寝ぼけた自分とその顛末(夫視点)
初の夫視点です!
朝。
腕をとられる感触に反射的に相手を締め上げた。
いくら寝入っていたとはいえ、接触を許すなんて、以前なら決してしなかった油断。
自分の失態を自覚するよりも先に、接触した不審者を行動不能にするべく体が勝手に動いていた。
不審者は気づかぬうちに接触してきたとは思えないほど軽く取り押さえられ、柔らかな首に腕を押し当てただけで、抵抗どころか、身動きひとつしない。
・・・軽く? 柔らかい?
寝起きではっきりしなかった意識が一気に覚醒する。
腕を押し当てた相手は、数日前に妻になったばかりの、女性だった。
すぐに気絶してぐったりとしている体を引っ張り起こして活を入れ、意識を戻させた途端にひどく咳き込む小さな妻。
その儚げな様子に、ひどく狼狽えて、小さな背をさする。
なんてことを。
危うく自分の妻を絞め殺すところだった。
触れられるまで接近に気づかないもなにも、同じ寝台で休んでいるのだから、当たり前だ。
謝罪をしようと口を開きかけると、辛そうに呼吸を繰り返す妻が、咳で潤んだ大きな目で見上げてきた。
言葉以上に雄弁に心情を語る妻の瞳に、疑問、驚愕、思案と次々に感情と思考の片鱗がよぎり、最終的に何かを決意したのが見て取れた。
「・・・今夜から、物置部屋で寝ます」
それから責めるでも怒るでもなく、淡々と物置部屋を片付けはじめ、昼に戻って来た時にはどこから見つけて来たのか、予備の寝具まで用意されていた。
妻は本気だ。
外に出て空を見上げると、この時期独特の暗雲が立ち込め始めている。間違いなく、夜が来る前に強い雨が降るだろう。風向きは西方。
それを確認して、家の外からちょっとした細工を施した。
その夜。
物置部屋の雨漏りと隙間風がひどいから、と妻はいつも通り同じ寝台で休むことを受け入れた。
・・・妻が俺に慣れるまで、細工を戻すつもりはない。
夫視点、需要があるかどうかも分からず、とにかく書きたかったから書いちゃった小話でした・・・。