ヴォルフをデレさせろ!(ヴォルフ視点) ②
様子がおかしく、泣き出してしまったミリィさん。
さて、ツンツンヴォルフはどう出るのでしょうか?
※R15?的な場面がありますので、苦手な方はご注意を!
ミリィが、泣いてる。
盛大に、大泣きしてる。
体に対して大きすぎな目からぼろぼろと涙をあふれさせ、子供のように声を上げながら泣いている。
泣き止む気配の無いミリィを慌てて膝に抱き上げてゆすり、指で涙をぬぐってやる側からまたあふれだしてきて、ほとほと参った。
・・・泣かせちまった。
普段気の強いミリィは、気が高ぶると暴言と暴力の限りを尽くすが、泣きはしない。だから、ミリィに泣かれるのは、とんでもなく、苦手、だったりする。この世の終わりのように嘆くミリィをいつものように怒鳴りつけたりするわけにも行かず、とにかく幼子をあやすようにゆすることしか出来ない。
しかも。
泣く姿が、妙に色っぽいたぁ、どういうことだ。
「ミリィ、おめぇ、なにしたんだ?」
泣き続けるミリィの気を逸らさせる意味も込めて話しかけると、いつもならこぶしのひとつは飛んできそうなものなのに、ただ、ぐずぐずと鼻を鳴らしながら小さな体をさらに小さく縮こめて、懐くように押し付けてきた。
「ヴォ、ヴォルフのバカっ! どうしてごみ捨てなんかにいってるの、ばかばかばかばかかばっ!」
誰がカバだ。
他愛も無い悪口だが、とにかく泣くことよりも他の事に集中させようと、さらにミリィを促す。
「ごみ捨てに行った、俺が馬鹿か。それでなんでフォンの野郎を襲ってたんだ、ん?」
さっきまでの追いかけっこの光景を思い出し、多少、声に険が混じるのも仕方ない話だ。
「だって、せっかく、せっかく商人に頼んで、取り寄せてもらったのに。く、口移しでヴォルフに、飲ませて、あげ、ようと思って、おしゃれもしたのに。ヴォルフいないし、フォンに、ぶつかって、飲んじゃって・・・・あ、フォンの生肌、触りたい~っ!」
いや、ちょっと待て。
思わず、ミリィを抱える腕に力がこもった。
今のミリィの泣きながらの主張から推察するに、何がしかの飲み物を商人に取り寄せさせて、それを俺に飲ませようとして、間違って自分で飲んで、フォンを追い掛け回したと。
嫌な予感がしてミリィの部屋の中を見回すと、扉の脇に見慣れない赤い小瓶が落ちているのが目に入った。
ミリィを抱えたまま立ち上がって、小瓶を拾って中身を確かめると、ミリィから香っていたのと同じ、甘い香りがして、わずかにめまいにも似た高揚感に襲われる。
薬が効きにくい性質の俺でさえ、匂いだけでこの効果。思わず、額に手を当てて低くうなった。
「ミリィ、こりゃぁ、何の薬だ」
「あ、飲んで。ヴォルフ、飲んで!」
まだ涙をこぼしながらも、道連れを作ろうとしているのか、えらいいい笑顔でミリィが勧めて来る。小瓶の中身は、半分以上残っているところを見ると、ミリィが飲んだ量はそれほど多くないだろう。
だが、俺とは逆に薬が効きやすい性質のミリィの場合、少量の摂取でも効きすぎているのかもしれない。
「ミリィ。コレは、何の、薬だ?」
「ヴォルフ用特注超強力媚薬・改」
一言一言を区切るように、しっかりと聞くと、ミリィは泣きながら、得意げな顔で堂々と言うから。
「阿呆だ、オメェはっ!!」
改ってなんだ、と思いつつ、反射的に断定的に怒鳴りつけると、至近距離で怒声を浴びせられたミリィは、一瞬体を震わせて、またぼろぼろと泣き出した。
かと思うと、ギッ、と音がしそうなほど、激しい視線を寄こし、油断していたヴォルフの手から蓋の開いた小瓶を素早く取り上げる。
「ヴォルフの朴念仁! 馬鹿! いいわよ、ヴォルフが飲まないなら、私が飲むっ!」
「馬鹿、やめろっ!」
素早さでは俺の上を行くミリィの突飛な動きに、反応が遅れた。小瓶をミリィから取り上げるよりも早く、ぐっ、と呷られてしまう。
腹が立ったからって、何てことするんだ、こいつは!
