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妻と夫のカード勝負(妻視点)

もしも、妻が夫にカードゲームで勝負を挑んだら、どうなってしまうのか!?


「旦那さま! 私と勝負してください!」


 いつもの夕食後のひととき。未だに何に使うのかよく分からない道具の手入をしていた夫に、いきなり勝負を申し込みました。


 夫はチラリ、とわたしの方を見たのですが、またすぐに手元に視線を戻してしまいます。いつものことながら、きかなかったことにする気ですね!? 


「だーんーなーさまっ! 私と勝負してくださいっ!」


 さっきよりも大きな声で、はっきりきっぱりお願いすると、夫が小さく息をついてこちらに視線を戻しました。おっ、聞く気になってくれたようです。


「勝負は、これです!」

 

 用意しておいたカードを突きつけると、夫が少し不思議そうに瞬きをしました。どうしてそんなものが家にあるんだ、と思っていますね? このためにわざわざ友人宅まで行って借りてきたんですよ。

 友人はカードゲームやボードゲームの類が大好きですからね、たくさん持ってました。その中で一番絵柄がきれいだったものを借りてきたんですが、そういえば、友人が本当にそれでいいのか、と何度も聞いてきたのですが、どうしてだったんでしょう?

 まぁ、とにかく私は『リービス』と呼ばれるカードゲームを夫に突きつけています。


「旦那さまはこのゲームをやったことがありますよね?」

 

 こくり、と頷く夫に、私はしてやったり! とほくそ笑みました。


「じゃ、もし私が旦那さまに勝ったら、私のお願いを聞いてくださいね」


 宣言すると、夫がまたちょっと首を傾げました。

 それからおもむろに自分を指差します。自分が勝ったときはどうするんだ、ですね? そんなの、決まってます。


「旦那さまは経験者、私は未経験者。これは旦那さまが勝って当然のゲームなわけですから、旦那さまが勝ってもご褒美はなしです!」


 ズルイって言わないでくださいね。

 私は今、友人に詰め込んでもらったルールを思い出すだけで精一杯の状況なんですから。しかも友人いわく、たぶん夫は強いだろう、と。そんな人を相手にご褒美制なんか取り入れたりしませんよ!


 夫はしばらく何かを考えていたようですが、やがて、手のひらを私に向け、伸ばした5本の指をゆらゆらと動かして見せました。反対の手は頬に当てています。

 む、むむ。

 これは5回勝負という意味でしょうか。


「いいでしょう! 受けてたちます!」


 自分から勝負を申し込んだことも忘れて、意気揚々と受けてたちました。


 その結果。

 あっという間に、4連敗。

 絵柄を揃えるだけのゲームなのですが、夫の手元には次々と良いカードが集まり、私のほうはちっとも揃いません。

 どうしてですか、そんなに運が無いんですか、私。

 ちょっと落ち込みそうになりましたが、負けませんよ!

 まだ最後の大勝負が残ってます!


 ・・・惨敗しました。


 もうっ! なんなんですか、このカード!

 私との相性悪すぎです!


 ぶーぶー文句を言っていると、夫が手招きで呼んでいます。もしかして、もう一勝負してくれるのでしょうか? 

 わくわくしながら近づくと、素早い動きで夫が立ち上がり。


 かぷ。


 ・・・か、かまれたぁぁぁっ!!!?


 歯は立てていないので、いわゆる甘がみってやつですね、っていうか、いきなり何してくれちゃってるんですか、この人はっ!? 私のほっぺた、まだちゃんとありますよねっ!?


 かまれた頬を押さえて、思いっきり動揺していると、満足気な夫が椅子に座りなおし、またカードを切り始めました。

 真っ赤になって立ち尽くす私に、夫がまた5本指を動かし、反対の手はあごをゆっくりと撫でています。


 も、もしかして。

 次は、あご?


 声に出して聞いたわけでもなかったのに、夫は私に大きく頷いて見せました。


 それを見た私は、自分の心臓のために潔く敵前逃亡を図ろうと脱兎のごとく逃げ出したのですが。

 あっさりと捕獲され。


 ・・・夫のカードゲームの強さを、いやというほど、思い知らされました。



こうなってしまいました(笑)

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