不思議なくすり屋さん
今日も私はちょっと不思議なくすり屋さんに行く。
どんなお医者さんも治してくれなかった、痛み止めすら効かなかった頭痛を治してくれる、特別なおくすりを貰いに。
「こんにちは!」
ここには2人のくすり屋さん、薬剤師さんがいる佐田薬局。
「桜ちゃんかぁ〜いらっしゃい〜」
この人は佐田さん。いつも明るくて、どんな患者さんにもフレンドリーな薬剤師。そして愛妻家。
「は〜る〜!桜ちゃん来たよ〜」
ガチャッと扉が開き、「はる」と呼ばれた青年が出てくる。
「これ。はい。」
彼はもう1人のここの薬剤師で、楠木さん。佐田さんと違って無愛想。そして…私の薬を作ってくれている人。
「おい、これ。」
いつものくすりの入った袋を持った手をこちらに伸ばす。
「あ、ありがとうございます」
「こ〜ら、は〜る〜!患者さんには優しく!もっと愛想良くしろ〜」
「……(無視)」
楠木さんは…なんだか不思議な雰囲気を纏ってる。無愛想なせいとかではなくて、なんだか…空気が違う。……美人さん相手だからそう感じるのかな?
「用はすんだろう。もう帰れば。」
冷たい言い方にビクッとしてしまう。
「お前は言い方がキツいんだよ!桜ちゃん、もう暗くなり始める頃だから、真っ暗になる前に帰りな?」
「あ、はい。ありがとうございました。」
「また、薬が無くなる前においでね」
帰り道を歩く途中、毎回考える。何回行ってもあの雰囲気には慣れないな……それに、楠本さん……
ムカつく!あんな態度取らなくてもいいじゃない!他のお客さんには無愛想ながらに普通に接してるの知ってるんだから!感じ悪い!!
……私、嫌われるようなこと、しちゃったのかな……
その頃、佐田薬局では……
「……葉さん」
「わかったわかった。裏で休んでこい」
「……ごめん」
「お前、あの子が来る度に体調崩してるけど、大丈夫か?……あの子、そんなに酷いのか?」
「……来る度に酷くなってる」
「……やっぱり、勇人に頼んだ方がいいんじゃ「それは嫌だ!」
「……」「……」
「……そうだよな。悪かった。奥で休んどけ」
「ああ…」
「……ふぅ」
俺は何をやってるんだろうな…このままはるに無理をさせてていい訳ない。でも…桜ちゃんは……はるじゃないと助けられない。頭痛の原因を自覚していれば、まだ救いはあったんだが……
「俺にチカラがあれば…」
そう言って、考えるのをやめた。〝チカラ〟を気にするなんて…勇人の話を出すなんて……俺は何をやってるんだ。
「うまく…いかないもんだね〜……」