もしも夫が風邪を引いたなら
夫も風邪をひくらしいです。
朝、いつも通り夫を起こそうとしたら、夫がやけに汗をかいていました。悪い夢でも見ているのでしょうか?
とにかく起こそうと、そっと触れた腕が酷く熱くて、よくよく見ると呼吸も早いことに気付きました。
あれ? これ、もしかして熱が出てませんか!?
焦って夫の額に手を当てて確信しました。
ひどい熱です!
熱が出たときって、とにかく頭を冷やして水分を補給して、あったかくしてがんがん汗をかかせればいいんでしたっけ!?
自分がわりと頑丈なたちで親兄弟も健康そのものの人たちだったので、看病とかしたこともされたこともあまり無いので、ちょっと自信が無いです。
慌てて夫を起こし、膝を曲げてもらって寝台から脱出しました。台所で飲み水とタオル数枚とお湯と冷やした水を持って寝室にかけ戻りました。
寝台の上でぼんやりと上半身を起こして座っている夫をみて、あ、クマさんっぽい、と一瞬ときめいてきしまったのは秘密です。
「旦那さま、お水飲みますか?」
とりあえず他の物を置いて、夫に水を渡そうとしたのですが、ぼんやりしたまま手を動かそうとしません。よほど重体なのでしょうか。コップを口元まで持っていくと、ようやくコップに気づいたようです。それでもコップを持とうとしないので、そのまま飲ませました。
ちょっとこぼれてしまいましたけど、これから着替えさせるので問題無しです!
持ってきたタオルの一枚にお湯をかけて固く絞り、夫の汗で濡れた額を拭きます。
気持ち良さそうに目を閉じている夫には悪いのですが、多分このあと冷えて寒く感じてしまうかもしれません。湯たんぽも作った方がいいかもしれませんね。
汗を吸ってすっかり重くなっている上着と夫の間に腕を入れて、汗を拭きます。寒いでしょうから、上半身裸にしたりしませんよ。というか、直視出来ないです!
「旦那さま、服を着替えて、汗を拭いてくださいね。終わったら、湯たんぽを持ってきますから、呼んでください」
夫が動いてくれるかどうか分からなかったのですが、一応声を掛けて湯たんぽを作りに出ます。
やっぱりというか、ちょうどいい入れ物を探し出して湯たんぽを作ってしばらく待ってみたのですが、夫からは全く声がかかりません。
扉越しに声を掛けても返事がありませんし、仕方なくそっと扉を開いて覗いて見ると、ちゃんと着替えた夫が寝台にうつ伏せで寝ていました。
濡れたタオルを回収して、布団を追加して夫掛け、湯たんぽをいれて完了です!
・・・でも、まだ呼吸が苦しそうですね。
ひとまず夫に仰向けになってもらって額に冷たい水に浸した布を固く絞って載せました。
消化に良さそうなものを作って、いつでも水分を補給できるように、水と果物を枕元の棚に置いておきます。
「旦那さま、おかゆ作ったんですが、食べられますか?」
少しうとうとしている夫に声をかけると、ちょっと頷いて起き上がろうとするので、クッションをいくつか持ってきて、よりかかれるようにしました。
夫は酷く億劫そうにしています。熱が全然下がっていないみたいですね。
「旦那さま、これを食べたら、お薬を飲んでくださいね」
そのまま眠ってしまいそうな 夫に声を掛け続けるのですが、ぼんやりとしたまま、おかゆに手をつけようとしません。
やっぱりあまり食欲がないのでしょうか? それとも、あまり美味しくなさそうでしょうか?
ちゃんと食べれるものですよー、と伝える為に食べて見せようと思ってひとさじ掬ってさましていたら、夫の視線が掬ったおかゆをものすごく、見ています。
あれ? 食べれるのでしょうか?
試しに冷ましたお粥を口もとに持っていくと、「バクン」という音とともに大き目の匙が夫の口の中に消え、驚いてちょっと引っ張るとお粥だけが消えて戻って来ました。
「パックン」なんてかわいい音じゃないでしたよ、今。ちょっと低めの音で「バクン」です。
この匙、私だと全部口に入れられないんですが、夫はかなり余裕のようです。体に比例して、口の中も大きいんですね!
面白くなってきてもう一度やってみると、今度は少し冷ましが足りなかったようで、バックンとしてからキュと眉が寄りました。
表面だけ冷ましても、中がまだ熱かったようです。
今度はちゃんと冷めているかどうか、匙の端っこを自分で食べて確認してみました。うん、これなら熱く無いですね。
夫に匙を近づけると、ちょっと驚いたような目をしていたのですが、すぐにバクン、しました。
どうかしたのでしょうか?
私がちょっと首を傾げていると、視線だけで続きを催促してきます。
食欲があるのはいいことですね!
せっせと食べさせた結果、全部残さず完食です!
お腹がいっぱいになったからか、どこか満足気な夫に薬を飲ませて、あとはゆっくり寝てもらうことにしました。
・・・私もなんだか、お腹がいっぱいです。
夫の風邪は、あっという間に治ります。
夫の風邪は、ね。