裏切り
気づけば、俺は小さな部屋の中にいた。
「あ~あ、良く寝たな。」
そのまま立とうとすると、異変に気付いた。
「なんだこりゃ!」
俺の体中が縄で縛られていた。おまけに手首も小さな縄で縛られている。ふて寝状態の体勢。
「クソが!!!なんなんだよ」
大声を出していると扉の奥から一人の男が部屋の中に入ってきた。
見覚えがある。
ああ、思い出した。
間違いなく組織の人間だ。
一緒に依頼をこなしたこともある人間だ。
俺より格段と身長は高く、体格は太り気味だが、力はある。
当然、名前は知らない。
男「よう!!! お目覚めか?」
俺「ああ、目覚めは悪いけどな、この縄はなんだ?俺に欲情でもしたか?」
男「相変わらず、俺にそんな趣味はないんでな。」
俺「冗談だよw冗談w」
男「まあ見ての通りお前はこの状況だ。たとえ、お前がいくら強くても、この状況じゃ、なにもできん。」
俺「かもな、でももしこの縄をぶち切れる力が俺にあるとしたらどうする?」
男「仮にお前がそれ程の力があっても何重にも巻いたこの複雑な縄はほどけないさ」
俺「だな。こりゃ無理だ。」
見たところこの縛り方は普通の縛り方じゃない。
捕縄術かなんかをわかっていないとここまできつく頑丈には縛れない。
俺にとっては捕縄術なんてどうでもいいこと。
俺に与えられる依頼で「捕獲」という分類の仕事は極端に少ない。
あったとしても、俺がターゲットの意識を失わせた後、こいつらみたいなやつらが縛る。
にしてもこりゃどうみてもピンチだな。
俺「俺、お前のことは結構信用してたんだぜ?お前と仕事しててやりやすかったしな。」
男は俺に近づき、俺の腹に思いっきり蹴りをぶつける。
俺「ぐッッ」
昨日はなにものどをとおしていなかったためか、吐かなくてすんだが、重い一撃で思ったよりもダメージを受ける。
男「うそつけ!!!このクソガキが!!!あ~やっぱりむかつくな、お前。いっそのことしゃべれないように舌切ってやろうか?あ?」
男は俺の言葉が妙にむかついたらしく、もう一発腹に蹴りをぶつけてきた。
ドスッッ
またも重い一撃。
男の太い足が蹴りにパワーを付け加えているからこその一撃。
俺「やってみろよ。まあ、出来たらの話だけどな。」
俺は二回目の蹴りが腹に直撃した瞬間から頭に血が上っていた。
男「ほう、ならお望みどおりにしてやるぜ。」
男は近くにあった机の上から果物ナイフのようなものを取り出した。
男「すぐ、切れても面白くねえからよ、ちょっとずつキズを入れてやるよ。な~に心配すんな。お前の拷問はすぐには終わらせねえからな。お前が泣き叫ぶところを見て楽しみてえからなぁ。」
ガハハハハハ!!!と室内に響くドスの聞いた低い声。
男は果物ナイフを右手に持ち、立ち膝になった。
その瞬間、俺は待ってましたとばかりに足を限界まで上に上げて男の左頭のところに蹴りを飛ばす。
男「グハッッ」
男は蹴りの衝撃でナイフを落とし、右に倒れる。
即座にナイフを口でつかみ、男の腹にナイフを刺す。
男「があああああああああああ」
男は痛みで叫ぶ。
だが俺はそれでも容赦しない。
あらかじめ浅くナイフを刺しておいた。デブに重く刃物を刺すと、簡単には抜けなくなるからだ。
ナイフを抜くと男の首をナイフで切り裂く。
血がはじけ飛ぶ。
知っているとは思うが人間の首を切れば一瞬で死に至り、おまけに大量の血がはじけ飛ぶ。
男は当然、死んだ。
俺「余裕だな。」
ナイフをの手持ち部分を男の背中に押し込み手の縄をナイフに上下にゆすり、縄を切っていく。
五分後、すべての縄を切り終えた。
それから、男が入ってきた扉を出て、少し歩くと外の光が見えた。
外に出ると日差しがきつく、風が強かった。
ここはどこだろうか。
周辺には、工場などが密集している。
どうでもいいが俺はおっさんのところへ行きたい。
腹が減った。
あとはおっさんの部下にこんなやつがいたと知らせ、何らかの、報酬をもらうだけ。
俺「俺が相手なのが悪かったな。」
そう言ってその場を後にした俺だった。
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