妻とウーマの出会い(夫視点)
我が家に馬(?)がやってきた!の夫視点です。
本当は面通しをするだけのつもりだったはずが・・・?
ある日、仕事の都合で、ボウドゥを一頭家につれて帰った。
ボウドゥは本来戦闘用なため、気性が荒い。実際気に入らない相手の腕を噛み切ることもあれば、格下の相手は決して乗せたりはしない。
戦闘になれば、自ら敵に体当たりをかけるほど勇猛でもある。
間違っても妻に危害を与えないよう、顔合わせをさせるつもりで妻を厩舎に連れてきたのだが。
いつも思いがけ無いような行動に出る妻が無防備にボウドゥに手を差し出した時には、肝が冷えた。
見知らぬ人間の手など、ボウドゥにとっては、攻撃対象にしかならない。
妻の腕が食いちぎられる、と反射的に妻を引き戻そうとしたのだが。
予想外のことが起きた。
気性の荒いはずのボウドゥは妻の手の匂いを嗅ぎながら、大人しくしていた。妻はさらに手を伸ばして撫でるのもそのまま受け入れている。
・・・あまりにも妻が無邪気で、毒気が抜かれたか。
妻に聞かれて、そういえば名前をまだつけていないことを思い出した。
ボウドゥにはおかしな習性があり、名前をつけ、呼ぶことを許した相手には決して危害を加えないという。
その代わり、名付けを許すほど懐かれるには数年かかる場合もある。
試しに妻にどんな名前がいいか聞いてみると、「ウマ」と答えた。なにかの生き物の種族名だという。それを名前にするのはどうなんだ、とも思ったが、まぁ妻がそれがいいと言うなら。
「ウマだ」
名付けると、ボウドゥは奇妙な表情をしたかと思うと、目に涙を溜めて妻の方を必死に見ている。やはり、名付け親の一人として、妻を認めているらしい。
その後、なぜかウマと名付けたはずの妻から必死の訂正を受けて、結局音が似ているウーマという神話の中の名を提案すると、妻はボウドゥにそれでいいのか確認した。
ボウドゥも今度は特に不満はないのか、何度も頷いているようだ。
妻はホッとしたようにウーマの頭を何度も撫でてやっている。
こちらをしっかりと見てから、妻にも視線を向けたウーマは、二人共に名付け親として認めたようだ。
それからしばらくの間、ウーマが妻に懐くというよりも、妻がウーマに懐いているような状態が続き。
・・・ウーマを仕事に連れて行くことが、増えた。
妻、動物に懐かれるタイプだったようです。
そして結局、ウーマさんにまで嫉妬してしまう夫なのでした(苦笑)