24話 魔法について、実証、そして竜の島へ
「貴様!馬鹿にしているのか!」
誰かの怒号が響く。
「発言は質問だけと言ったぞ?」
女王陛下の声が響き、他の魔道士も黙る。
「・・・話を続けます、皆さんが魔法を理解していないというのは本当です、何故なら根本が間違っているからですよ」
「それはどういう事ですか?」
女性の魔道士が声を出す。
「じゃあ、そこの方、今の魔法について見解を簡単にいって下さい」
「は、はい、魔法適性は生まれつき決まっており、後天的に増えるものではない」
「はい、そこまででいいです」
「は、はい」
「まず、魔法適性が生まれつきで後天的に増えることが無いこれは間違いです」
「なんだと?」
「まず、魔法適性は生まれて10年程で確定します、この世界のものほぼ全ては、マナ、いわゆる魔力の素が存在するのはご存知ですよね?」
「常識だ」
「魔法適性はこのマナに触れる量によって確定します」
「どういう事だ?」
「まず人間の魔力の通り道、自分はこれを『魔力回路』と名付けました、人間の魔力回路は最初は何も適性がありません、しかし、両親からの遺伝によって最初から存在する適性もあります」
ここまで質問は無しと。
「人間は10歳までに触れる、火、水、風、土、光、闇、治癒のマナによって適性が確定します、普通に過ごしていたら、4属性が限界でしょう、ただ、マナに自然に触れる以外に適性を増やす方法もあります」
「それは?」
「10歳までに魔法を受ける事です、ですがそれはつまり、10歳にも満たない子供に魔法を撃つという事です」
「だが治癒魔法を受けた子供が治癒魔法を使うという件は少ないぞ?」
「たった数回の魔法で10年もの積み重なるマナに及ぶんですか?」
「確かに、そうだな」
「それにさっきも言った通りに、両親の遺伝によって得意、不得意の適性が存在します」
「なるほどな・・・だが新しく適性が増えるのは?」
「簡単な事です、時間をかけてマナを取り続ければいいんです」
「どのくらいだ?」
「得意なもので、10年ほど」
「そこまでなのか?」
「はい、既に並々に入ったコップに更に水を同じ比率になるように入れるようなものですから」
「ふむ、それでそれがどのように貴殿の魔法に繋がるんだ?」
やっと本題だな。
「はい、詠唱をしても魔法陣が書かれるのはご存知ですよね?」
「はい」
「魔方陣とは、自分の魔力回路の延長線上なんです」
「なんだと?」
「つまり・・・」
「はい、魔法が使えないのは、自分の魔力回路にその属性が存在しないからです」
「他の人物が使えるのは?」
「魔力は質は違えどみんな一緒なんです、つまり魔方陣というコップは違えど中に入れる水は皆さん同じなんですよ」
「そういう事か・・・」
「次に無属性魔法についてですね」
「頼む」
「無属性魔法これは、理解すれば誰でも使えます」
「どういう事だ?」
「さっきも言った通り、魔方陣は適性がある者が書けば誰でも使えます、ただ、無属性魔法は魔方陣が出現しません」
「確かに無属性魔法は詠唱だけだ」
「どうすれば使えるんだ?」
「見ただけでその魔法を理解し魔方陣を思い浮かべるんです」
「どうやって?」
「魔方陣の規則を理解し、魔方陣を頭に思い浮かべるんです」
まぁ、ここは感覚だからなぁ。
「つまり感覚と言うことか?」
「はい、これが個人魔法と言われる由縁です」
「他人が個人魔法を使える理由は?」
「その人と感覚が似ているという事ですね」
「なるほど、だか貴殿の魔法どうして全員に使えるんだ?」
「この魔方陣、1部かけていますよね?」
そういって、その紙を見せる。
「確かに、なのにどうして使えるんだ?」
「この紙は触れた者の魔力回路を読み取り、魔方陣に組み込むんです」
「だがそれでは」
「はい、魔方陣が見えたら使われてしまう可能性があります、ですがさっき魔方陣は見えましたか?」
「いや、見えなかった」
「さっき言い忘れましたが、無属性魔法も魔方陣は存在するんですよ」
「どういう事だ?」
「無属性魔法は魔方陣が存在しない、そう、感じるんです」
「?」
「魔法には全て魔方陣が存在します、しかし、自分では存在を認識出来ないんです」
「だが、魔方陣が存在しても」
「適性がないと使えないと?」
「そうだ」
「無属性魔法というのは、つまり何にも属さない、いや属せないんです、無属性魔法の魔方陣は、魔方陣ではなく自分の魔力回路なんです」
「えっと?」
「人間全ては生まれた時の魔力回路、つまり何にも染まっていない魔力回路があります、これが無属性魔法の魔方陣のもとです、そして、染まっていない魔力回路が多いほど無属性魔法が使える可能性が多いです、これが剣士などに無属性魔法の使い手が多い理由ですね」
「つまり、どういう事だ?」
「何にも染まっていない魔力回路それは、魔力と同じで皆さん同じなんですよ、つまり無属性魔法は誰でも書けて使えるんです」
「なるほど分かった、で剣士などに無属性魔法の使い手が多い理由は?」
「簡単です、剣術などをすると、マナと接触する機会が少なくなります、つまり染まっていない魔力回路が多いんです」
