似たもの夫婦
※全ての物語完結後の小話ですので、全てのカップルがハッピーエンドを迎えた後、という設定です。
レインと夫妻の穏やかなお茶タイムの一コマをどうぞ!
今日は、久しぶりに友人が家に遊びに来てくれました!
いつもは二人で会うので夫は居ないのですが、今日はたまたま急な予定変更があり、時間が空いたとかで、初めて三人でお茶をしています。
円卓を囲んで、私の目の前に並んで座る友人と夫。
なんだか、ものすごく貴重な光景ですよね、これって!?
確かに最近、夫がそれほど友人に対して警戒していないようなので、いつかこういう光景も当たり前のことになってくるのかもしれませんね。
ちょっとどきどきしながら友人との会話を楽しんでいると、話が、夫婦は似てくるものらしい、という話題になりました。
「私の顧客の老夫婦なんだけどね、魂の双子かと思うほど、よく似ているんだよ」
なにをするにも一緒の仲良し老夫婦だそうで、食べ物の好みから色の好み、物事の考え方もよく似ていて、二人の息のあった会話は傍で聞いていて非常に小気味いいのだそうです。
「長年同じものを食べて、同じものを見て、同じことをして生きてきたんだから、似てくるのも当たり前なのかもしれないね」
どこかうらやましそうな響きの声に、思わずちょっと首を傾げてしまいました。
「レインとグレインさんも似ていると思いますよ?」
それなのに、どうしてそんなにうらやましそうなのでしょうか? 確かに一緒に暮らしている期間は、まだ短いのですが、そうだとしても二人はよく似ていると思います。
それに。
「最近気づいたんですけど、レインが男装しているときって、グレインさんの言動を真似ていますよね?」
「・・・鈍そうに見えて時々意外と鋭いよね、君は」
もちろんそのまま真似たのでは客商売には向かないので、もっと愛想よく、女性心をくすぐるようなアレンジをしているみたいですが、基本にしているのは間違いありません。
そういうと、友人はどこか呆れたような目を向けてきますが、ほっぺたがちょっと赤くなっています。
「そういえば、ミリディアさんもヴォルフさんと似てますし、エーファさんも最近フィリウスさんに似てきましたよね」
ちらり、と夫に視線を向けると、静かにお茶を飲んでいます。
私たちはあまり似ている部分が無いですよね。
・・・なんだか、他の皆さんがちょっとうらやましくなってきました。
「そういう君だって似てきてると思うけど」
「そうですか?」
私の内心を読み取ったのか、友人が苦笑しながら言ってきました。
どこが似ているんでしょう?
性格はもちろん似ていませんし、外見は言わずもがな。好きな食べ物も結構違いますし、趣味も全く違います。
・・・こうやって考えると、共通点があまり無い気がしてきました。
それって夫婦的にどうなんでしょう!?
いや、でもまだ数年ですし、これからって可能性も・・・とぐるぐる悩んでいると、夫がちょっと首を傾げました。
・・・どうやら夫も似ている部分を捜して、見つからなかったようです。
つい、似てますかね? と夫に視線で尋ねると、わからない、という視線が返ってきました。
どこが似ているんでしょう?
と、疑問を込めて友人を見ると、友人はお茶に口をつけながら、さらに苦笑を深くしていました。
「あのね。いっておくけど、視線だけで会話されても私には分からないからね? 本当に似たもの夫婦だよ、君達は」
そういえば、今の会話、全然声に出していませんでしたっけ。無意識のうちに夫と視線で会話をしてしまっていたようです。
思わず夫の方を見ると、友人の言葉に何故かものすごく夫が誇らしげな表情をしていました。なんだか、とっても嬉しそうに見えます。
それからしばらく夫は非常に機嫌が良く、なんだかんだで視線だけでの会話をしたがることが増えました。
ある意味会話が増えているといえなくも無いのですが。
・・・私まで、無口になってしまいそうです。
夫、どや顔(笑)
「こんなところ(無口)が似てどうするんですかーっ!?」 と妻が喚きだし『声を出して会話しましょう!』作戦が発動するのは、このすぐ後のことなのでした。