限りある時間を有効に使いましょう。③ の翌日(レイン視点)
レイン(友人)だけが、知っている。
最近、友人の顔色がどんどん悪くなってきた。
もともと一途というか、思い込んだら一直線な性格をしている友人は、自分の限界を見極めるのがあまりにも下手だった。
限界を超えるまでは全力でひとつのことに集中してわき目も振らず突っ走るくせに、限界を超えた途端、迷子になった子供が途方にくれるように、ぴたり、と止まる。
なにがあったのか話してはくれないが、友人は今日、いきなり限界を迎えたようだ。
ここ数日、忙しく活動していたはずが、早々に神殿から帰ってきて、ひどく暗い顔で部屋に引きこもっている。
いったい、なにがあったのか。
彼女が神殿で何をしようとしているのかは知っている。
・・・もしそれが私にも可能なことなら、私自身が率先してやっていたはずのことだから。
私にはその資格がなくなってしまったから、こうして商売を始め、この地で地盤を固めてきたのだけれど。
友人がやろうとしていることは、私が知っていることだけではない気がした。
話して欲しいと思うが、それでも、こちらから聞くことはしない。
友人から話してくれるまで、ただ見守るつもりでいる。
私が一番つらいとき、彼女はそうしてくれたから。
翌朝。
くぐもった悲鳴が聞こえて、友人の部屋に駆けつけると、友人は顔を真っ赤にさせながら、しどろもどろに夢を見てそれを思い出していた、と説明してくれたのだけど。
どんな夢だったのかは、言われなくてもわかる。
・・・相変わらず、絶妙な位置につけるね。
友人が鏡を見ても決して見えない、ちょうど髪で隠れるのだけどよく見ると見える、絶妙な場所に咲いた、赤い華。
どうやら、ずいぶんと大きなクマ似のムシが夢に出てきたらしい。
そのおかげかどうか。
友人から思い詰めたような、追い込まれたような雰囲気が消え、いつもの前向きな表情に変わっている。
夢をみたと思って、よく眠れたのなら、それでいい。
それにしても。
脳裏に、友人に寄り添いながら、いつも私に威嚇と警戒の視線を向けてくる友人の夫を思い浮かべ、苦笑した。
・・・彼の忍耐力は、感服ものだ。
妻のことを良く理解して受け入れているレインは、夫にしてみたら確かに警戒対象になっちゃうかも知れない、と思ってしまう一コマでした・・・。