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第一話 新たな街へ
「あの街が、これから私が過ごす街か・・・」
フリードは、小高い丘から、先に広がる街を見てそうつぶやいた。
街の名はケーニヒブルク。帝国の南端に位置する商業の街だ。南海につながる大河ケナウと東西交易の要となる大陸公路が交わる街。帝都を除けば、この国最大の商都である。
帝都の法学校を卒業してすぐ、フリード・ヴァルデンベルクはこの街の裁判官を任じられた。
若干22歳のフリードにとって、これは異例の抜擢といっても良い。
しかし、帝国有数の都市の裁判官に任じられたという大役に心躍る覇気をフリードは持っていない。
・・・爵位も持たぬ見習い裁判官にいったい何ができるというのか。二日の間、旅をともにした馬車の御者には、フリードの鮮やかな銀髪が、疲れた白髪に見えた。
ともあれ、あと一刻もすれば街に着く。
これは、帝国の法に大きな足跡を残すこととなる、一人の裁判官の物語である。