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妄想劇場 もしも妻がある日森でリアルクマさん(配役;夫)に出会ったら


急に思いついて、書いてみちゃいました。

軽く流してくれると嬉しいです(汗)↓




 突然ですが。

 生き物の躾にはふた通りの方法があるのだそうです。

 ひとつは罰方式、ひとつはご褒美方式。

 ベテランの調教師になると、この二つを上手く使い分けてどんな獣でも思いのままに動かす事ができるのだとか。


 非常にうらやましいです!

 いますぐその才能を私に与えてほしいです。なんだったら一日だけのお試しでもかまいません!

 そう、今すぐその才能が必要なんです。


 今、私の目の前には、一匹のクマ。


 ちょっと山菜を取りに来ただけなのに、まんまとクマと遭遇し、かつ、視線があってしまいました。

 

 野生のクマです。

 しかも、かなりの大物です。おっきいです。四足状態で、顔が私の顔ぐらいの位置

にあるので、立ち上がったら相当見上げることになりそうです。


 いくらぬいぐるみのクマさんが大好きな私でも、野生のクマと相対して、きゃー、らっきーっ! なんて一瞬しか思いませんでした。

 ええ、すぐに我に返って気づきましたよ。


 私、今、絶体絶命のピンチ?


 目の前のクマから視線を外さないようにしながら、前にも後ろにも進めなくなってしまいました。

 前に進めばクマと近づくことになって、下手をしたら威嚇していると思われてしまうかもしれません。

 野生のクマを見るのは初めてですが、とにかく、毎日山野を駆け巡っている彼らと基本引きこもりの私では、勝負は目に見えています。

 でも、かといって後ろに下がって逃げるのもなし。

 逃げられたら追いたくなるの、ってことで追っかけられでもしたら、これまた勝負は火を見るよりも明らか。

 

 あれ、私どっちにしても、終わりですか?


 どっと冷や汗が流れてきました。

 相対しているクマのほうは、動かずにただ、じっと私のほうを見つめているだけで、今のところ、動く気はないようです。当たり前といえば当たり前ですが、ずっと見詰め合ってても表情や瞳から感情とか全く読めません。

 威嚇されていないだけましなのかもしれませんが、にっちもさっちも行かないこの状況。

 いっそ思い切って動いてみようかとも思うのですが、この高まった緊張感が一気にはじけて、ついでに私の命もはじけてしまいそうで勇気が出ませんでした。


 どのくらいそうやって固まっていたでしょう。

 

 不意にクマが視線を逸らしました。

 なんだか、ため息をついたようにも見えたのですが、気のせいですよね。

 

 一気に緊張が抜けていった私は、ついでに足からも力が抜けて、へなへなとその場に座り込んでしまいました。


 た、助かった。これ以上、見詰め合っていたら、目が乾燥して干物になってしまっていたかもしれません。・・・怖っ!!


 自分の想像に若干青ざめていると、離れた場所に立っていたクマが、その場に座りました。それから大きくあくびをひとつ。

 ついつられて私もあくびが出ました。


 あ、ずっと開けていた目に涙がどんどん吸い込まれ行く気が。


 何度も瞬きをして瞳全体に涙をいきわたらせていると、クマがちらり、とこちらを見たような気がしました。

 つい私もクマのほうを見てしまって、また乾燥地獄!? と思ったのですが、クマは私のこと事など全く気にせずに、座った体勢から、ころん、と転がってうつぶせになりました。

 

 ・・・なんですか、今のっ!? 大きなクマさんのくせに、動きが、か、かわいいじゃないですか! しかもごつごつした地面を転がったのに、全く痛くなさそうな上に、なんだかむしろ気持ちよさそうですよっ!?


 予想外の可愛らしい動きに、身もだえしながら萌え死にそうになっていると、大きなクマさんが、そのまま動かなくなりました。いえ、体は上下に動いているので、もしかして、寝てしまったのでしょうか?


