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なんてことはないただの夢だと考える。結局のところ私が思う一番効果的な処世術だったからだ。事実これまでそういう生き方のお陰でなんとか自分を保てていると思うし、普段から比較的穏やかな性格だと認識されている。
これは夢だ。
考えてみればすぐに確認できる。血の滲むような思いをしてこの学校に入学したのはいつの事だったか考えてみる。今日は何日だろう、今は何時だろう。暑くも感じるし、涼しくも感じるのはこの部屋のせいだろうか。薄暗い教室のなかで立ち尽くし、重くなっているのは空気や時間のみではない。
「―――!」
言いたい事は分かるよ。隠しててごめん。
「―――、―――!」
なんで?
「―――!!!」
窓の形の十字の影が伸びている。教室は先ほどから赤く染めあげられていた。
僕らも。