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極秘任務2:夫を笑わせろ!

さぁ、また極秘部隊から任務状が届きました。どうする、妻!?


 秘密部隊からまた極秘任務が届きました。


 表書きは確かに私なのですが、見なかったことにしちゃおうかな、という誘惑にかられます。前回の夫無茶振り計画は、本当に無茶振りでした。あれは夫よりも私にダメージが・・・と、耳元で囁かれた夫の低い声を思い出しそうになって慌てて首を振ってその音を散らしました。


 だ、ダメです! あれは絶対に思い出しちゃダメです!!


 熱があつまってくる顔を指令書であおぎながら、取り合えず、中身を見るだけみてみることにしました。意を決して封筒の中身を開けると、たった一行。


「夫を笑わせろ!」


 ・・・いまさらですけど、この指令書を発行しているのは、いったい誰なんでしょうか?


 どうしてこう毎回夫絡みの無茶振りしてくるんですか!?

 夫の笑顔なんて、結婚してから一度しか見たことないんですよ!?

 しかも、なぜ笑っていたのかわかりませんし。


 ・・・そういえば、夫はあの時どうして笑っていたのでしょうか?

 会話を思い出しても、特に笑えるような内容でもなかったですし。

 うーん、ダメです。夫の笑いのツボがわかりません。


 でも、でもですよ。もしこれが発見出来れば、いつでも夫の笑顔が見れるようになるってことですよね? それって、未来の奥さまと円満な関係を築くのにとっても重要なポイントです。無い無い尽くし解消にも役立つこと間違いなしですよ!


 俄然、やる気が出てきました。夫の笑いのポイント発見計画、発動です!!



 食後のまったりタイムに夫はいつも通り晩酌を楽しんでいます。

 ある意味、一番寛いで油断している時間帯。しかもお酒を飲んでいますから、笑いの沸点も低いはず。お皿を片付けるふりをして、夫の背後に回ってスタンバイ完了。

 いざ、作戦決行です!!


「旦那さま!覚悟!」


 手っ取り早く笑わせるとなれば、くすぐるのが一番! 夫の脇に手を入れてくすぐろうとしたら、いつの間にか目の前に夫の無表情がありました。


 ・・・あれ?

 なんで夫の顔が目の前に?

 というか、どうして私は夫の膝の上に抱えられているのでしょうか?


 頭に「?」をたくさん浮かべて固まっていると、夫が首を少し傾けました。


 ああっ、これが髪とヒゲを整える前なら、首かしげクマさんだったのにっ。

 思わず悔し涙を流しそうになったのですが、夫が少し目を細めて私を見ているのに気づいて、固まりました。


 ・・・三割増しで野生化したクマさんが首をかしげると、どうしてか、こう、身の危険を感じるというか、狙われているような気がしてしまうのですが。


 き、気のせいでしょうか、気のせいですよね、気のせいだと思いたいです。


 慌てて夫の膝から降りようとして、それよりも早く靴を取られてしまいました。なんで靴を脱がせるんですか。嫌がらせですか。

 こうなったら、再攻撃あるのみです!


 うりゃっ、と夫の脇に手を伸ばしてコショコショコショコショっとくすぐりました。

 どうだ!?と夫の様子を伺うと、目を瞬かせて不思議そうにしています。


 あれ?

 効かないんですか、私の必殺くすぐりの刑。

 兄弟たちにこの刑を執行したときは、いつも大笑いしながら土下座の勢いで謝ってきたものなのですが。


 なんだかちょっと負けたような気分になりつつも、諦めきれずに膝小僧をコショコショっとくすぐりますが、やっぱり無表情のままです。

 何てことでしょう。夫は稀に存在するくすぐりが聞かない人物だったんですね。


 計画、失敗です。


 というか、よく考えたら、笑いのツボってくすぐったい場所って意味じゃないですよね、そういえば。


 ちぇー。といじけて夫の膝から降りようとして、がっしりと足首を掴まれました。


 え。なんで足を掴むんですか、相変わらず全く動かせないんですがどうやって掴んでるんでしょうか、というか離して欲しいのですがっ!


 嫌な予感に背筋に流れる汗を感じつつ、夫の表情をうかがって、私はビクッと震えて固まりました。


 獲物を前にした獰猛な狩猟動物のような目をした夫。その口元には小さな笑みが。


 だ、旦那さまが笑いましたっ!

 二度目の快挙ですっ!


 嬉しさのあまり飛び上がりたくなったのですが、同時にひどく落ち着かない気分になりました。


 夫がじっと私を見ているその視線に、むずがゆいような、逃げ出したくなるような、目を逸らしたいような、けどもっと見ていたいような、とても複雑な感覚に襲われます。


 身動き出来ないのに、心臓だけがどんどん早く動いて、熱がでそうで、焦りました。

 も、もしかして、これが世に聞く色気というものですか!?


 前は大好きなクマさんみたいだった笑みが、どうして今回は色気たっぷりの微笑みになっちゃったんでしょうか。やっぱりボサボサな髪とぼうぼうのヒゲという名の緩衝材がなくなってしまったからでしょうか。実に惜しいです。


 そんなことをつらつらと考えていたら、夫が掴んだ足の裏をくすぐり始めました。


 っ!!


 反射的に起きる笑いを堪えながら悲鳴を上げて身を捩って逃げようとしたのですが、相変わらず全く脱出出来そうにない安定感です。この人間安全ベルトめっ。全然安全じゃないくせに、詐欺です!


 さんざんくすぐられ息も絶え絶えになった私は、半泣きになりながら土下座の勢いで降参する羽目になりました。


 ある意味、夫を笑わせるという任務は成功しましたが。


 ・・・秘密部隊の指令は、もうこりごりです。



任務に成功しても、結局夫に負けてしまう妻なのでした。

そして、夫はめっちゃ楽しんでます(笑)

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