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もしも妻が記憶喪失になってしまったら


前のお話が、ちょっと先の未来の幸せな予感だったので、今回は、妻に混乱してもらいました(いい笑顔)


うん、それにしても、夫はマイペース(笑)


 気がついたら、見知らぬ部屋に居ました。

 ・・・なんで、私こんなところにいるのでしょうか?


 不思議に思いながら周りを見回して、硬直してしまいました。


 だ、男性が隣で寝ていますっ!!

 な、なんで!?


 相手を起こさないようにそっと起き上がって、出来るだけ壁に背をつけるようにして下がりました。


 なんだかよくわからないのですが、ちゃんと寝間着は着ているみたいです。


 よ、よかったぁ。


 ホッとして息をつくと、男性が身じろぎして、思わず息をとめて様子をうかがいますが、目を覚ました訳ではないようです。


 とにかく、ここからでないとゆっくり考えることも出来ませんね。


 私は寝ている男性を起こさないように、跨ぐようにして足側から飛び降りました!


 音をたてないように気をつけて居たはずなのに。

 床を踏み抜いて、バキッ、とものすごい音がして。


 寝ていた男性が目を開けて、私を見下ろしました。


 こげ茶色の瞳が驚いたように私を見ています。あ、ちょっと家のクマさんのヌイグルミに似ています。


「・・・あのー、すみませんが」


 初対面の方にこんなことをお願いするのはどうなんだろう、と思わなくは無いのですが、どうしようもありません。

 背に腹は代えられないですものねっ!


 私は意を決して男性にそっと両腕を伸ばしました。


「引っ張って、頂けませんか・・・?」


 そうです。抜けないんです!!

 両足とも膝まで床にめり込んでしまっていて、どうあがいても、抜け出せそうな気さえしませんっ!!


 こげ茶色の目と髪を持つ男性は、じっと私を見ていましたが、大きく息を吐いたかと思うと、子供を抱き上げるように両脇に手を入れて軽々と引き上げてくれました。


 それはとっても助かったのですが。


 どうしてそのまま膝の上に座らされているのでしょうかっ!?


 物凄く自然な動作で膝に乗せられましたが、もしかしてお子さんがいらっしゃるのでしょうか。そういえば、子供がいる従兄弟にも、よく抱き上げられたりしていましたっけ。


「あのっ! ここはどこで、貴方はどなたなのでしょうか!?」


 思い切って直球勝負で訊いてみると、焦げ茶色の目が不思議そうに数回瞬きをしました。


「家で、夫だ」


 聞き惚れてしまいそうな、でも、なんの感情もこもっていない低い声が、これまた直球で答えをくれたのですが、私は受け取り損ねて、あんぐりと口を開けてしまいました。


 家は、分かります。

 流石にどう見てもここは家だとは思いますが、私が知りたいのは、家があるここは一体どこなのかということなのですが。


 というか、夫、って、なに?


 夫って、言いましたよね、今?

 あ、もしかして、どなたかの夫と言う意味でしょうか!?

 そうですね、お子さんもいるみたいですし、奥さんだっていますよね。


 って、それならなんで私とこの人は一緒に寝ていたんですか!?


 ああ、もうダメです。

 頭が大混乱をおこしています。


「う、浮気はいけません! 奥さんは大事にしなくちゃダメなんですよ!?」


 初対面の方に何を主調しているんですか、私っ!?


 焦り過ぎてわけが分からなくなり始めた私を、焦げ茶色の目が不思議そうに見つめながら、こくり、と頷きました。


 分かってくれたのでしょうか?

 私自身、自分が何を言っているのか、よく分からなかったのですが。


 ほっと息をつくと、そのまま私を抱っこしたまま、ぱたり、と横になってしまいました。


 って、全然分かってないですよね!?


「寝ろ」


 いや、妻子がある方と一緒には寝られません、と言うか、独身の方とでも駄目です!


 赤面してしまいながら、何とか太い腕の中からぬけでようとじたばたしていると、男性が大きく息をつきました。

 え、本当に寝ちゃうんですか!?


「あ、あのっ! 私のことをご存知なんですか!?」


 このまま寝かせちゃいけない! という使命感で、男性に話しかけると、ちょっと薄目を開けて腕にきゅっ、と力がこもりました。

 どうしてでしょうか。

 その感触に酷く安心している自分がいます。


「俺の、妻だ」


 そのまま、すっと眠りに入ってしまった男性を愕然と見つめました。


「・・・って、そんな爆弾発言を残して寝ちゃわないでくださいっ!!」


 起きてーっ! と暴れる私を抱っこする腕は、緩むどころか、どんどん力が込められていき。


 なぜか、この男性を寝ぼけさせたら命に関わるような気がして仕方が無かった私は。


 ・・・男性が自然に起きてくれるまで、大人しく寝ていることにしました。




まさかの床トラップ発動(笑)


これ、妻が記憶喪失になってしまっていることに気がついたら、きっと夫はここぞとばかりにいろいろ都合の良いことを吹き込みそうです(笑)


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