レインvs夫(レイン視点)
夫から警戒されまくっている友人レイン。
ここらでひとつ、手を打っておかないとね(にっこり) byレイン
以前から思っていたのだけど。
私の友人の夫殿は、かなり私を警戒しているらしい。
勉強会では必ず睨まれるし、私と二人で会う時には必ずとしていいほど明らさまな虫よけを付けてくるし。
最初は友人の夫殿の不器用な嫉妬が微笑ましく思った時期もあったのだけど、最近、その警戒レベルが引き上げられてしまったようだ。
会おうとすると、さりげなく邪魔が入るし、勉強会の後もなんだかんだ言いながら、さっさと連れ帰ってしまう。
このままだと、本当に友人との時間が皆無になってしまいそうな勢いに、私は交渉の場を持つことにした。
あえて、相手の領域である鍛錬所で捕まえる。
全くの無表情、無関心で立つ友人の夫を見て、つい、苦笑が漏れた。
・・・相変わらず、友人がいないと、無表情無関心に磨きがかかる夫殿だ。
このなんの感情も浮かんでいないガラス玉みたいな目が、友人の姿を認めた途端に蕩けるような甘さを浮かべるのだから、本当に面白い。
一度、どこぞの美女に迫られているのを見たことがあるけど、全くの無反応だったし。
そういう意味では、安心して友人を任せられる男ではあるかな、と思う。
・・・でも、妻の交友関係を狭めようとするのは、どうかと思うけどね。
どこか警戒した雰囲気を感じるところをみると、文句を言われるか、抗議されるかと思っているのかもしれない。
だけど、こういうタイプの男に、口で抗議したところで全く意味はない。聞き流されて終わりだ。それなら、別のやり方をとらせてもらおう。
冷静に分析しながら、にやり、と笑いかけて、懐からあるものを取り出した。
友人の夫殿から、興味を持った雰囲気が伝わってくる。これを見ただけで、何か分かるなんて、なかなかやるじゃないか。
「彼女が読みたがっていた絶版本は、いかがかな?」
この本は、伝手や金だけでは手に入らない貴重なものだ。
少し悔しげな雰囲気なのは、彼も探していたということだろう。
本当に、友人の願いには敏感過ぎるほどに敏感らしい。
これは、もう一押しかな、とポケットに入れていた瓶を取り出して、軽く振って見せる。
「私も使っている、手荒れに効く薬もあるよ?」
前に勉強会であった時にちょっと手が荒れ始めていたからね。
友人の夫殿は、少しムッとしながらも、本と瓶を受け取る。
うんうん。
たとえ多少悔しくても、ここは友人の喜ぶ顔と手荒れを治すための薬を選んだ方が得だよね。
「明日」
「ありがとう。手土産持参でうかがうよ」
翌日。
久しぶりに、友人の家に遊びに行って、おしゃべりを楽しむことが出来た。
・・・虫よけがやけに念入りに増えていたのは、まぁ、よしとしよう。
レイン、見事「要警戒人物」から「有益な要警戒人物」にランクアップ(←え)