 逃げるなら、今がチャンスだということは良くわかっているんです。


 もしかしたらクマさんもこちらが攻撃力ほぼ皆無なのを見てとって、わざわざ逃げる隙を作ってくれているのかもしれません。


 わかってます、わかってはいるんですが。


 ・・・触りたい。


 ちょっとだけ、ちょっとだけでいいので、触っちゃ駄目でしょうか。

 クマさん、寝てますよね?

 起こさないように、ちょこっと触るだけなら、いいですよね? 大丈夫ですよね?


 うずうずする両手を動かしながら、足音を立てないように慎重に近づきました。本当に寝ているようで、一定のリズムで毛が膨らんだり、しぼんだりしています。


 ・・・もういっそ、ダイブしちゃってもいいですかね?


 危険な思考に陥りそうになったのを、慌てて首を振って払いました。

 駄目です、ここで欲張ったら、あのフカフカそうな毛にタッチすることさえ出来なくなってしまいますよ、ここは自制心総動員する場面です!


 何とかダイブの欲求に打ち勝ち、あとちょっと手を伸ばせば触れる距離まで近づいたとき、ふと、クマさんが本当に寝ているのかどうか、気になりました。

 寝ています、よね?

 ちょっと触ったくらいじゃ、起きないですよね?


 ・・・でも、相手は野生の動物ですし。

 柔らかそうなふかふか感にばかり目が行ってしまっていますが、鋭い爪も何でも噛み砕けそうな牙も持っている、雑食の動物です。

 蜂蜜も食べるけど、鮭も食べます。

 もし起きちゃったら、私の手もかぶりと齧られてしまうかもしれません。


 でも、寝ているなら、大丈夫ですよね、齧られたりしませんよね。


 どきどきしながら、それでもクマさんに触りたいという欲求を抑えることが出来ず、そっと最後の距離を詰めて、手を伸ばしました。

 

 思ったよりも、ごわごわしているんですね。

 ふわふわというよりも、しっとりしていて、かなり獣臭いです。

 でも、温かい。

 なでるたびに、ぴくぴくと動くフェルトのような丸い耳がたまらなくかわいいです。


 つい嬉しくなって熱心に撫で回していると、まん丸おめめが、すぐ目の前に。


 あっ、と思ったときにはもう、尻餅をついてしまっていて、クマさんの前足が私のズボンの裾に爪を食い込ませて地面に文字通り縫い付けられていました。


 思わず、それでも足を動かそうとしてしまったのですが、動かないことを確認しただけでした。

 あれ? これ、まずくないですか?

 いや、まずいですよっ!

 ちょっと触れるだけのつもりが、調子に乗って撫で回したりするから、クマさんを起こしてしまったようです。


 私が状況確認をしている間に、クマさんも私の状況を確認していたのか、上半身に鼻を近づけて匂いをかいでいます。私、昨日の夜にお風呂に入ったきりで山菜取りにきていたので、たぶんきっと汗臭いですよ!


「ダメです!」

 

 クマさんがお腹のあたりでくんくん匂いをかいでいたのを、びしっ、と短く言うと、クマさんの動きがぴたり、と止まりました。


 よかった、気持ちが伝わったようです。


 ほっとしたのもつかの間、クマさんは、私のお腹の上に頭を乗せたまま、また眠ってしまったようです。お、重いです、ちょっと重いです、やっぱり結構重いですっ!

 でも、あったかくて、クマさんの呼吸の動きがなんだか、眠気を誘うような安心感があるような・・・。

 今、確かに危機的状況なはずなのですが。

 ちら、とお腹の上のクマさんの顔を見ると、気持ちよさそうに寝ています。

 

 ・・・今動くとクマさんを起こしてしまいますし。

 なんだか、ちょっと眠くなってきちゃいました・・・うん、寝ちゃいましょうか。

 クマさんが起きたら、しっかり目を覚ます前に、逃げればいいですよね。そうしましょう。


 私はお腹の上に乗ったクマさんの大きな顔を撫でながら、眠りにつきました。

 クマさんが片目を開けていることには、気づかずに。


 ・・・目が覚めたら、なぜかクマさんの冬眠場にいて、帰れなくなってました。






そして始まるクマさんとの蜂蜜生活・・・っておぃっ!?


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