「僕は眠たそうに目をこすりながら大きなあくびをした」←この文に違和感がありますか?
僕は眠たそうに目をこすりながら大きなあくびをした。
上の文をどう思いますか? おかしいと思いますか、それとも違和感なく読めるでしょうか。
以前からずっと気になっていることがあります。J-POPの有名な曲で、ZONEの「secret bace~君がくれたもの~」という歌をご存知でしょうか。カバーされたりアニメのEDに使われたりしているので、割と幅広い年代の方に馴染みのある歌かと思います。名曲です。
この歌の歌詞で、「僕は○○そうに××ながら」という部分があります(歌詞転載は禁止されているので伏せます)。このエッセイの冒頭の文と同じような形の文です。
私はこの歌を聴く度に、どうしてもこの部分が引っかかってしまうんです。
「僕は」と自分のことを述べているのに、なぜ推量の意味を持つ「そうに」を使うのかと。
「~そうだ」というのは外から見てこうだろうと推し量る時に使うものです。例えば「美味しそうだ」とか「楽しそうだ」などです。
冒頭の文、「僕は眠たそうに」って、自分のことなら眠いか眠くないか分かりますよね。推量するまでもありません。「僕は眠たそうだ」と終止形にしたら、ほぼ100%の人が誤用だと判断するのではないでしょうか。
だからこの歌の歌詞が「○○そうに」となっている理由を考察してみました。
この歌の該当する部分は過去形で語られていることから、「僕」の回想と思われます。ちょっと強引な解釈ですが、今の「僕」が過去の「僕」を別の人物であるかのように客観的に見ていると考えると、「○○そうに」でもおかしくないのかもしれません。
しかしその後に、「本当は嬉しかった」と過去の「僕」の感情を直接的に述べているので、やっぱり違和感が残ります。後ろの部分を「嬉しかったんだと思う」に変えたら整合性がとれそうです。
でもこの「secret bace~君がくれたもの~」は、聴く人がノスタルジックな気持ちになるような、胸を打つ素敵な歌ですよね。感情移入して聴く人も多いでしょう。そこで「僕は○○そうに」なんて言われたら、なんだか臨場感が薄れるというか、すっと距離ができるような感じがしませんか。こういう歌は主観的表現の方が良いと思うんです。
まあ、歌の歌詞ですし文法とか気にするなと言われたらそれまでです。リズムや語感が優先されるのかもしれません。でもあえて添削するなら、「僕は照れくさくなって」に変えたらいいのかな、と。
私はこの歌を聴くたびに頭を悩ませているんですが、そういう声を聞かないのでネットで検索してみると同じ疑問を持った人がいて安心しました。
でも最近、ネットの某掲示板の文章を書く人が集まるスレに「僕は眠たそうに」のような「一人称+~そうに」という文を書いている人がいて、そしてそれを誰も指摘しないという場面に遭遇したんです。
そこである仮説を思い付きました。
もしかして、最近の若者はこういう「一人称+~そうに」という表現に違和感を持たないのでは?
言葉は変化するものですし、そういう可能性はあります。最近の若者の曖昧な表現を好む傾向も関係するかもしれません。
また、「~そうに」の「~」部分の語によっても許容度が変わったりするかもしれません。例えば「僕は眠たそうに~」はおかしいけど「僕は面倒くさそうに~」はOKみたいな。
それからなんとなく私の感覚で言うと、文が長くなって「~そうに」と述部の距離が遠くなると違和感が薄れるような気がします。「僕は眠たそうにあくびをした。」と「僕は眠たそうに目をこすりながら大きなあくびをした。」を比べるとどうでしょう?
ここまで読んでくださった方はこの「一人称+~そうに」に違和感があるかないか、感想などでお聞かせいただけると嬉しいです。
ちなみに冒頭の文、他者の目を意識して「自分眠いんですよアピール」をしているとするなら問題ないと思います。
私は日本語学に関しては専門ではありませんので、間違い等ございましたらご指導のほどよろしくお願いいたします。