「剣士なのに無属性魔法が使えないのは?」
「魔力回路の量は人によって違いますから」
「それも分かった、ということは、貴殿の魔法は染まっていない魔力回路を使っているのだろう?」
「はい、その通りですが、殆どが染まっていない魔力回路ですが、人によってマナの蓄積値は違い、若干ですが違ってきます、そこで1部だけでも自分の魔力回路をくわえると」
「殆どに魔力が通っても、一部が違うので魔方陣が完成しないと」
「はい、これで誰でも使える、自分しか使えない魔法の完成です」
「しかし読み込むだけならば、読み込んだら誰でも使えるのでは?」
「そこは対策が済んでいます、そこからそこの兵士の方これに手を置いて『我に力を』と」
「「「「「『我に力を』」」」」」
「この最初に触れさせる魔方陣は、この魔方陣を書いた者をマスターとして認識します、それでマスター権限は『オフ』」
「消えた!」
「魔法のオン、オフができます、それと1から3『オン』、このように番号などをつけて出来ますし、第1部隊『オフ』、このように隊管理も出来ます」
「これは、凄い発見だ、だが・・・」
「私達の技術では」
「せめて見本があれば・・・」
ふむ。
「それで今回はこの魔法を見せると同時に、管理を女王陛下に譲ろうかと」
「なんだと!」
「つまりこの魔法を使ってもいいと?」
「はい、その通りです」
「本当にいいのか?これを使わせて」
「はい、ただ、きちんと人を選んでください」
「分かった、じゃあ対価を・・・」
「いりません」
「なんだと?」
「対価はいりません」
周りがざわつく。
「つまり、この国の上位にも入れる対価を蹴ると?」
女王陛下がそういう。
「はい、かわりにお願いが1つ」
「なんだ」
「これを作ったのはミストラルと言うことにして下さい」
更に周りがざわつく。
「つまりそれは、対価も賞賛もいらないと?」
「はい、これを完成に導いたのは自分では無いですから」
「だが、実際に作ったのはお前だ」
「なら、報酬は自分の秘匿でいいです」
「・・・分かった、だが公にはしないがミストラルは、お前達、いや、音無ナギサ達を、全力でバックアップすると誓おう」
「分かりました、ありがとうございます、それとこれがこの汎用魔法の管理案です」
「何から何まで済まないな」
「いえ、それでは」
そういって王城を後にする。
「ごめんなさい、ずっと黙ってもらっていて」
「問題ない、しかし、本当にあの申し出を蹴って良かったのか?」
「自分はこの強さゆえ、1つの国に留まることを良しとしませんから」
「そうか」
「・・・音無のあの理論凄い」
「ははは、まぁ、第三者視点から見たらすぐ出る理論ですから」
「汎用魔法の魔方陣の一部を作る所は音無のスキルじゃないとダメじゃないの?」
「アレは完成した型に、自分の魔方陣を書くだけですから、それに、魔法としては、一部抜けたあの状態でも使えるには使えますよ?」
「・・・ただ、魔方陣がしっかり書かれてないから安定しない」
「そうです、あの部分は本当に識別用ですから」
これでいいだろう、人間同士で戦争しているとはミストラルでは聞いたことはない、王国間でもそんなことは無いらしいから、あるとすれば神聖王国だろう。
「それじゃあ、自分はまだやる事があるので、また、最悪明日に帰って来ます」
「そうなんですか?」
「今度はどこに行くんですか?」
「内緒ですよ、ノア、ジーク、よろしくお願いします、連絡は入れますので」
「・・・任された」
「おう、よしよし、暇なら修行しようか」
「無理はしないで下さいね?」
皆と別れて、1人道を歩く。そして飛んでいる鳥に
『ここら辺で赤い髪の竜を見ませんでした?』
『竜かどうかは知らないけど、本能が危ないって警告してる奴ならいたぜ』
『どこにですか?』
『この道を真っ直ぐ行った所にいるぜ』
『ありがとうございます』
『いいってことよ』
鳥に聞いた道の通りに行くと赤い髪の青年がいた。
「あっ、貴方は」
「どうも、暇が出来たので来ました」
「意外と早かったですね」
「それ竜換算してません?」
「あ、そういえば人は寿命が短いんでしたね」
「それで、まぁ行く決心が出来たので行こうかと」
「そうですか、なら街の外に行きましょうか」
「どのくらいです?」
「1キロ位外だと見つかりませんね」
「それなら『テレポート』」
そう言うと、一瞬で視界が変わり街から1キロほど離れた所に出る。
「『テレポート』ですか、音無殿ってチートです?」
「ただの凡人ですよ」
「それじゃあ竜化するので少し待っていて下さい」
「分かりました」
待っている間に動きやすい普段着に着替える。
「よし、OKです」
そこに居たのは赤い鱗の竜。
「前は龍語しか話せなかったのに」
「私だって『古代竜』ドラゴンです、一日で言語くらい覚えます」
「そうですか」
「背中に乗って下さい、飛ばしますよ」
「はい」
竜の背中に乗って移動とは、まさに異世界だなと思いつつ、乗って竜の王がいる土地へ向かった。
解説が難しい・・・上手く伝わるといいなぁ