もしも帰宅時に妻が怪我をしていたら(夫視点)
夫妻の日常の一コマ。
質問:
もしも帰宅時に妻が怪我をしていたら、夫とウーマはどのように原因を排除するのでしょうか?
家に帰ると、その気配を察した厩舎のウーマが落ち着かない声で啼いて何かを知らせようとしている。
様子を見に行くと、棚に何度も頭突きをくりかえし、柵を壊す勢いで蹴飛ばしていた。
一体、なにをやっているんだ?
棚を見ると、いつもは整然と並んでいるものがいくつか床におちている。その中で少しだけ奇妙なものがあった。ウーマの体当たりで落ちたものは、すべて床に散らばっているのに、一部だけきれいに床に重ねられている。
たしか、これはウーマの餌と一緒においていたものじゃなかったか?
ウーマを見ると、必死な様子で棚を、いや、棚の一部を攻撃している。
一番低い段は、ウーマの餌を入れていた棚のはずだが。
ウーマは焦れたように俺の服の裾を咬むと、こっちに来い、とばかりに引っ張ってくる。
さっき蹴っていた柵の前まで来て、ふと、血の匂いがした。
目を凝らしてみると、柵の一部に血痕が付いている。
棘になっている部分で怪我をしたらしい。
ウーマの興奮状態は、それが原因か?
だが、たったこれだけの血で騒ぐような奴じゃないはずなのに、と思いかけて、嫌な予感がした。
ウーマでないなら、あとこの家にいるのは?
やっと気づいたか、というような呆れた視線を向けてくるウーマの首筋を軽く撫でてから、家に向かった。
玄関を開けると、台所で妻が喚いている。
また、血の匂いだ。
しかも、新しい。
目を細めて妻を観察すると、左手の指、右手の甲、右腕、それに両足に適正な手当てのあとがある。
「お帰りなさいませ、旦那さま! 今日はついていないんですよ!」
ちょっと頬を赤く染めながら、妻は一生懸命に今日あった出来事をひとつひとつ事細かに話した。
ようするに、玄関先の石で転んで、草で足を切り、棚から物を落として、棘を刺して、包丁で指を切ったと。
ある意味、器用だ。
石で転ぶのはまだわかるが、草で足を切るというのは、想像が出来ない。妻はどれほど薄い皮膚をしているのだろうか。
とにかく、ウーマが興奮していた理由がわかった。
名付け親が怪我をすれば、それは報復対象になるだろう。
妻は俺たちと違って、ひどくもろい存在だ。どんなものがいつ、致命傷になるかわからない。
なら、目に見える危険は排除しておくに限る。
俺はまだ真っ赤になりながら状況説明を繰り返す妻に、小さく頷いて見せた。
妻が寝入った深夜。
怒り覚めやらぬウーマに草取りと石拾いを任せて、棚を妻の身長に合わせて調整し、ウーマが破壊しつくした柵の残骸をまとめて捨て、包丁を研いでおいた。
ついでに物置部屋で妻が崩しそうなものを全て避け、ぶつかりそうなものには布を巻いて衝撃を和らげるようにし、妻が良く使う道具は全て妻の目線よりも下に来るように移動した。
翌日。
・・・少し赤くなりながら礼を言う妻は、なかなか可愛らしかった。
回答:
徹底的に排除します。