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やきもちその後(友人視点)


謎の女性(?)の正体は!?

あっさり分かります(苦笑)


 おそらく、羞恥のあまり限界を突破してしまったのであろう友人が、夫殿によって連れ去られていくのを見送ると、腹を抱えて爆笑していた同行者がようやく笑いを納め、涙をぬぐいながらこちらへ歩いてきた。


 耳元で切りそろえられた銀髪が揺れている。


「やぁ、義姉さん。面白いものをみせてもらったよ」

「相変わらず、趣味が悪いな、君は」


 女性にしては、低い声。

 友人は、思いっきり勘違いしていたみたいだけど、これは列記とした男で、さらに元夫殿の弟だったり、する。

 確かに中性的な服装をしているし、元夫殿と同じようにどちらかといえば女顔だとは思うけど。

 むき出しの腕は女性ではありえない筋肉のつき方をしているし、首も女性と比べれば太い。身長だって、夫殿と並んで少し低い程度だから、よく見れば友人だって気付いただろうとは思う。


 でも、その余裕もないくらい、やきもちを焼いてしまっていたようだ。


 縄張り争いをする猫のように毛を逆立てて義弟に食って掛かろうとする友人に気付いた夫殿がちょっと嬉しそうな雰囲気を出していたので、こちらも仕返ししてやろう、と思ったのだけど。

 

「そういう義姉さんだって相当いい趣味しているよね。危うく殺されるところだよ?よかったね、兄貴が近くにいてさ」


 本気で殺意を向けられるとは、流石に思わなかった。

 友人が絡むとどうしようもなく大人気ない奴だとは思っていたけれど、まさかここまでだったとは。


 息が出来なくなりそうな圧迫感の中で、それでも笑っていられたのは、友人を傷つけられたら、間違いなくあの友人は夫殿を許さないと知っていて、夫殿もそれを知っているとわかっているからだ。


 でも流石に、あそこで手に手をとって逃げたりしたら、抹殺されていたかもしれない。


 そういう意味では、絶妙なタイミングで体を引いてくれた元夫殿には感謝だ。


「そっちがからかったりしなければ、何もしなかったさ。でも、かわいいだろう? 私の友人殿は」

「確かに。あれは、かわいいね。思わずいじり倒したくなっちゃう」


 友人自慢を始めると、義弟がにやり、とおもちゃを見て目を輝かせる犬のような目をしていた。


「・・・一応言っておくが、やめておけ」

「わかってるって。彼があんな勢いで掻っ攫っていくほどのお気に入りを取り上げたりしたら、僕なんか秒殺でしょ」


 ・・・元夫殿が止めてくれてよかった。


 この二人は、型的な男の二人兄弟で、まじめで面白みに欠ける兄に、自由奔放すぎて我侭な弟という構造が出来上がっている。


 義弟は面白いと思ったものには、徹底的に執着するし、面白ければ全てよし、とばかりに周囲をかき回すから、出来れば友人とはあまり絡ませたくないというのが本音だ。


「ところで、レイン」

「なに」


 あっさりと義弟が引いてくれたので、ほっとしていると元夫殿が話しかけてきた。


 リーフェリア祭以降、何かと元夫殿が私の側に居ることが増えている気がする。気がつくと、いく先々で遭遇しているから、偶然ではないだろう。

 以前は話すものいやだとばかりに避けていたのだけど、最近は多少の会話を交わすようになっている。


「俺も少々、腹を立てている」

「は? なにに?」


 とはいっても、いきなりそんなことを言われても、意味がわからない。


「なぜ、彼女に口付けた?」

「ああ。なに、まさか焼いているの?」

「そうだ」


 あっさり認められて、思わず、顔に血が上った。

 いやな予感がして、元夫殿の腕の中から出ようとして。

 がっしりと、固定され。


 唇に唇を押し当てられて。


「・・・っはなせ、この大バカやろうっ!」


 思いっきり振り払うと、元夫殿はあっさりと手を離した。

 真っ赤になっているだろうと思うと、ものすごく悔しい。こんなことに動揺するなんて!


 ギッ、と元夫殿をにらみつけると、その目に、何か、決意のようなものが浮かんでいるのを見て、思わず、一歩後ずさってしまった。


「レイン、逃げるな。もし逃げれば」


 どこか、うっとりと。

 

「狩る」


 ・・・宣言された。


「ふ、ふざけるなっ!」


 思わず、元夫殿をこぶしで殴りつけていたのは、不可抗力だ、うん。


「がんばって、義姉さん。一応忠告だけど、逃げるのはマジでやめたほうがいいよ」


 にやにや笑っている義弟を見て、確信した。

 ・・・こいつ、見物して楽しむ気、満々だ。





というわけで、兄夫妻のすったもんだをこれから見物する気満々の弟くんでしたー。

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