが遅い
「お前ら!」
ヴァルさんが声を上げる、だが止まらない、パシン、と乾いた音が響く、だが、獣人族の子に当たることはない、横から入ってきた手に止められたのだ。
誰も見えていなかった、かなり距離があった、その距離からは届くはずが無かった。
「誰だてめぇ?」
「先輩方、自分の試験の相手になって下さい」
「てめぇふざけんな!」
「獣人族の方、下がっていて下さいね?」
「は、はい!」
「くそが、カッコつけやがっておまえら!」
全員が腰にある剣を抜く、受験者と少なくない見学者がざわつく。
「全員、動かないでいて下さいね?」
静止を促す。
「だが・・・」
「大丈夫ですよ」
相手は5人、剣と鎧を持っている。こっちは、50kgのベストを着ている。
「死んでもしらねぇぞ!」
男の1人がこっちに突っ込んで突きをしてくる。
「はぁ、剣はきちんと手入れしないとダメですよ?」
そう言って腰と肘の裏で剣を止め砕く、そして、頭に回し蹴りをする。
男達が呆然としている間にもう一人の懐に入り、腹の部分を蹴りあげる。そうすると男の体か数メートル後ろに飛ぶ。
更に1人の肩に乗り、足で首をしめ、そのままの体勢で後ろに倒れ、手を地面につき、男の身体を持ち上げ、壁に叩き付ける。
もう一人の後ろに回り、腰に腕を回し、頭を地面に叩き付けるジャーマンスープレックス。
「これで、B級なら拍子抜けですね」
相手の視界からきえ、背中を蹴る、最後の1人が壁に叩きつけられ気絶する。
「ヴァルさん終わりました、全員気絶してるだけです、大した外傷も無いでしょう」
「あ、あぁ」
ヴァルさんが気の抜けた声を出す。最初の奴を倒してからここに来るまで約20秒。
「で、自分のランクは?」
「あぁ、Aだ」
辺りがざわつく、Aか、まぁ良いのでは。
「おぃ、Aなんて何10年ぶりだ?」
「しらねぇよ!」
聞いた感じだとAは珍しいらしい、まぁそうでしょう、Bがあれだとそこまで期待も出来ないかもしれません。
「音無、お前は教室に行け、場所はわかるな?」
「はい」
そうして自分は、校庭を後にした。