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レイン&グレイン 祭り当日(レイン視点)


予想外に好評のレイン&グレインカップルの初小話を!


と思ったら、なぜかこんな感じに出来上がっちゃいました。

あれ、なんだろう、なぜかブラック風味・・・? 





 リーフェリア祭当日。

 辺りが暗くなり始めた頃に玄関先に現れた男に、思わず目の前で扉を閉めてしまいそうになったけど、それよりも早く扉を押さえられてしまった。


 もしかしたら、気が変った友人が帰ってきてくれるかも知れない、と、そう思って対外的な業務は全てスタッフに任せて、家で出来る仕事を片付けていたというのに。これなら、店にでも出ていたほうが、他人の目があるだけましだったな、と思いつつ、涼しい顔で扉を押さえている男を睨みつける。


「何か用かな」


 沈黙を貫く銀髪に青い瞳の元夫、グレインに、用が無いなら帰れ! という思いを込めて口を開くと、小さく息を吐かれた。


「君は、相変わらずだな」


 それが良い意味ではなく、成長していないという意味の揶揄だとわかって、むっとするが、あえて沈黙し、青い瞳をただ、睨みつける。

 さっきから扉を閉めようと両手を使って全力で力を込めているのに、片手で押さえているだけのグレインは涼しい顔のままで、扉はびくとも動かない。その馬鹿力加減に、腹が立つのを通り越して、呆れてしまう。


 手にナイフでも刺せば離すだろうか、と物騒なことを考えていると、グレインが青い目を細めた。


「君のいとこが怪我をした」

「は。怪我!?」


 思わず押さえていた扉を全開にしてグレインに詰め寄ると、ちょっと驚いたように目を見開いている。


 黒のリーフェリアとしての儀式が成功していれば、友人は、昨夜のうちに帰還を果たしているはず。それなのに今、怪我をしているということは、儀式は失敗したんだろうか。

 怪我の具合によっては、明日の朝の本当の帰還にも間に合わなくなってしまうかもしれない。


 とにかく、友人の怪我の具合を確認しないと。


 焦る気持ちのまま、グレインを押しのけて神殿に向かおうと動きかけると、腕を強く掴まれた。

 一瞬、嫌な記憶が蘇りそうになって、きつく眉をしかめると、ぱっと手が離れていく。


「黒のリーフェリアは、辞退した。今は家で養生している」


 神殿に行っても無駄だ、と続けられた言葉に、体から力が抜けた。

 神殿から家へ動かせるということは、深刻な怪我ではないのだろう。


「そ、うか。命に関わるような怪我じゃないんだな。良かった」


 ほっとして、最後のほうはほとんど、一人ごとの状態でつぶやくと、青い目がまた意外そうに瞬いている。


「知らせてくれて、感謝する」


 きちんと向かい合ってお礼を言えば、さらに瞬きの回数が増えた。

 なんだ、その表情は。私は、たとえ別れた夫が相手だろうと、礼儀をわきまえるべき場面はわかっているつもりなんだけど。

 と、文句を言おうかと思ったけれど、そういえば、これまで徹底的に接触を避けていたから、これだけ長く話すのは、半年振りくらいだったっけ。


「頼みがある」

「私に頼み? なに?」


 青い瞳に真剣な色が浮かぶ。

 それに何か物騒な気配を感じて思わず後ずさると、手首を掴まれてそのまま外に引きずりだされた。


「一杯、付き合ってくれ」


 なんで私が。

 そういって断ろうと思ったのに、なんだか男の目がひどく真剣で、切れる一歩手前の物騒な光を宿していることに気付いて、言葉を飲み込む。


 この思いつめたような目は、昔一度見たことがある。


 ここで断ったところで、さらに不本意な状況にさせられるとわかっているから、腹の底から不快が湧き上がってこようとも、我慢して付き合ったほうが得策だ。


「一杯だけ。それ以上はお断りだ」


 つかまれた腕を振り払いながら言えば、手はあっさりと離れていく。


「ああ。一杯でいい」


 妙に決意にあふれた声に、別れてから初めて二人きりになることに柄にも無く緊張でもしているのだろうか、と思っていたのだけど。


 私は、グレインという男のことを、忘れてしまっていたらしい。


 連れだって、祭りの余韻で混雑している酒場に行って、友人のことを聞いたりしながら一杯飲んで、そろそろ引き上げようかと思ったところで。


 ひどく、眠くなった。


「・・・またか」


 覚えのある急激な眠気に、薬を使われたことに気付く。

 机にひじを突いて額を押さえながら、青い目を睨みつけると、抱き上げられた。


「明日の夜には、必ず帰す。手も出さない。だから、眠れ」


 だから、こいつは嫌いなんだ。

 また、何の説明もせずに勝手に行動して、全てが終わった後に説明する気なんだろう。

 そこに私の意志は無い。


「・・・ふざけ・・・るな」


 抗いがたい睡魔に飲まれる直前、こぼした言葉にグレインが小さく頷いて、こめかみに口付けてきたような気がした。


 さっき、手を出さないって言ったばかりじゃなかったか?

 というか、その首肯は、ふざけていない、ということなのだろうけれど。


 本気なら余計に性質が悪い!


 と叫ぶよりも先に、意識が眠りに落ちていく。


 ああ、誰か。

 ・・・この男の性格を叩き直して欲しい。





こ、こんな二人ですが、一応ちゃんとハッピーエンドになりますので! 

道のりは、険しく遠いですが・・・(遠い目)

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