新たな敵
俺は普通の人間が眠るような寝かたはしない。
殺し屋は常日頃、いつどこで戦闘がおこるかわからない。
おっさんには眠るときのコツを幼少期の頃から叩き込まれていた。
おっさんとの特訓はそう簡単に甘いものじゃない。
俺が眠るときにはいつもおっさんがそばにいて、俺が熟睡をし始めるようになったころには、金属バットや竹刀で殴りつけられていた。
今だからこそ特訓の成果は出ている。
3年くらいはこの特訓をし、ようやく取得できた技だ。
人間はどんな拷問や屈辱的なことをされても眠りたいときに寝れないのが一番の苦しみらしい。
当然、敵にとって寝ているときが一番効率がいい。
そこをおっさんはチャンスに変えろといつも言っていた。
寝ている隙を狙った獲物を潰す虎のように。
無論、睡眠薬などには耐えられない。
俺が目指すのは究極の肉体。
この世のどんな敵の攻撃にも耐え、どんな敵も無駄なく殺す。
それにはこういったことも必要だ。
俺は殺し屋。
殺さなければ殺され、生存できない。
俺が目を覚めたのは、夜中。
人の気配がしたので瞬時に体を起こす。
隣に視線を向けると、少女がすやすやと気持ちよさそうに寝ている。
俺「こいつか。敵かと思ったぜ。」
俺の腹には毛布がかけてあった。少女がかけてくれたものであろう。
隣に寝ているのがこの少女だけに俺はいけないことを考えてしまった。
俺「おいおい、なんで変なこと考えてんだよ俺w」
少女はとてつもなくかわいい寝顔を見せていた。
これ以上、迷惑はかけれないな、早くここを出よう。
そう思い、立ち上がった直後。
少し離れたところにある窓ガラスが大いにはじけ飛んだ。
ガラスの破片が少女の顔に直撃しそうになったので俺は即座に手の甲で破片を弾く。
俺「あっぶねえな、おい」
割れた窓の外から男がずかずかと家の中に侵入してくる。入って来たのはざっと五人。
男は俺にきずいたのか俺に話しかけてくる。
男「ん?誰だお前。もしかしたらその娘の彼氏かなんかか?そいつは残念だったな。」
俺「あ?そんなんじゃねえよ。こいつに飯をおごってもらったただの一般人だ。」
男「一般人に飯をおごるわけねえだろ。」
俺「いや、俺がここにいる時点で証明できてんだろ。なんでだ?」
男「見ての通り、俺達は借金取りだ。こいつの家がとんでもない額の借金をしててな、いつになっても返さねえからこっちから出迎えようと思ってだな。親はいねえのか?」
驚いた。この少女は借金まみれの親の娘か。かわいそうなやつだな。
俺「言われるまで強盗かと思ったけどな。不在らしいぞ。」
男「そうか、んじゃあその娘をこっちに渡してくれ。素直にしてれば悪いことはしない。」
俺「なぜそうなるwww」
男「いや、この娘を拉致っとけば交渉材料になるからな。」
俺「なるほど。断る。」
確かに関係はあまりないかもしれない。しかし、ここまでの大事になると放ってはおけない。
男「痛い目にあいたいのか?」
俺と話している男以外の後ろにいる男たちが袋の中から金属バットや鉄の棒を取り出す。
俺「痛い目を見るのはごめんだが、この少女にはあんまり関係ないだろ。少し合理的すぎるんじゃねえか?」
男「関係大ありだ!!!やれ。」
俺と話していた男は他の男に支持を出す。
男2「悪く思うなよ?」
男がそう言った瞬間、俺はその男に顔面パンチを喰らわす。
男2「ぐっっ」
その衝撃飛んだ男は頭を壁にぶつけ、気を失う。
男3「なっっ、なんだこのガキ!!!」
そう言っている間に俺は男との距離を一気に縮め、腹に重い拳をぶつける。
男3「は、早ええ・・・・」
男は血を吐き、前のめりに倒れる。
男4「なめんな!!!」
男5「死ね!!!」
後の二人は一斉に俺に飛びかかる。
わずかな時間差を狙って一人目の首を掴む。
男4「ぐっっ」
もう一人の男は立ち止まる。
男5「て、てめえ!!!離しやがれ!!!」
俺「首の折り方ってのを教えてやろうか?」
折れない程度に力を加え、首を絞める。
男が気を失ったのを確認し、床に放り投げる。
男5「クソが!!!」
男が俺の顔面に蹴りを飛ばそうとした足を腕で受け止め、右の足で男の顔面に蹴りを飛ばした。
男5「がはっっ」
四人を片づけた後、俺と話していた男がしゃべり出す。
俺「そういやあと一人いたか、かかってこいよ。」
指を立てて挑発する。
それにも動じず男は言った。
男「強いな。一般人じゃねえだろお前。」
俺「一般人っていうのは違うかもしれないな。」
男「この強さは異常だな。まさか、お前は一之宮か?」
俺「ご名答。俺のことなんで知ってんだ?」
男「そりゃあ、お前はこういう業界じゃ嫌なくらいに有名だ。俺の仕事は借金取りだけじゃないんでな。俺の組織の人間がお前に何人も殺られたしな。」
俺「そりゃあ、悪かった。殺した人間の数は覚えてないんでな。」
男「なるほど。だが、人間は簡単に死ぬ。お前が簡単に人を殺しているのが物語っている。」
俺「いいからちゃっちゃとかかってこい。依頼じゃねえけどどっかの組織の人間なら殺してやるよ。」
男「せっかちなやつだ。」
そうしていると、携帯電話の着信の音が鳴る。
男「悪いな、失礼。」
男「ん?ああ、わかった。すぐ行く。」
電話を終え、携帯をポケットに入れ、俺の方を向く男。
男「悪いが、今日は引き上げよう。また手合わせ願おう。」
俺「怖気づいたか?まあいつでも殺してやる。」
こんな男など依頼があればすぐに殺せる。
意味のない戦いは避けるか。いい判断だと思った。
男は俺が倒した四人の男を軽々と持ち上げ、最後に俺に言った。
男「お前に俺が殺せたらな。」
そう言って外に出ていった。
俺は見逃さなかった。
俺「な、なんだあの殺気と自信に満ちあふれたような顔立ちは・・・・」
しかし、自宅であってもああいうやつらが強引に押し掛けてくるところからここも危険だ。早くここから移動しよう。
俺は台所に向かい、金目の物と喰い物を探す。
古い年忌の入った、戸棚の引き出しから諭吉さんを数枚とバランス栄養食を見つける。
それをすべてポケットに突っ込み、少女のもとへ戻る。
少女を起こさないようにそっと背中におぶる。
玄関から出て俺は走って少女の家から離れる。
走っているともうひとつの事に気付いた。
俺「こいつ、気失ってやがる・・・・」
・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・






