1.「墓泥棒、或いは、テウルギアの支配者」
ゆるゆるとではありますが、随時更新予定。
この作品に登場する、団体・個人・出来事は実在のものと一切関係ありません。
【参考文献・HP一覧】
『ウィッチクラフト 魔女術』 鏡リュウジ著 柏書房 一九九二年
『高等エノク魔術実践教本』 ジェラルド・J・シューラー著 秋端勉監修 国書刊行会 二〇〇四年
『新・民俗学を学ぶ―現代を知るために』 八木透編著 佛教大学 二〇一三年
『図解 近代魔術』 羽仁礼著 新紀元社 二〇〇五年
『図解 魔術の歴史』 草野巧著 新紀元社 二〇一五年
『図説 近代魔術』 吉村正和著 河出書房新社 二〇一三年
『文化人類学のレッスン 増補版』 奥野克己 花渕馨也共編 学陽書房 二〇一二年
『文化人類学を学ぶ人のために』 米山俊直 谷泰編 世界思想社 二〇一一年
『別冊宝島一六三一号 天使・悪魔・妖精イラスト大事典』 蓮見清一創刊 宝島社 二〇〇九年
『魔導具事典』 山北篤監修 新紀元社 二〇〇一年
『魔法事典』 山北篤著 新紀元社 一九九八年
『魔法世界への旅』 天沼春樹 水月ルツ著 東京書籍 二〇〇三年
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)公式HP 「数字で見る難民情勢」
「――――――こ、この墓泥棒がッ!」
ポツリと点った街灯の下に、一人の男が晒されて、スポットライトを浴びる俳優みたいに見えた。僕は怯える男から、数メートルの距離を開けたまま、薄らと濁った夜闇のなかに紛れ込んでいる。
男が繰り返す。
「墓泥棒」。
それは僕がカタコンベを掘り返し、亡者の遺品を攫う、下品で野蛮な盗人だって意味じゃない。たしかに石畳の下には共同墓地がある。カタコンブ・ド・パリ。それも今ではすっかり、遊園墓地といったほうがいい具合に、観光客が訪れるスポットだけれど。
僕はそんな娯楽的な墓とは、まるで関係がない。
「死者を繰る傀儡師だと、何故、何故お前のような奴が――――――……!」
傀儡師。
或は、死霊術師。
その点を言えば、僕は確かに、「墓泥棒」だろう。
僕が地中の柩から攫うとすれば、それは、魂以外にあり得ない。
「ヒッ、来るな、やめてくれ、頼むッ……!」
僕はきっとこの仕事に向いているのだろう。けれど、長く続けるとしたら鋼鉄の意思が必要だ。
最終宣告を下し、それから、小さく囁くように付け足した。
――――――さようなら、どうか、僕の罪を忘れないで。