優しい言葉
智嫁
「智嫁…呼び捨て。
名前…何で?」
蒼希
「生徒手帳に学生証が挟まってた。
苗字で呼ぶのは僕には合わないから
名前で呼ばせてもらうよ。」
智嫁の胸ポケットに入っていた
生徒手帳に挟んでる学生証を見て
名前を知ったと理解は出来た。
勝手な理屈で名前を呼ばれ
一瞬の間を挟み言葉を発した。
蒼希
「今日はここで休んでいいよ。
安心して、ボランティアだと思って。
二日酔い酷くて動けないでしょ?」
優しい声でそう言われた
智嫁は小さい声だったが
「はい」と聞こえる声で呟いた。
蒼希
「今日は話は終わり。
明日、色々聞かせてね。」
蒼希は智嫁に掛ける言葉全てが優しくて
それに安心感が出てきたのか
ゆっくりと瞳を閉じた。
その日は
蒼希が酔い覚ましにスープや
ビタミン剤を飲ませてくれた。
-―――――
AM7時07分
昨日はゆっくりと休ませてくれたから
二日酔いも既に無く、スッキリしていた。
智嫁
『また、隣で寝てる…。』
心の中で思いながらも
ゆっくりと静かに起こさない様に
ベッドから起き上がった。
蒼希
「………。」
蒼希は毎日の香りを感じて
目を覚まして、起き上がった。
そんな気配を感じたのか
背中を向けてキッチンに立っていた
智嫁が蒼希の方に何かを向かってきた。
少し前屈みになり
温かい紅茶の入ったカップを渡すと
蒼希はベッドに座った時に智嫁は言った。
智嫁
「昨日の朝、飲んでるのを思い出して
入れたんですけど…迷惑でしたか?」
蒼希
「…いや、毎日の様に飲んでる。
他に何かしてたの?」
智嫁
「勝手に冷蔵庫とか開けるのは
気が引けて…紅茶を入れただけです。」
紅茶を一口飲むと
「別に気にしないのに…。」
そう呟いた。
智嫁はその言葉に対して
こう言った。
智嫁
「休ませて頂いて図々しいかもですが…。
私は、そこまで勝手は出来ません。
誰もが彼方と同じ考えではありません。」
蒼希はカップを持ったまま
唖然とした顔をした後にフッと
俯きながらだが、軽く笑顔を見せた。
智嫁
「何か…おかしいですか?」
蒼希
「そういう考えもある訳ね。
そう思っただけだよ。
あと、彼方じゃなくて蒼希ね。」
智嫁
『この人と話してると
話題が急に変わるなぁ…。』
こんな事を考えていたら
蒼希が軽く微笑んで智嫁に言った。
蒼希
「そんなに
名前で呼ぶの恥ずかしいの?」
智嫁は
『やっぱり話が散るなぁ』と思って
口を手で押さえて微笑んだ。
蒼希は智嫁を覗き込みながら
「何が可笑しいの?」そんな顔をしていた。
そしたら
今度はいきなりこんな事を言い出した。
蒼希
「冷蔵庫見ていいからさぁ
朝ごはん作ってよ。
一日泊めて、看病したお礼に。」
智嫁は「はい、勿論です」と言うと
キッチンに向かった。