Ji-Ju
彼女の長い髪の毛は私の手の中で溶けそうなぐらい柔らかい。それがうらやましくて、私も髪を伸ばし始めた。
ベリーショートだった髪の毛が、ショートになった頃、彼女は私の変化に気付いたようだった。
「ねえ、髪の毛切らないの?」
「うん……だって、部活も引退したし私も女の子っぽくしたいなって思って」
バレーをやっていたせいか、肩幅ががっちりとなり背も男子並みに大きくなってしまった私は、どこかで女になるのを避けていた気がした。
「女の子っぽく、ね」
どこか不満気にそう言って、彼女は私の髪の毛を触り始めた。
「これだとさ、天然パーマになっちゃわない?」
くるくると髪の毛を指で巻きながら、彼女はそう言う。
「……そうだけど、長くすれば重さで落ち着くって聞いたし」
「それまで伸ばす気?」
「うん、勿論……」
「やめなよ」
「でもさ、髪の毛伸ばした方が楽しいし」
「菜々には似合わないって」
「でも、やってみないと」
「ダメ」
「なんでそんなこと言うのよ!」
「だって、にあわな」
「やってみないとわかんないじゃん!」
「……」
「それとも、私みたいながっちりしてる女はこういうのしちゃダメなの!?」
膝に乗せていた鞄が地面に落ちる。
頬を何かが滑っていくのがわかる。
ああ、私今、泣いてるんだ。
「……ごめん」
彼女は私の手に抱きついて、片方の手を頬に伸ばして涙を指で拭った。
「だって……菜々に髪の毛切ってもらうの嫌だったから……」
うつむき、口を尖らせ、それを言うのが恥ずかしかったとでもいうような態度をとっている。
「……そうなの?」
「……うん」
「なんで?」
「だって……」
「私……もっと女の子っぽくなりたいんだ……菜々の隣にいるなら……もっとキレイにならないと……そう思ってるんだ」
私は、彼女の隣にいる為にキレイになりたかっただけなのた。小さくて、お姫様みたいな顔立ちをしていて、何もかもが細い彼女。それの隣にいるのがガサツな私だというのが、嫌だった。
「……そんなことしなくてもいいよ」
「でも」
「いいの!」
彼女は私の露になっている耳をゆっくりと人差し指でなぞる。皺の一つ一つに指を這わせて、最後に一番尖って敏感になっている耳珠に触れると、さらに指をゆっくりとさせて、強く弄り始める。
「……ぁっ」
唇に触れる自分の吐息が、熱い。その熱は、直ぐに体中に回った。
出始めた吐息は止められず、ただ吐くに任せることしか出来ないでいる。
「気持ちいいの?」
「……だっ……ダメ」
「やっぱり耳が弱いのね。ダメよ、髪の毛を伸ばしたら。こうやって耳を弄れなくなるから」
私の口から垂れそうになっている涎を、耳を弄っている指で掬い取って、彼女はそれを指に絡ませてまた耳を愛撫した。
「で、でも……女の……子っぽく」
「こんなかわいい女の子の声を上げちゃうのに、女の子っぽくないなんて……そんなわけないじゃない」
唇を噛み締めてこらえようとしても、自然と口が開いてしまう。
「……んんっ」
「ちゃんと髪の毛切りなさいね」
耳の穴の窪みに指を入れて、彼女はわざと音を立てながらかき回す。
脳みそを直接愛撫されてるような錯覚を覚えながら、私はただ頷く事しか出来なかった。