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バレンタイン小話① 妻と夫のバレンタイン


バレンタインは過ぎてしまいましたが。

お遊びで妄想してみました!


まずは、妻と夫バージョンをどうぞ!



 今日はバレンタイン、というイベントの日なのだそうです。

 好きな男性へ愛情を込めたチョコレートを渡すという、ある意味女性にとっては非常に大胆になってよい日なのだとかで、イベント好きな友人がものすごくやる気になっています。


 でも、私もですが、皆さんチョコレートの作り方を知らないんですよね。これじゃ、愛情を込める以前の問題です。

 と、思ったら、子猫さまが、「教えてあげる!」と勢いよく講師に立候補してくださったので、いつもの女性陣メンバーで、『想いを込めたチョコレートを作ろう!」の会が発足されました!


 普段お菓子を販売しているだけあって、子猫さまのお宅の厨房には、材料、道具ともにそろっていて、私もなんだかテンションが高くなってきてしまいます。


 うちには日常的に使う必要最低限の道具しかありませんからね。今度レインに頼んでもうちょっと装備を充実させたいところです。


「この本の中から、好きなものを選んで作ってね。あ、材料はこっちで用意するから」


 その本の中のお菓子は全部作ったことがあるそうで、どれでも教えてくれるのだとか。

 私と友人は、チョコレートのケーキを作ることにしました。

 女性団員さまは、トリュフという丸いチョコレートを、奥方さまは、生チョコという柔らかいチョコレートを選びました。

 子猫さまはどうするのでしょう?

 

「私? あ、もう作ってあるから」


 そういって、ちらり、と視線が流れた先には、非常に大きな箱、のようなものがありました。

 もしかして、あの箱の中に入れているのでしょうか?

 子猫さまが作ったチョコレート食べてみたかったなぁ。ちょっとだけでもつまみ食い、

・・・したらダメですよね。


「ミリディアが作るものは美味しいけどね。彼女が自分の夫のため作ったものは、絶対に口にしちゃいけないよ」


 私が本気で狙っているのが分かったのか、友人がものすごく真剣な表情で諌めてきました。

 わ、わかってますよ。いくら私だって、他の人のために心を込めてつくったものをつまみ食いしたりしませんとも!

 ・・・ちょっとだけ、でもダメですよね。わかってます、わかってますから、そんなに睨まないでください!


 それから、友人に見張られつつも、どうにかこうにか挌闘に挌闘を重ね、ようやくそれぞれのチョコレートが完成しました!


 うん、久々の会心の作です!


 ただ製作途中で、時々子猫さまがなにかの香辛料を入れたがり、友人が本気でひきつった顔で子猫さまを止めていたのですが、あれはいったいなんだったのでしょうか?

 香辛料を試そうとしたら、友人に怒られてしまったので、最後までどんな味なのかわかりませんでした。

 ・・・ちょっと気になります。


 ちなみに、可愛く飾り付ける方法は私が、綺麗にラッピングする方法は友人が講師を務めました。他の皆さんにも好評でしたよ!


 完成したチョコレートを持って意気揚々と家に帰ってきたのですが。

 お皿にハートの形をしたチョコレートケーキと、砂糖と粉を練って作った赤とピンクのハートの花びらを飾りつけし直している時に、はた、と我に返りました。


 これ、ほとんど勢いで作っていたのですが、あまりにもハート過ぎませんか・・・?

 いえ、気持ちはこもっているのですが、非常に込めてはあるのですが、それだけにこの形はあからさま過ぎるような気が。


 どうしよう。

 渡しにくい、非常に渡しにくいですっ!


 そういえば、友人は普通の丸い型を使っていた気がします。しまった、私もそっちにすればよかったです。


 しばらく悶々と悩んでしまったのですが、ふと、いいことに気が付きました。

 そういえば、旦那さまって、このハートの意味を知らないはずです。

 こちらでは見たことないんですよね、この形。文化が違えば象徴する形も違ってくるものですし。

 じゃあ、ちょっと変わった形だなぁ、くらいの感想で済みそうですね、良かった!


 安心したところで、早速居間でくつろいでいる夫に急襲をかけることにしました。

 お夕飯前ですが、チョコレートが溶けてしまう前に食べて貰いたいですものね。


「旦那さま、旦那さまっ」


 フカフカのクッションに埋もれるようにして座っていた夫が、ちょっと首を傾げました。


 うっ、か、可愛いっ。


 緩衝材の髭が無くなっても、夫の熊さんっぽさは健在です。

 ・・・ぬいぐるみではなく、リアル野生の熊さんですが。


 ただ、フカフカクッションに囲まれている時の夫はどういう訳か、ぬいぐるみっぽい気安さが復活するんですよね。

 それに気付いてから、我が家の居間には私のお手製クッションが大量増殖しました。流石に作りすぎちゃった感があるので、これ以上増殖させるのはやめておきますが、フカフカクッションに囲まれた夫は非常に可愛らしくて、悶えてしまいそうになります。

 もちろん、本人には絶対に言いませんけどね!


 あ、目的を忘れるところでした。


「夕ご飯前ですけど、これ、食べてみませんか!?」


 可愛く盛り付けたチョコレートケーキを夫に差し出すと、夫は相変わらずの無表情で受け取りました。

 うん、でもそこはかとなく嬉しそう、かな?

 夫は甘い物が好きですからね。


 しばらく全体を眺めた夫は、ゆっくりとフォークを刺して、一口、食べました。


「あの、味はどうですか?」

「甘い」


 ・・・うん、それはそうなんですけども。

 夫に抽象的な質問をしちゃダメでした。


「えーっと。お口に合いますか?」


 聞きなおすと、大きくひとつ、こっくりと頷いてくれました。その間もケーキを掬う手は止まらず、美味しそうに食べてくれています。


 気に入ってくれたみたいですね。良かった!


 夫はあっという間に食べてしまったようで、半分残したお皿を戻してきました。

 私が作ったものでも、夫はいつも私の分に半分とっておいてくれるんですよね・・・って、あれっ!?


 渡されたお皿の上には、上半分がなくなったケーキがあります。


 ・・・普通、左右対称の形の物を半分こにするなら、左右の真ん中で分けますよね?

 非対称な上下で切り分けたりしませんよね?


 なのにどうして、これ、上半分がなくなっているのでしょうか?


 しかも、花の形にして誤魔化した飾りのハートまでっ!?


「だ、旦那さま。あの、も、もしかして・・・」

「レインに、教わった」


 それが、バレンタインのイベント自体のことを言っているのか、ハートの形の意味のことを言っているのかわかりませんが。

 残りのケーキをもったまま、思わず逃げ出してしまった私は。


 あっさりと捕獲され、夫の膝の上でケーキを食べさせられる羽目になりました。


 ・・・レインの、うらぎりものぉっ!!





あまーいケーキに甘い妻で、クマさん夫、ほくほく。


さて、その頃、レインやほかの女性陣はというと・・・?




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