空になった小瓶と、ミリィの口元から香る匂いだけでも、くらくらするってのに、ミリィに耐えられるわけがねぇ。
まだ口に含んだだけで飲み込んでいない様子のミリィを捕まえて、吐き出させようとすると、「飲み込むわよ!?」という声が聞こえてきそうな反抗的な目で睨まれた。
さっきまで泣いていたせいか、頬は赤く染まり、目は限界まで潤んでいて、甘い香りにどこか匂い立つような色気が醸し出されている。
ミリィが媚薬を飲んだとして。
理性を失った状態で、本気で迫られたら。
・・・俺は、自分の理性を保てるか?
大きなため息をついて、ミリィを睨みつけたまま自分の上着の前ボタンを外していく。今のミリィに理性に訴えたところで、無駄だ。それなら、別なもので訴えるしかない。
「なぁ、ミリィ。交換条件だ」
どこか警戒するような、期待するような、ミリィの目。
「その媚薬、俺に寄こせ。そうしたら、好きなだけ触れていいぞ?」
潤んだ瞳に、嬉しさが弾ける。
肌蹴させた服の裾を掴みながら、恐る恐る触れてこようとする小さな手を捕まえてゆっくりと引き寄せても、抵抗らしい抵抗は無い。
コレは緊急事態だから、仕方が無いんだ、と誰に対してでもない言い訳を並べて、うっとりと、嬉しげに見つめてくるミリィに、そっと、唇を寄せて、重ねる。
甘く、誘惑される香りは、果たして媚薬だけのせいなのか。
ミリィの小さな口の中で暖められた液体を全てすすり取り、ついでに小さな舌から媚薬の残りを拭い取り、くったりと体から力が抜けるまで、丹念に媚薬を取り上げて。
荒く、色っぽい呼吸を繰り返し、ぼんやりと肌蹴た胸元にぴったりとくっついているミリィに見えないように、媚薬を吐き出す。
それでも、完璧とは行かねぇか。
わずかに飲んでしまった媚薬は、すぐに体の奥底から異様なほどの熱を上げさせて。
こんなもん、ミリィが飲んだらひとたまりもねぇ。
本当なら、うがいさせてやりたいくらいだが。
・・・正直、今は俺も動きたくない。
胸元に乗ったミリィの体が温かい。
焦点の定まらない視線は、それでも俺だけを捜していて。
大人びた服は、妙に触り心地がいい。
・・・こりゃ、本当に動けねぇな。
下手に動いたら、ミリィも自分も刺激されて、止まれなくなりそうだ。
「・・・ヴォルフ、生肌、あったかい」
「ああ、そうかよ」
うん、と頷くミリィの動きや、声にさえ、反応してしまいそうな自分が居る。
「あのね、生肌、すべすべ」
「ああ、そうだな」
頼むから、しゃべってくれるな、と思いながら、ミリィの背中を這いまわろうとする手をぐっと意思の力で押さえつけようとした。
「ヴォルフも、生肌がいい?」
押さえつけるまでも無く、体が硬直して、手が止まった。
人の気も知らないで。
なんてこと言い出すんだ、こいつは。
「・・・このままでいいから、お前はもう寝ろ」
「・・・このまま?」
なにもしないのが不満なのか、そうなのか、と箍が外れそうになりながら、胸の上のミリィの顔を見ると、眠りに落ちる前の、穏やかで柔らかい表情をしていて。
「一緒に寝てやるから、寝ろ」
「・・・うん。ありがと、ヴォルフ」
すぐに目を閉じて寝息を立て始めたミリィに、これまでで一番深いため息をつく。
ちくしょう。どんな、生殺しだ。
やってられねぇぜ、まったく。
とぼやきながら、それでも満足気に胸元に頬をつけて気持ちよさそうに眠るミリィに、少しは報われる気がしながら、これだけ、これだけだ、と言い聞かせつつ。
・・・起こさないように、そっと額に口付けた。
う、うん。
少しは甘くなったのかな?(滝汗)
なかなかヴォルフのツンの壁は厚いようですが、確実にダメージは届いているようですな!
いつの日か、完全にデレたヴォルフが見れるはずっ!(希望)